目次07年3月号 ・表紙裏(川柳展望年全国大会) ・巻頭言 「ややこしい読み」 久美子 ・すずか路 久美子・柳歩整理 ・小休止 竹里・知子 ・柳論自論(再掲) 柳歩 ・川柳つれづれ けいこ ・人と句 「水たまり今昔」を読んで たかこ ・例会 ・例会風景 たかこ ・没句転生 柳歩 ・アラレの小部屋 久美子 ・前号「すずか路」散歩 栃尾奏子さん ・誌上互選 ・インターネット句会 ・ポストイン ・お便り拝受・あしあと ・大会案内など ・編集後記
ややこしい読み
二月例会の互選「叩く」での無得点句に、「引っ叩いてやりたい」で始まる句があった。得点しなかった理由の一つとして、「引っ叩く」(ひっぱたく)が読めなかったり誤字だと思ったりした、あるいは違和感を持ったことが、合評で挙げられた。 そもそも題の「叩く」を、誰もが「たたく」と受け取ったが、改めて辞書で確かめると、この字は「はたく」とも読む。相撲の決まり手の「はたきこみ」が、漢字で書くと「叩き込み」であることを思い浮かべると、納得しやすいだろう。同じ漢字と送り仮名に二通りの読みがあり、「はたく」は「たたく」に比べ使用頻度が少ないこと、さらにこの句は「ひっぱたく」と音便になっていたことから、多くの人が「引っ叩く」に引っかかりを覚えたのだろう。 そんなことを考えながら、すずか路を打ち込む準備をしていると、中七が「そろそろ捌けて」という句があった。最初これを「そろそろさばけて」と読み、中八だと思ったが、句全体を読んでもどうも意味が通らない。しばらく考えて、「捌けて」は「はけて」と読むのだと思い付き、辞書で確認するとはたしてそうであった。 訓読みが複数ある漢字でも、「行く」と「行う」、「細い」と「細かい」のように、送り仮名が違えば読み間違うことはない。しかし、「叩く」(「たたく」と「はたく」)や「捌ける」(「はける」と「さばける」)、あるいは「辛い」(「からい」と「つらい」)のように、送り仮名も同じだと、文脈で判断しなければならない。(余談になるが、「細やか」は「こまやか」とも「ささやか」とも読むから、「細」の訓読みは要注意である。) 「辛い」の場合、大多数の人が両方の読みを知っており、文脈で判断して読んでいる。しかし「叩く」のように片方の読みがあまり知られていない場合や、「捌ける」のようにおそらく漢字字体になじみがない場合(ちなみに「叩」も「捌」も常用漢字ではない)は、書き手には漢字で書くのが適切かどうかの判断が、読み手には人に尋ねたり辞書を引いたりするひと手間が、大切になってくるだろう。 久美子
整理・柳歩