目次27年8月号
巻頭言 「 集団的自衛権」
すずか路
・小休止
・柳論自論「戦争と短詩型文芸」
・没句転生
川柳・人と句「 多村 遼」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・お便り拝受・その他
・大会案内
・編集後記

柳歩
柳歩整理

柳歩
柳歩
たかこ
たかこ

清水 信さん
久美子
丸山 進さん


たかこ


 
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巻頭言

「集団的自衛権」

 自民党のインターネット放送での、安倍首相の例え話は傑作だった。

「『安倍は生意気だ』と私を殴ろうとする不良がいる。すると麻生さんという友だちが『おれはケンカが強いから守ってやる』と言って一緒に家に帰ってくれた。そこに三人くらいの不良が出てきて麻生さんに殴りかかったとする。このような場合、私は麻生さんを助けることができる。これが集団的自衛権だ。これが今回の法制で可能になる。」
 麻生さんがアメリカで、三人の不良とは中国、北朝鮮、ロシアなのだろう。 立憲主義国たる日本国の、憲法の解釈を変えようする一大事に、「近所の不良とのケンカ」を例え話に持ってくるとは驚きだ。現状がどうあれ他国を一方的に「不良」と決めつけるなど、端から外交努力を放棄している。これが安倍さんの言う「丁寧な説明」なのだろうか? 自民党員に対しては、これで説得力があるのだろうか?

 また、フジテレビ「みんなのニュース」に生出演した時には、アメリカ家の母屋、離れ、日本家の間での火事の類焼を事例にして集団的自衛権の説明をしていたが、これも「不良のケンカ」以上に噴飯物だった。「有り得る紛争」を例にすると、結局、他国の戦争に参加することになるので、「人道的な消防活動」を例にすることにしたのだろう。最初から説明になっていないことは小学生でも分かるだろう。

「国民の理解は進んでいない」から引き続き丁寧に説明する、と安倍首相は言うが、その内容と手法の欺瞞性に対して理解が深まってきたからこそ、反対の声が高まっているのだ。学者、弁護士、学生、市民など、各界各層、地域に抗議の声が拡がっている背景には、法案への不安もさることながら、我が国の培ってきた民主主義、立憲主義が壊されてしまう、との強い危機感があるからなのだろう。俳人、金子兜太氏も、「アベ政治を許さない」という文字を揮毫して運動を応援している。川柳人も傍観してはいられない。

                                       柳歩            

 

すずか路より
アメリカが一番好きな自民党 加藤吉一
話すより聞き手にまわり楽をする 安田聡子
二千円札使えますかと聞いて出す 芦田敬子
聞き流す政治に民が動きだす 圦山 繁
手紙より愛は言葉で伝えたい 鍋島香雪
怒っているうちは答が見つからぬ 小出順子
温暖化うながすように油蝉 鈴木章照
看板にこの先道はないとある 高柳閑雲
名前だけ文化芸術懇話会 川喜多正道
妻の目に私はいつも暇らしい 石崎金矢
サボテンに小さな花が咲く平和 柴田比呂志
ひまわりも横になりたい日もあろう 竹内そのみ
言っているうちに言い訳じみてくる 樋口りゑ
来る前のこのうれしさも宝もの 加藤峰子
新築にどこか馴染めぬ老いた猫 西野恵子
屁理屈の過ぎたところが焦げくさい 青砥英規
一病と向きあう生きている証 外浦恵真子
クラス会みんないろいろあるのです 寺田香林
一票が招いた国の一大事 西山竹里
どうしようもなくて口笛吹いている 尾アなお
手伝った菜園腕を見込まれる 岡ア美代子
弁当を作って礼を言われない 神野優子
不機嫌な体重計に今日も乗る 上村夢香
ちょっとしたはずみで好きになった人 前田須美代
言い負けておけば平和になる我が家 水谷一舟
嘘はつかなくなりましたエンマさま 石谷ゆめこ
バルサンで追い出したいと思う人 岩谷佳菜子
「待った」から先に覚えた初将棋 小川のんの
体力が要る不用品捨てるにも 西垣こゆき
ガードマン何故か私で止めたがる 松岡ふみお
誰の都合も考えないで夏が来る 坂倉広美
高い声出にくくなってきたマイク 橋倉久美子
ほどほどに難しいので楽しめる 北田のりこ
百科事典がずっと眠っている書棚 落合文彦
陳列が上手衝動買いさせる 河合恵美子
アベ政治を許さない波人の列 毎熊伊佐男
膝痛をだましだましの拭き掃除 鈴木裕子
七十歳読める楽譜がちゃんと有る 長谷川健一
特価日に女の助言受けている 水野  二
昼寝して睡眠不足取り戻す 竹口みか子
帰省した孫に備わる逞しさ 瓜生晴男
猫舌の人がコップに付けた耳 「招待席」橋本征一路
戦死者を出して欲しくはない陛下 吉崎柳歩
先延ばしはしないお詫びも検診も 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句41「多村 遼さん」                                                                                  たかこ

 

ポケットの底に水色のトンネル
無呼吸の闇に点滅する蛍
無味無臭蒸留水になる暮らし
あきらめる癖はあなたを失って
原生林でてからラピスラズリ色

爽やかなラベルの下にある孤独
ゆびきりをすればみーんないなくなる
そして春うしろ姿の雪男
耳鳴りをシフォンケーキに悟られる

風穴に聞かせる母の子守唄
囚われの身にもナイチンゲール啼く
夏野には命をつなぐものばかり
生きているから真っ白な刺繍糸

風向きをまだ確かめている帆布
貘がまだもどって来ないとおせんぼ

うっかりと影を忘れてきてしまう
最終欠席投句)

平成十九年八月号最終近詠句 五句

白鷺も雨の青田にただ一羽
折り紙の金魚に酸欠を告げる
煮詰まってゆくのはジャムを煮る私
ガス抜きを待つパン生地のふくれ面
風穴を開けましょ指をなめてみる

平成十九年十一月永眠
 

7月27日(土)例会より
宿題「やれやれ」 橋倉久美子 選と評
  駄洒落にも笑顔見せねばならぬ部下 圦山 繁
  銀メダルでもなでしこは褒められぬ 川喜多正道
 止 一回戦コールド負けをした母校 吉崎柳歩
 軸 我を捨てて足の形になった靴 橋倉久美子
宿題「流す・流れる」(共選) 鈴木裕子 選
  血を流す未来は見たくない抗議 加藤吉一
  聞き流すため両側に耳がある 橋倉久美子
 止 流されてなるかと泳いでるメダカ 橋倉久美子
 軸 ファックスを流してすぐに気づくミス 鈴木裕子
宿題「流す・流れる」(共選) 水谷一舟 選
  声の良い僧侶だお経聴きほれる 青砥たかこ
  おやじギャグ聞き流せない時もある 岩谷佳菜子
 止 聞き流すため両側に耳がある 橋倉久美子
 軸 酒に流す話を男持っている 水谷一舟
宿題「自由吟」 青砥たかこ 選と評
  見る人を癒すつもりはないお花 圦山 繁
  安部さんに迷惑かける安倍首相 吉崎柳歩
 止 炎天の下はカラスも歩かない 西垣こゆき
 軸 くり返す日々を新鮮だと思う 青砥たかこ
席題「肩」(タイミング)
12点 お開きにするきっかけをみる幹事 坂倉広美
 8点 急く時もタイミング要る自動ドア 加藤吉一
 6点 タイミング悪くてお昼食べられず 青砥たかこ
 5点 金魚すくいもうなぎつかみもタイミング 橋倉久美子
  勘定のタイミングみて行くトイレ 圦山 繁
  サスペンスタイミングよく出る凶器 圦山 繁
  盆踊り輪の中入るタイミング 千野 力
特別室

 続・児童文学                                      清水 信

『あかまんま』26号は、発行所は名古屋市名東区文教台二‐五〇三‐三〇三臼井由美子だが、代表は鈴鹿市上野町三九〇の加藤正美である。同人は10人。

 加藤正美の「飛べ! オンドリ九太郎」は原稿用紙94枚、中井ゆめ子の「吾は藤原朝臣定家なり」は112枚という大作。代表や事務局長が範を垂れている印象で、ふるかわその、西村けいこらが20枚、野口嘉子、司城みずほ、山田二葉が10枚前後で、その後を追っている。他にも詩や短歌のページもあって、いかにも楽しげな編集である。

『のぼり窯』14号は瀬戸児童文学の会の刊行。愛知県瀬戸市東松山町一五五‐五五網引美恵が連絡先。同人は6人だが、元気で長編が多い。小さな活字で三段組み。森乃あさの「プラモっ子」は、26ページ。遠山裕子の「羽衣の庭」は24ページ。松下好美の「おまつり太鼓でワッショイショイ」は32ページ。という凄さ。夫々四百字詰原稿用紙で80枚から、百何十枚までの作品だろう。

 大きな活字で二段組みにした作品(花久けい子、いとうちえ美、奈雅月ありす)も、かなりの作品。

『半田文学』4号は、元淑徳大学教授の堀尾幸平を顧問にした半田文学の会刊行のもの。代表のアドレスは半田市宮本町三‐二〇七‐三大岩史恵である。
 巻頭から三本の童話が並ぶ。
  三浦純子「らーちゃんとごん太くんの森のケーキ屋さん」
  大岩史恵「クマとうさぎ」
  米田和恵「うなぎ」

 共に小動物が扱われているところに特長がある。他に俳句やエッセイがあり、資料として「新美南吉生誕百年記念祭」の報告があり、堀尾顧問の小説「十五夜お月さま」がある。

『あかまんま』で顧問格の加藤の作品が断然光っているように、ここでも堀尾の作品が光っている。

『ともしび』は611号も続いた老舗の短詩型の雑誌である。名古屋市守山区森孝二‐七〇四鈴木公二が発行所であり、鈴木が指導者だ。

 詩も俳句も短歌もエッセイも拒まないという方針の雑誌だから、応待も心を広くして当ることが原則である。

 短歌に「南吉の苦悩」(中根涼香)があるくらいだから、児童文学への関心も深いと見た。

 ・南吉の苦悩を綴る日記にぞ彼の文学の神髄を追ふ
・病ひ得て父母の確執すさまじく南吉は夜に堤へ難かりし

 他に鈴木の詩(八十歳の思い)が良い。

                                                                            (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票 『励む・励ます』  応募82句
 1 7  過労死をするほど励んではならぬ 吉崎柳歩
   寝たきりになってはならぬから歩く 鈴木裕子
   励むより励ます側にいて気楽 吉崎柳歩
 1 0   励んでもあまり気づかれない案山子 橋倉久美子
     見くびられたかライバルに励まされ 北田のりこ
   9  励まされ引けなくなった果たし合い 西山竹里
   7  仮設小屋励ましよりも欲しい家 川喜多正道
     枝豆に励まされてる大ジョッキ 橋倉久美子