![]() |
|
目次07年12月号 ・例会 |
|
|
| 巻頭言 | |
|
竹里さんを悼む
十一月五日、西山竹里さんが亡くなった。享年六十二。若いというだけでなく、七月に急性胆嚢炎で手術をした後「悪いものが見つかった」と聞いてから、あまりに早すぎる訃報だが、それを予感させるものがないわけではなかった。
川柳界では数少ない同学年の竹里さん。確かな作句力と見識、巧まざるユーモア、知識と知恵を兼ね備えた賢い人だった。これから先の川柳人生を、伴走してもらえると信じていた。私は今、途方にくれている。 |
|
| すずか路より | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
竹里さんの遺句から各50句 青砥たかこ選 50句 オオタニも聡太もうちの子もよい子 封筒に封がしてある診断書 さだまさしの案山子を聴いて痛む胸 検査検査 本丸までの遠い道 バナナ食う姿が似合う私の子 はらはらとあの世へ散ってゆく桜 長男が洗顔ソープ使い出す 乾くまでに貼る必要がある切手 答え見ても解けない灘中の入試 再会を唱えるだけの年賀状 受験生のおかげで風邪もひけぬ父 替え芯のままでは使いにくい芯 地味ですが私の好きな木の葉丼 すぐ風呂に行けぬ勝ち残りの力士 猛暑日に頼んだおせちやっと来る 横からの攻めには弱い押し相撲 餅を焼くだけで片付く寝正月 物言いがつくとドキドキする行司 玄関に飾るほどでもない家訓 低い声なので行司に向いてない 可愛いとあまり思えぬよその猫 柄物のまわしは見かけない相撲 小松菜と水菜を食べるウチの猫 有能な部下はそのうち邪魔になる 飼い猫の診察券も持っている 稲刈られ途方に暮れている案山子 鍵かけて大切にするマイホーム これだけの値打ちがあると言う値札 イチゴショート箸で食べてもかまわない わざわざでないとできない回り道 パセリまで食べる育ちの良い大人 電柱の影より役に立つ日傘 欠かせない老眼鏡と指サック 騙された人は懲りずに騙される 日曜も仕事ができる自由業 ミニバイクに乗ってかわいいポリスマン 展望の大会2キロほど痩せる 一寸の虫だが選挙権はある サプリならビオフェルミンを飲んでいる ご祝辞が済むと姿を消す議員 死にそうになった話はかなりある 十万年払い続ける核のツケ 三十年命が延びたことの意味 本物と気付かれにくいバンクシー わたくしの肝より太い注射針 「春一番」名前がおしとやか過ぎる 採血のときは必ず目をつむる 肩組んで「鐘の鳴る丘」歌いたし パソコンを連れて看護師やってくる 振り返る昭和はみんな夢の中 𠮷崎柳歩選 50句 振り返る昭和はみんな夢の中 ビギナーズラックとはいえ取った賞 快癒へと徐々に気力が満ちてくる 出身校以外は歌えない校歌 ベンツには乗せてもらったこともない 怪しげな人に見られる自由業 温暖化しているように見えぬ冬 考えて動いてほしい浮動票 脚光を浴びる機会はない案山子 土俵際でなければ出ない粘り腰 オオタニも聡太もうちの子もよい子 棒読みであってもかまわないお経 言いたいこと言えて楽しい自由吟 故障車がたまに停まっている路肩 指揮棒を忘れてきてもできる指揮 鍵かけて大切にするマイホーム 裁判所最後は国に味方する 健全な社会にはある選択肢 何が何でもマイナカードにしたい国 違う日に出され肩身の狭いゴミ 雪国でなくても油断できぬ雪 簡単に医者が投げてはならぬ匙 もぎたてには勝てぬスーパーのいちご 反対に進んでほしくない順路 専門家の予測通りになるコロナ 飲む前はいつも二合と決めている 家族には相手にされぬ私の句 ワイパーに邪険にされているしずく 掃除機に吸われぬように逃げる猫 二日後に書くのは難しい日記 学問の首にも縄をつけたがる わたしの字と一目でわかる自分の字 桜見る会桜はなにも悪くない 周りより偉そうである予約席 戦死者の六割餓死という事実 扱いに困ると捨てられるペット 関係者以外眩しくない叙勲 これ以上進化しなくていい案山子 桜餅を本物にする桜の葉 風に転がる祭りの後の紙コップ 忘れてはならぬ裏方さんの顔 ご期待に沿えないことが多い絵馬 腰低い天皇頭が高い総理 名人も最初は読んだ入門書 王様の裸に目をつむる与党 もう少し冷やした方がいい地球 オジサンが気楽に行ける散髪屋 地表には決して顔を出さない根 深刻なことは書かない試し書き 骨壺に全部は入らないお骨 橋倉久美子選 50句 言いたいこと言えて楽しい自由吟 悔いている兵もいるはずロシア軍 あきらめも期待も入る投句箱 葬儀社に遊び心はなくてよい メモできぬ湯船で二句以上浮かぶ コピーした方が写経は早く済む 友だちの本の書評を書かされる 迷惑でしかないこともある熱意 丼にも国宝になる夢がある 割り方は特に決まってない卵 パセリまで食べる育ちの良い大人 たっぷりと空気を入れた袋菓子 深刻なことは書かない試し書き プライドをしっかり持っている駄菓子 代筆をしてはならない遺言書 ネジゆるめたくてもそうはさせぬ錆 枚数を確かめ合って食べる肉 どうやっても一歩ずつしか歩けない ソーラーパネル載せてはならぬ寺の屋根 傘さすと聞こえる小糠雨の音 死にそうになった話はかなりある 通り雨だから通してあげましょう 手をつなぐように畳んであるティッシュ コンビニで見かけたことはない二階 掃除機に吸われぬように逃げる猫 自然治癒することだってある家電 相撲部の助っ人に行く柔道部 上司へのお酌は左手も添える 刺すぞ刺すぞと言いながら刺すフェンシング ミニパトのパンダを思わせる車体 パシュートの電車ごっこのような列 本物しか使ったことがないお札 柄物のまわしは見かけない相撲 言論の自由を妻に奪われる 退屈し房を回している行司 オオタニも聡太もうちの子もよい子 金を出すからにはきっと口も出す 肩組んで「鐘の鳴る丘」歌いたし 賄賂にはあまり向かない図書カード 封筒に封がしてある診断書 有能な部下はそのうち邪魔になる 検査検査本丸までの遠い道 忖度と迎合ばかり流行る国 享年へ本人だけでない無念 茹でられていると気付いていない民 生と死の薄紙一重くらいの差 狼を支持するおおぜいの羊 まどろみのなかへ沈んでゆくいのち 腰低い天皇頭が高い総理 はらはらとあの世へ散ってゆく桜 |
|||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||
*