目次12月号
巻頭言 「 分かち書き」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・例会風景
没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・みんなのエッセイ・その他
・大会案内
・編集後記

 


柳歩
柳歩整理

柳歩
表 洋子
たかこ


柳歩

清水信
橋倉久美子
たかこ



 

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巻頭言


 「 分かち書き」

 分かち書きとは、一般的には文を書く時、語と語の間に空白を置いたり、行を分けて書くことを言う。川柳は十七音を一行で棒のように間隔を空けず表記するのが原則である。
 五、七、五の定型三句体で詠まれた川柳も、句跨がり八、九の二句体で詠まれた川柳も、原則として間隔を空けずに表記する。 句意に沿って、どこで区切って読むかは選者が判断して披講する。   

 川柳は当初から「座の文芸」と言われて来た。今も句会や大会は、投句者が一堂に会し、入選句を披講し、それを耳で聴いて味わうのが基本的なスタイルである。
 ところが近年、一句の中に一字分スペースを取る句が増えてきた。この「一字空け」も分かち書きの一つである。現代川柳では、自己の思い(心象)をより強く反映した川柳が増えてきた。それ故、句主の「ここで一呼吸置いて欲しい」という意思表示に、一字空けが使われるのだ。また、漢字や、同じ仮名が連続して読みにくい場合も一字空け表記をされることがある。幅の広い句箋では、二行に分かち書きをして、読み方の意思表示をすることもある。
 三重県川柳連盟では、今年から思い切ってこの「一字空け表記」を公認(?)し、統一マーク(□)を設定した。

 色紙に句を書く場合は、一句の趣をより引き出すため、三行で表記するのが普通である。先ごろ参加した「川柳みどり会」の大会では、事前投句ではあるが、一部にプロジェクターによる入選句の映像に合わせて披講がなされた。当日選では未だなかなか難しいが、分かち書きで視覚と並行して味わう披講もいいものだと思った。

 印刷も映写技術も長足の進歩を遂げてきた。現代では多くの人がワープロを使い、活字になった句を速やかに視覚で味わうようになってきた。誰でもデジカメを扱い、HPにも活用する。パソコンにはプロジェクター用のソフトも付いている。いつまでも耳で聴くだけの「座の文芸」でもないだろう。

                                                                  柳歩

 

すずか路より
軽井沢落ち葉までもがセレブだわ 小川のんの
多趣味だと言われているが気にしない 松本諭二
ガソリンが三円安い五キロ先 西垣こゆき
週刊誌中吊り読んでほぼ判る 松岡ふみお
それぞれの目で紅葉を観る秋を観る 坂倉広美
こびりついたものがだんだん重くなる 橋倉久美子
二時間ドラマ五分の一はコマーシャル 北田のりこ
なくなって知る当然にあったこと 落合文彦
身に覚えあって乗らないいい話 浅井美津子
退院へちょっとはにかむ薄化粧 鈴木裕子
紅葉の名所休日動けない 竹内由起子
旅行から帰れば外すサングラス 加藤吉一
種なしの柿の新芽が気にかかる 長谷川健一
炬燵には孤独を癒す暖がある 水野 二
どこか遠い国からやってくる涙 竹口みか子
行列の伊勢型紙で干支を彫る 野村しおひ
秋夜長湯飲み茶碗とする会話 瓜生晴男
お互いに元気なつもり空元気 安田聡子
ついて来る影もぼつぼつ老い始め 鍋島香雪
東大へ入ったまでは良く話す 小出順子
身辺整理丸秘ごときはありません 鈴木章照
オイオイと一人住まいの腹話術 沢越建志
萎れたら花も私も捨てられる 山本 宏
俎板の音が知らせる妻の快 高柳閑雲
助手席の倒し具合に妻のカン 加藤峰子
月一度元気メールを句で送る 青砥英規
冬晴れやつい深爪をしてしまう 堤 伴久
ジャンパーを着た犬と会う散歩道 山本喜禄
イチゴ大福姉のいじめに目をつむる 水谷一舟
おはようとメモ添えてきた目玉焼き 廣瀬まさこ
爆弾が湯舟に落ちてこぬように 吉崎柳歩
人脈がまれにつながることがある 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」


 202号から                                       表 洋子

アナログのテレビ映らぬ日の茶の間     沢越 建志
 テレビは、これでもかこれでもかと言うように、連日買い換えを脅迫? してくる。ここまでくれば意地でも換えぬ、建志さんの強い意志。

年金を注ぎ込み孫を手なづける       山本  宏
 
いずこも同じ。日本の景、ですね。おじいちゃん大好きという声が聞きたいばっかりに、つい財布の紐を緩めてしまいます。

東京に包まれ眠る寒い夜          青砥 英規
 
大都会での独り暮らし。立ち止まる日もあると思います。そんな日は布団に包まって眠るに限ります。朝になればまた新しい今日の日が始まりますからー。

診察室を出る 忘れ物をしたように     坂倉 広美
 
重大な病気の予感でもあったのでしょうか。結果はマルですよね。

予定帳老いにも明日があるらしい      堤 伴久
 
“あるらしい”と斜に構えた伴久さん。明日は永遠に続くという、これは錯覚。でもだからこそ、笑顔で今日の日がおくれます。

行列をみると並んでみたくなる       山本 喜禄
 
行列をみると並びたくなるのが人の性。並んだら何かいいことありましたか? “人参が一本列の先にある”私も昔そんな句を作ったことを思い出しました。

生きる話父のお墓の前にいて        水谷 一舟
 
父の墓前だからこそ言える事言いたい事。
「僕のこれからを見ていて下さい」

草食系だけど執念なら深い         橋倉久美子
 
久美子さんが執念を燃やすのは、飽くなき川柳の道。ご活躍を誌上等でよく拝見しております。

歩くことだけが仕事という余生       吉崎 柳歩
 
思わず笑ってしまいました。その手の人がけっこういるんです。斯くいう私もそのひとり。

罫線があるのにいつも歪む文字       青砥たかこ
 
人間は感情の動物とか。歪だからこその豊かな人間味と見えなくもありません。リーダーのご苦労が偲ばれます。

                                     (蟹の目川柳社同人 石川県在住)

没句転生                                                      吉崎柳歩  


☆柳歩選「奪う」から

原句@ 気をつけているが何度も奪われる
原句A 奪ったら小さな物に見えてくる
原句B ジャンケンで無邪気な児らの奪い合い 
原句C 奪えたらどんなに楽になることか        

 上の四句とも「何を」奪うかが読みとれない。読み手が自由に想像せよ、という川柳を評価する人もいるが、読者が一致して共感する「何か」が想像出来てこそ川柳だと思う。自立していない川柳の例として、私は評価しない。

原句 傍目にはバーゲンセールおもしろい
 「バーゲンセール」が「商品の奪い合い状況」とは限らない。こういう川柳を「題に凭れている」という。
転生 掴み合うバーゲンセール見てあきれ 

原句 争奪の結果手にした僕の妻
  「争奪」は「する」を付けて動詞となる。「争奪の結果」では、日本語として不自然なのではないか?
転生 争奪戦の結果手にした今の妻 

原句 蓄えた保湿を奪う冬の風
 これも「保湿を奪う」という表現が不自然。また、「蓄える」と保湿の「保」は意味が重複している。 
転生 保湿した美肌を奪う冬の風

原句 子が育ち夫が奪うチャンネルを
 リズムが三つに切れてしまっているし、下五も落ち着かない。「子の育ち」を詠いたいのなら、「夫」は不要。
転生 チャンネルをもう奪い合う子の育ち 

☆共選「祭り」から

原句 銀しゃりが唯一馳走だった頃
 昔の前句付けと違い、いまの課題吟は課題を消化した上で、一句独立していなければならない。他の二句もそうですが、課題と「二句立て」ではいけないのです。
転生 銀しゃりがご馳走だった祭りの日     

原句 夏祭り浴衣美人に会いに行く
 うまく纏まっているが、平板で「読ませどころ」がない。「夏」と「浴衣」も重なっている。句意は別にして、
転生 母さんも浴衣美人になる祭り       

原句 だんじりの勢いケガと紙一重
 その通り、としか言いようがない。ハラハラして見ている様子を「表現」するのが川柳です。
転生 だんじりの上で跳ねてるのは我が子     

原句 お祭りがすんで大波ひいたよう 
 そうですね、としか言いようがない。虚しさ、というか、現実に戻る気分を「表現」するのが川柳です。
転生 お祭りが済むと仕事が待っている     

原句 祭りには男の汗がひかってる
 祭りの主役は男かも知れないが、視点を変えてみよう。
転生 祭りには女の汗も欠かせない
 

11月27日(土)例会より
宿題「 奪う 」 吉崎柳歩 選と評
  奪うほどの男でもなし返します 西垣こゆき
  返事など待たず奪ってほしいキス 青砥たかこ
 秀 奪ってはみたけどエサ代がかかる 橋倉久美子
貧乏とわかる財布を奪われる 吉崎柳歩
宿題「 祭り 」 長谷川健一 選
  寅さんについて各地の祭り行く 加藤峰子
  ハプニング期待している祭りの夜 北田のりこ
 秀 酒好きの手帳に○がつく祭り 青砥たかこ
美味かった祭りに食べたかしわ飯 長谷川健一
宿題「 祭り 」 東川和子 選
  おじさんもみこしかついで男前 小川のんの
  美味かった祭りに食べたかしわ飯 長谷川健一
 秀 コップ酒今日もひとりでする祭り 橋倉久美子
お祭りは終わったんだよ手紙焼く 東川和子
互選 席題「 散る 」 高得点句
 9点 散りかけのわたしに好きな人ができ 吉崎柳歩
 6点  美しく咲いて笑って散ってやる 青砥たかこ
  散り際を考えすぎて生きている 芦田敬子
 5点 ポリシーがあるから散らぬ彼岸花 橋倉久美子
  パレードに合わせて進む紙吹雪 加藤吉一
  流水が散った桜と旅に出る 竹内由起子
  ぱっと散る花いたずらが好きらしい 水谷一舟
特別室

批評の明暗(3)
                                            清水信 

 ボクは何でも読む。
『短詩形文学』8を読んだ。姿勢の良い歌誌であり、この号は通巻643号を数えているが、こんな永い間、シャンとした姿勢を続けるのは、至難の業である。余程しっかりした人たちが、中心にいるのだろう。
 「反戦平和」を特集していて、会員たちによる「私たちの反戦・平和の短歌史」という50編を超す、自分の選ぶ反戦短歌のアンソロジーと自解エッセイ群がある。

・かかる国に生まれし民ら起き出でて花野の川に水を汲むかも

 という風な古典的な作品(島木赤彦)もあれば

・戦争の傷は死んでもなおらんよ孤老は大きい涙をぬぐう

 という新しい作(鳥海昭子『ほんじつ吉日』より)もある。しかも尚、本誌作品欄で、続々新作が生まれている。

  藤本次郎
・われ生きて兄南海に戦死をする荒れる軍国敗戦に終りぬ
・軍国を鼓吹の風潮 戦いのたちまち起りて島国を蔽えり

 他に水野昌雄の「短歌一九三五年前後」が、ボクがいまたいへん関心を持って考えている「二・二六事件」直後の短歌界の事情を伝えて興味を持った。
 また一九五一年生まれの演劇人・永井愛へのインタビューが充実していて良かった。

桐朋学園大学の短期大学部の演劇科で二年、さらに演劇専攻科で二年、一時安部公房スタジオにも参加、前衛劇にのめりこむが、22歳で浪人。春秋団を経て大石静と二兎社を旗揚げ、30歳の時だったという。
その出発の様子が、この雑誌を送ってくれるようになったきっかけを作ったのが南部涌子で、その出発点を中村加世の「作品群」から拾う。

・「翡翠」(かはせみ)と小声の洩るる歌会に春日井建は「ひすい」を通す

 本当は「ひすい」も「翡翠」のルビなのだが、春日井は敢て「かわせみ」を採らないで「ひすい」という読みを通したという話で、南部はその美意識と語感を信じることで、作歌を始めたわけだ。それが分かった。

                                                                 (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 枯れ葉 』
 11 お茶会に枯れ葉も座る文化祭 坂倉広美
   枯れ葉にはなったが恋はまだ出来る 吉崎柳歩
 10 長寿国枯れ葉になってから長い 橋倉久美子
   8 窓際の椅子で眺めている枯れ葉 鍋島香雪
  7 山染めた頃を誇りに散る枯れ葉 福井悦子