目次7月大会号
巻頭言 「 25周年」
すずか路
・小休止
・柳論自論
・大会案内(みえ文化祭)
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・大会
・大会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・インターネット句会
・大会へのお便り拝受
・みんなのエッセイ・その他
・大会案内
・暑中広告
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

柳歩

丸山 進
たかこ


清水 信
久美子
柳歩

 
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巻頭言


 「 25周年」

 
第9回大会も無事盛会のうちに終わらせていただきました。ありがとうございました。                                 

 かなり前、ある方に言われたことがあります。「『川柳すずか』にはどうして鈴鹿川柳会の歴史を載せないのですか」と。そのときどのようにお答えしたかは忘れましたが、確かに私が会長になって以後はどのように鈴鹿川柳会が生まれたかは掲載したことがなかったですね。ホームページのトップページに記載してあっても、だれもがパソコンを持っておられるとは限らないですね。ここへ少し転記します。

 昭和六十一年、新万寿郎、林善寿、浅井美津子等による川柳結成句会が持たれ、(会長)新万寿郎、(顧問)林善寿、(客員)伊藤竜子により「鈴鹿川柳会」が発足しました。同時に機関誌「川柳すずか」が隔月発行されました。

平成元年「第一回鈴鹿亀山合同句会」が荒神山にて開催され、以後、亀山川柳会と交互に主催し、毎年開催されてきました。

平成七年一月、会長を浅井美津子に交代、(顧問)伊藤竜子、会誌編集、同人。

平成十二年十二月、伊藤竜子死去。

平成十四年二月、会長を青砥たかこに交代。(会長補佐)吉崎柳歩、会誌編集、両名にて毎月発行、現在に至る。

 二十五周年記念と言う割には、創設者の万寿郎さんをお招きしていない、二代目会長の美津子さんも参加されていないことに疑問をもたれた方もおありでしょう。二十五周年記念は通過点ということでお許し願いたいと思います。

「銀婚式だね」と何人かに声をかけていただきました。熟年離婚にならないよう会員一同、一致団結をして、次代にバトンタッチをできるよう頑張って行きたいと心新たにしています。

                                                                たかこ

 

すずか路より
茶飲み友達言われるほどは枯れてない 西垣こゆき
故郷を追い立てられる見えぬ敵 松岡ふみお
センターラインに捨てられている外れくじ 坂倉広美
芽が出るまでは毎日見つめられる土 橋倉久美子
日に三度作って食べて片付けて 北田のりこ
うっかりとポストを開ける休刊日 鈴木裕子
急患を待ってはいない当直医 加藤吉一
戦争も平和利用も核は核 長谷川健一
ゆっくりと起きて慌てるゴミ出し日 水野 二
誉められないと次は並ばぬ新メニュー 竹口みか子
値切り上手妻の心臓見習おう 瓜生晴男
ばらの花刺はあるけど銜えたい 安田聡子
六桁のみやげ横目にバス旅行 野村しおひ
一週間の真ん中辺でウツになる 鍋島香雪
歯の治療一日で済みもの足りぬ 小出順子
蚊柱のようにおばさん語り合い 鈴木章照
忘れたで済む年齢になっている 沢越建志
クーデター中もアラーに祈る民人 山本 宏
二次会は十八番をひとつ歌うだけ 高柳閑雲
喧嘩する直前夫婦旅終わる 加藤峰子
ポケットに無駄がいっぱい詰めてある 青砥英規
そうれ見たことかだけでは帰れない 堤 伴久
はっきりと意思を伝えて切る電話 山添幸子
亡父がしたようにしてみる帽子掛け 水谷一舟
十二階ここまで津波来ないだろう 小川のんの
雨の日も蛙になれば楽しめる 松本諭二
風水の石を飾ってみぎひだり 石谷ゆめこ
まだ夢の残りを詰める瓶の蓋 吉崎柳歩
限りある命のほころびをかがる 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」


 209号から                                      丸山  進

鼻づまりだけでこんなに憂鬱か       加藤 峰子
 花粉症などで鼻づまりに苦しむ人は多い。傍から見て分らないので、健やかな人との落差が悩ましさを募らせる。

ふるさとの想い出姉はこわかった      水谷 一舟
 作者の姉さんは相当年上で、時に親代りの役を担っていたのだと想う。多分、坂本龍馬の乙女姉さんのように恐くて頼もしい姉さんの想い出が、いっぱいあるのだろう。

作業服汚れぐあいに息子知る        小川のんの
 どこの息子も自分の事、特に仕事の話はしたがらない。親としてはそこが一番心配で知りたいところである。作業服の汚れ具合に、息子の苦労を偲ぶ親心が切なく暖かい。

田の苗の整列を見て気を締める       松本 諭二
 田植が済むと水田が突然、緑のマスゲームの様になる。苗の整列を、人と自然が一体となり実りの秋に向けた出陣式のように見た、作者の気持ちの高揚感が伝わってくる。

白い蝶赤い苺を実らせる          松岡ふみお
 白と赤の競演が艶やかで、生と性の感喜を想わせる。

今日もまたミイラをひとつ作りだす     橋倉久美子

 面白い句である。これは本来のミイラではなく、不朽で保存すべきものと最初に読んだ。でも、今日もまた、なので、無駄事のような作者の負の心象を暗示したものだろう。

貴婦人と見紛う猫に迎えられ        竹口みか子
 貴婦人のような猫に大邸宅、上流階級の交際の様子がほのぼの感じられる。そう想わせるエレガントな作品。

オートバイ声をあわせて持ち上げる     野村しおひ
 バイクが側溝にでも落ちたのであろう。通りがかりの人達が集まり「セイノー」と持ち上げる姿が浮かぶ。人情に厚い良き時代の名残が嬉しい、という作者の笑みがある。

ぶつからぬように泳いでいる魚       小出 順子
 日常の何気ないことや誰も感じないことを「おやっ」と思い、句にできるのが作者の非凡な感性である。

愛嬌のいい子に向かぬ職もある       山本 宏
 おっしゃる通り、と思わず言いたくなる。セレモニーホールの司会等がそうだ。特に葬儀社で笑みは厳禁である。

                           (バックストローク同人 瀬戸市在住)

6月26日(日)大会より
事前投句「 迷う 」 青砥たかこ 選
  迷い出しだしたら切りがないのでもう寝ます 松本諭二
  偏差値に迷う権利をうばわれる 表 洋子
 秀 愛されていても女はまだ迷う 水谷一舟
迷わないしっかりご飯食べたから 青砥たかこ
席題「 日本 」 三村 舞 選
  まっ青な空だ日本を信じよう 山縣正彦
  風鈴と団扇で甦る日本 吉道航太郎
 秀 日本のたましい魅せる千枚田 青砥たかこ
原発事故後特に日本が好きになる 三村 舞
宿題「 リアル 」 中 博司 選
  抱きしめて下さい何も言わないで 池上道子
  現実にもどると妻が横にいる 水谷一舟
 秀 生まれたら死なない人はないのです 吉道あかね
まっすぐに命に落ちる水である 中 博司
宿題「 くわしい 」 水野奈江子 選
  事の詳細消しゴムみんな知っていた 柴本ばっは
  日めくりの裏にくわしい愚痴がある 水野 健
 秀 へその緒に詳しいことが書いてある 中 博司
経験はないがくわしい失恋記 水野奈江子
宿題「 消える 」 丹川 修 選
  大震災の死者が数字になっている 三村 舞
  苦味消えるまでの間は漢(おとこ)です 竹尾久扇
 秀 毒薬の効果が消えるまで生きる 坂倉広美
表情の消えた母にもある権威 丹川 修
宿題「 気合い 」 山本 宏 選
  スケジュール母の気合いが埋めてある 古市紗千子
  キッチンの夫ハンパじゃない気合い 岩田明子
 秀 追伸の二行気合いが込めてある 中 博司
もう気合いでは脳も体も動かない 山本 宏
宿題「 後ろめたいこと(読み込み不可) 」 大嶋都嗣子 選
  逃げ腰の男を撃ったことがある 吉崎柳歩
  へそくりを聖書の中で暖める 小川加代
 秀 告発に使ったひとのペンネーム 寺前みつる
友達の夢を齧ったことがある 大嶋都嗣子
宿題「 自由吟 」 宮村典子 選
  水洗いしてから形決まらない 小出順子
  迎合はしません枇杷の実の頑固 荻野浩子
  風は死んだ人に戻れる道をつけ 水谷一舟
  こだわりは味 ナイーブな瓶の蓋 宮村典子
特別室

吉崎柳歩川柳集
 『瓶の蓋』
                                               清水 信

「寸鉄人を刺す」という。
 寸鉄とは、長さと材質の規定はあるものの、太さや鋭さについては、正解がない。
 吉崎柳歩の川柳句集『瓶の蓋』(6月26日、KK伊勢出版刊)は、寸鉄人を刺す印象が、先ずあって、久しぶりに爽快感があった。

 中日新聞に連載中の岡井隆の「けさのことば」は、大岡信の真似で、作品の選出が平凡で気に食わないが、『瓶の蓋』を入手した日は、珍らしく川柳を取り上げていた。
・生きかたをみせあうように逢っている    (弘津秋の子)

『アリア』という句集からの抄出という。「温かく切れ味の良いのが」この人の持ち味と解釈して、
・幸せな人はゆっくり返事する
・真剣になるほど軽い声になる

 という作も紹介している。
 また、その翌日(6・17)には『緑雨警語』の中より、斎藤緑雨のアフォリズムを引いている。
「友は心のさびしき時、懐のつめたき時、つまりお銭のほしいような気のする時、互いに一寸小当りに、当り合うものに過ぎず」

 というニヒリズムに溢れた断章である。『瓶の蓋』は、番傘編、展望編、鈴鹿編という三部に分かれているが、そのいずれにも、瓶の蓋が詠み込まれている洒落ようである。蓋とは、中味がいる時には、いらぬもので、いらぬ時はいるものである。川柳は前衛で、抽象画だという吉崎氏の持論は、どこにも生きている。

 青砥たかこ、橋倉久美子の「跋文」が非常に良い。二人が選んだ句に、
・多数決いつでも僕は少数派
・媚びたりはしない鴉もわたくしも

 というのがあって、本命だろう。

・性格が良くて皮肉が通じない

 というのも、作者の本音だろう。

 いつも「柳論自論」や「没句転生」や巻頭言を拝見して、賛同することが多いが、「選」や「添削」や「編集」に関わる作が多くて、一派を育成していくことの哀歓に同情する。
・黒はもう切れた三色ボールペン
・竹槍がいっぱい採れる竹林
・切れ味を試したくなる日本刀
・口で言うほどにはペンが走らない

 日本刀や竹槍はもちろん武器だが、ペンやボールペンも「寸鉄」というべきものである。

▼鈴鹿市南旭ヶ丘1・6・3 吉崎 勝

                                                                                                                  (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 予算 』
 10 花を買うちょっと予算が浮いたので 橋倉久美子
  9   縁起でもないが予算は立てておく 吉崎柳歩
   8 自分へのごほうび甘くなる予算 福井悦子
  7 美しく老いるエステに組む予算 福井悦子
  震災で予算の底が抜けていく 加藤けいこ
  客側の予算に合わせ落ちた味 加藤吉一
  飲み放題ならば妻から許可がでる 濱山哲也