目次2月号
巻頭言 「 鐘の鳴る丘」
すずか路
・小休止
・柳論自論
リレー鑑賞
・ひとくぎり
・例会
・例会風景
没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号印象吟散歩
誌上互選
・ポストイン
・みんなのエッセイ・その他
・大会案内
・編集後記

 


柳歩
柳歩整理

柳歩・堤伴久
加藤吉一
たかこ


柳歩

清水信
橋倉久美子
たかこ



 
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巻頭言


 「 鐘の鳴る丘」

 新家完司さんのブログを時々覗かせてもらっている。
 そのスーパーマンぶりには今さら驚くこともないのだが、カラオケで歌われる曲もバラエティーに富んでいる。
 そしてその中に、古い歌謡曲であまり歌われていない曲もあるのが楽しい。「あこがれの郵便馬車」「お富さん」「山陰の道」などなど。 そして極め付きは童謡だ。「みかんの花咲く丘」や「鐘の鳴る丘」を大の大人が、それもあの風貌で熱唱されるのだから感心する。
 昨年、名古屋での大会のあとカラオケにご一緒したが、締めは完司さんの音頭で「鐘の鳴る丘」(とんがり帽子)の合唱であった。
        ♪緑の丘の赤い屋根
            とんがり帽子の時計台
               鐘が鳴りますキンコンカン
                  メイメイ仔山羊も鳴いてます
                     風がそよそよ丘の家
                        黄色いお窓はおいらの家よ

 昭和二十年代、ラジオ放送されたドラマの主題歌(川田正子)だから、耳にこびり付いている方も多いだろう。
 「赤い屋根」「黄色い窓」がハイカラな感じで、母に「あんな家に住みたい」と言ってみたことがある。当時我が家は小さな社宅住まいだったのだ。
「でも、お父さんもお母さんもいないのよ」と母は言った。そう言えば歌詞の二番には、「〜鳴る鳴る鐘は父母の/元気でいろよという声よ〜」 とある。

 数年後、中学校へ進学すると、「共楽園」という戦災孤児等の養護施設から通学する子が、各クラスに二、三人いた。「河野」という教頭先生(住職さん)が園長さんだと聞いた。

 昨年末、二人の兄と勝浦で忘年会をした。八歳と四歳上である。夜、カラオケに興じ、私の提案でこの歌を合唱した。長兄は、「中学校の時の担任の先生が立派な人で、お寺で戦災孤児たちの面倒をみていた」と語った。河野先生だった。次兄は、小学校の運動会でこの歌の遊戯があった、と語った。

 終戦直後の混乱期にも、地味で高邁な「伊達直人」がいたのである。

                                                                 柳歩

 

すずか路より
よく貰うティッシュやっぱり買うティッシュ 加藤吉一
葉を落としひとり春待つ梅の枝 長谷川健一
伊勢参りおかげ横丁で下ろす腰 水野 二
湯上がりの寒さに震えまた浸かる 竹口みか子
元日に火事のサイレン追いかける 野村しおひ
こんがりと焼けたお餅にある色気 瓜生晴男
絶対に冬将軍に負けないぞ 安田聡子
共倒れならば私が降りましょう 鍋島香雪
雪の夜に姉は空へと舞って逝く 小出順子
一合で安くて美味い長寿薬 鈴木章照
じっと目をつむる仏の物思い 沢越建志
伊達直人真似は出来ぬがいい話 山本 宏
ネジひとつ失くして使えない機械 高柳閑雲
愛プラスエコ生活で同じ部屋 加藤峰子
国宝と知った途端に光り出す 青砥英規
ときどきは狂う鼓動を持ち歩く 堤 伴久
円陣を家族で組んだお正月 山本喜禄
すべて愛風が私を通り抜け 水谷一舟
忽然と無くなっている喫茶店 加藤けいこ
断捨離で捨てたセーター悔いている 小川のんの
酔った勢いでどんどん句が浮かぶ 松本諭二
外出は十二単にカイロ入れ 西垣こゆき
バス連ね老人会の伊勢参り 松岡ふみお
氏神様の貌をあなたは知ってるか 坂倉広美
赤い靴もガラスの靴も持ってない 橋倉久美子
ピカピカに磨いて靴ばかり目立つ 北田のりこ
今年こそ今年こそはと言う年初 落合文彦
甘えたり甘えられたり嫁姑 鈴木裕子
温泉に浸かって冬をやり過ごす 吉崎柳歩
日が経つと形を変えてくる思い 青砥たかこ
 

整理・柳歩

リレー鑑賞「すずか路を読む」


 204号から                                       加藤吉一

迷路出る日は突然に来るだろう       橋倉久美子
 
軽い表現の中に、どうしようもない迷いが伝わってきます。覚悟の上の迷路、ご苦労様です。

拾った人が困らぬように名前書く      北田のりこ
 名前を書く対象が、いろいろ膨らみます。例えば浮気な夫には持ち主の名を、徘徊の老人には、携帯番号も書いておくべきでしょう。

いくらでも手抜きの出来る家事だった    鈴木 裕子
 
家事が少なくなられた今、ご主人が見えた頃の幸せな家事を思い出されている感じ。夫を思う優しい心が、ぼんやり浮かんできます。

親に似た子ができるとは限らない      山本  宏
 
子が親に似るのは当たり前ですが、隔世遺伝もあります。大まかで軽く決め付けられた句意に、親の欲目とか、掃き溜めの鶴といった俗っぽい人間模様が想像されます。

助手席の倒し具合に妻の勘         加藤 峰子
 
夫たるもの疑われるような倒れ方の助手席を元に戻さぬ筈はない。僅かな差異にそれを感じられるのなら、鋭いカンに降参です。

百均の店に苦情は言いにくい        山本 喜禄
 
それはそうですと言いたいところだが、最近は所かまわず苦情を言う人が増えてきた。高が百円の品に苦情を言いたくない世代として共感します。

大会が三つわたしにあるノルマ       吉崎 柳歩
 
仕事以外に三つもノルマがあるのは、時間に縛られる苦しい生活だ。のろまな私には神業に思われる。毎日身体を鍛えるため体操をされていると聞いているが、それでもノルマがストレスとして残らないかと心配される方が多い筈である。

メモ帳の誤字も修正液で消す        青砥たかこ
 
普通メモ帳なら、黒く塗りつぶして横に書いておくのだが、誤字の傷痕を残すのは自分の隠れた部分を晒すようで嫌な気がします。何事も戻せるものは白紙に近い方がよいようです。

                                    (鈴鹿川柳会会員 鈴鹿市在住)

1月22日(土)例会より
宿題「 都合 」 吉崎柳歩 選と評
  都合つかなくて脱皮は明日にする 橋倉久美子
  おじさんの都合ほとんど無視される 東川和子
 秀 妻の都合でいつも狂ってくるプラン 坂倉広美
先生の都合で午後からは自習 吉崎柳歩
宿題「 ほやほや 」 加藤峰子 選
  ほやほやの免許横切る罪なネコ 加藤吉一
  手術受けほやほや医師と後で知る 石谷ゆめこ
 秀 ほやほやらしいレジがなかなか進まない 鈴木裕子
ほやほやの選者顔まで赤くなる 加藤峰子
宿題「 ほやほや 」 坂倉広美 選
  温泉を出て二時間はもつ美肌 西垣こゆき
  ほやほやが美味しい恋も焼き芋も 吉崎柳歩
 秀 できたてのほやほやですね新生児 東川和子
ほやほやのうちはペットでいてあげる 坂倉広美
互選 折句「う・さ・ぎ 」 高得点句
 8点 嘘少し咲かせています義理の仲 東川和子
 6点 うれしくて逆立ちしたい気分です 鍋島香雪
   腕はまださほどじゃないが几帳面 山本喜禄
  運勢欄さっと眺めて気にしない 坂倉広美
 5点 運命と悟ってからは気にしない 橋倉久美子
  嬉しさと寂しさ募る挙式前 瓜生晴男
  うめきつつ裁判員の義務果たす 橋倉久美子
特別室

ゆかいな句会
                                              清水信 

  名品は遠く去り、季語の美は涸渇している。今や、俳句の方から、波を起して、川柳に近づいている状況である。俳句を敵に回す理由は、何もない。

 本誌203号で、三重文化芸術祭川柳大会への意見として、吉崎柳歩事務局長が書いているように「字結び、楽屋落ち、ただの説明句、報告句、例示句」の他、題、時事、故事、諺、四字熟語などにもたれた句や、動く句、下品な句について「川柳観以前のものとして踏まえて」おくべきだと言っているが、もっともであり、俳句にとっても、事情は同じことだ。安価な妥協は、文芸の本質を崩潰させる。

 自分は『川柳すずか』の他『川柳亀山』や『川柳緑』や『川柳四日市』を毎号戴いて、専門外のこととて、恐縮しているが、句会の様子など作品結果や参加者の様子などから類推して、何れも仲が良さそうで、驚いている。

 昔のように、酔いだくれが暴れたり、意見が合わないからと言って、何人もがひっつかみ合い、なじり合うということは、小説中心の会の合評会でも、姿を消したが、短詩型文学の勉強会での仲良し具合は、度を越えていそうだ。

 どの雑誌でも、例会での批判の応酬や、深い論議は記録されていないので、その実態は分からないが、仲の良いだけでは、切磋琢磨の場としては、心許ない。互選会での高得点の作が、自分とは全く違うので、こういう場合、どんな気分で会場に坐っているかを空想すると、一寸空怖ろしい。果して、意見は聞いてもらえるのだろうか。それとも、一人浮いたままで、放っておかれるのだろうか。

 前号で触れた『河』の場合は、カリスマ性のある角川代表が先ず、乱造した自作を何十作も披露した後、選句の骨格はこうだぜと言うらしい。

(1)言葉のリズム
(2)映像の復元
(3)自己の投影

 の三つで「飽きのこない句」が一番だと説得するらしい。
 ためしに青焔美術研での例会の高得点作の内

・秋の日の二十五グラムのラブレター
・蒙古斑蟻のヨットに詩があった

 には、自分も票を投じたいが、川越句会での、次のような作には、バツをつける。(河それからA)

・駄菓子屋の駄菓子十円ほどの秋
・秋の声いきなり白いブルドッグ
 
・秋雨や羅漢の中に親の顔

                                                                                                                  (文芸評論家)

誌上互選より 高点句
前号開票『 掴む』
 15 コツ掴む頃には終るお手伝い 沢越建志
 10 そんなところを掴んではいけません 吉崎柳歩
  9 かき混ぜて掴んでみても外れくじ 吉崎柳歩
   8 大金を掴んでからの不眠症 福井悦子
  7 ママの手がグローブになる掴み取り 鈴木章照
  6 苦労して掴んだ赤い糸に泣き 鈴木章照