「 三月危機」

  　３月１１日、日本は東日本大震災という、千年に一度と言われる未曾有の自然災害に見舞われた。全国どの川柳会の機関誌の巻頭言も、今月号はおそらく皆この事に触れているだろう。

　平成２３年３月は、我が鈴鹿川柳会にも激震が走った。

　第一回鈴鹿市民川柳大会で取りの選者を務めて下さった、堺番傘川柳会会長の中田たつおさんが十九日に急逝された。ずっと鈴鹿川柳会を応援してくださったたつおさん。明子さんと毎年鈴鹿川柳会の忘年句会と忘年会にも出席してくださったたつおさん。兄貴のように接してくださったたつおさん。残念でたまらない。たつおさんはもう還って来ない。悲しくてたまらない。

　３月９日、「川柳すずか」３月号の発送作業の日、たかこ会長は「最近、顔の左半分が痺れている。右端が二重に見える」などとこぼしていた。嫌な予感がした。昨年の手術で除去したはずの大腸癌の再発？　脳に転移したのなら厄介だ。十四日にＭＲＩを受けられたたかこさんは、詳しい検査のため翌日入院された。再発とは関係なかったが、重篤な病気には違いはない。検査を受けなかったら、早晩命を失っていただろう。

　３月の例会は、会長に就任してから、いや、私と編集のコンビを組んだ平成１２年１２月以来初めて欠席されることになった。一ヶ月や二ヶ月欠席されるのは構わない。万が一のことを思うと心配でならなかった。

　３月２５日、難手術成功。経過を聞いて現代の医療技術の進歩と、たかこさんの運の強さに驚く。経過も良好、術後の懸念もなく、４月２日退院の運びとなった。

　私の光視症も、この一年半すっかり治まっていたのに、心労もあってか、この月に三回も発症した。しかし、再びたかこさんんと憎まれ口を叩き合いながら、鈴鹿川柳会の運営にあたれると、正直ホッとしているのである。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　柳歩

　２０６号から　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西澤知子

こんがりと焼けたお餅にある色気　　　　　　瓜生　晴男
　食欲旺盛な私はお餅にひきつけられ、特に「色気」には感心しました。意外と食べ物の句は少ないのですが、美味しい句はお腹が鳴ります。その見つけられているお餅になりたいと思いました。

ガイドの腕売れた赤福へんば餅　　　　　　　加藤　吉一
　「ガイドの腕」が効いています。買う気にさせるベテランのガイドさんの声が聞こえてきます。

価値観の違いを嘆く影法師　　　　　　　　　沢越　建志
　戦前生まれの夫と戦後の私は、価値観も違いちょくちょくもめる。お互い認め合い、妥協することも大事という結論。笑わない夫も少しは変えることができたが、これ以上は無理。

与野党の立場で意見入れ替わる　　　　　　　吉崎　柳歩
　国会中継をみていてがっかりする。先に与党案をださずに「与野党で協議したい」とは責任転嫁しているように思えてならない。

ロウバイは雪の中でも平気です　　　　　　　安田　聡子
　友人からもらったロウバイを大きな壺に活けてある。一ヶ月以上たっているのに美しい。何があっても負けない、たくましく生きる女性のよう。その上、美しいときているから妬ける。

苦労した人の一言しみわたる　　　　　　　　小川のんの
　悩んだ時は苦労した人に相談にのってもらう。説得力があり、元気をいただけるから。苦労されたのに、そう見えない明るく楽しい人が私は大好き。

やさしくて我慢強いと自画自賛　　　　　　　鍋島　香雪
　生きることは、満足したり、反省したり、決意したりの繰り返しです。楽観主義と自画自賛で生きている私は、自分のことを言われたような親近感を覚えました。

あいまいな返事に期待させられる　　　　　　青砥たかこ
　「あいまいな返事」はいけません。たかこさんから「鑑賞文お願いしたい」と言われた時、「こんな私でよかったら」と返事させていただいた。ご期待に応えられたかは疑問ですが、今日は肩の荷がおりてゆっくり休めます。まさに「大の字に寝ても反省ばかりする」の心境。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（やまと番傘川柳社同人　橿原市在住）

                                     　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　                                                       （文芸評論家）