目次28年4月号
巻頭言  AI選者」
すずか路
・小休止
・柳論自論「扉とドア・考」
・没句転生
川柳・人と句「私の周りの柳人たち」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・お便り拝受・その他と
・大会案内
・編集後記

柳歩
柳歩整理

柳歩
柳歩
たかこ
たかこ

清水 信さん
久美子
寺前みつるさん





 
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巻頭言

「AI選者」

 過去十年で最強と言われた韓国の棋士に、四勝一敗で勝利したグーグルの囲碁ソフト「アルファー碁」の衝撃は大きかった。チェスや将棋は既に大容量のCPUに破れているが、囲碁の終局までの手順は10の360乗あり、トッププロに勝つには、この先十年もかかると予想されていたのである。
 
 「我々は、人間の頭脳を鍛えるようにアルファ碁に棋譜を学習させ、試行錯誤を繰り返させた結果、自ら最適な戦略を考えて名人を倒せるレベルに到達した」と、このソフトウエア開発のチーフエンジニアであるベーカーは話している。「自ら学び直感力を磨く」ところに従来のAI(人工知能)を超えた発展があったのであろう。
 また、続いて、人工知能の小説が「第三回星新一賞」の一次審査を通過した、というニュースが飛び込んできた。この「AIによる小説創作プロジェクトチーム」は、故星新一の書いた約一〇〇〇作品をコンピューターで分析し、さらに使われている単語や文章の長さ、言い回しなどの特徴をコンピューターに学習させるなどして、新たな物語を生み出させたそうだ。

 そこで私が思いついたのは、「学習するコンピューター」なら、競吟(課題吟)に対応する「選句ソフト」が実現し得るのではないか、ということである。演算装置たるコンピューターと、創作たる芸術や川柳とでは次元は違うかも知れない。しかし、現在の選者システムは、その共選の結果の実態などを鑑みると、競吟の判定としては納得できるものではない。入選句は「作品の良し悪しより選者次第」ということは、誰もが実感していることだろう。
 
 川柳の選者に資格審査はない。選者はせいぜいコメントを述べるぐらいで、選句結果も選評も批判に晒されることはない。一番楽なのが川柳の選者であるが、川柳界は仲良しクラブになっており、抜本的改革は期待できない。
 AI選者(人工知能)なら、あらゆる選句基準と、古川柳も含め、膨大な入選句のデータを検証して、皆が納得する選句ができるようになるだろう。

                                                                      柳歩
            

 

すずか路より
留学の無事を祈っている佛間 鈴木裕子
きれいな路掘り返してる年度末 長谷川健一
年齢の記入欄だけ書き渋り 水野  二
仕事終え慌てて向かう句会場 竹口みか子
牡丹餅を墓前に彼岸香煙る 瓜生晴男
朝刊の一面記事はもう遅い 加藤吉一
ふき味噌を御飯に乗せて春思う 安田聡子
出る杭をここぞとばかり週刊誌 芦田敬子
自動化で五感が鈍くなるばかり 圦山 繁
お先にと帰った彼が午前様 千野 力
筋トレは無理脳トレはまだできる 鍋島香雪
門灯が子どもの帰り待っている 小出順子
喧嘩することがないので呆けてくる 鈴木章照
ゼロ金利なのに高利な高利貸し 高柳閑雲
「保育園落ちた」で動く重い腰 川喜多正道
ごめんなさい槍が降ったら行きません 石崎金矢
桜咲くもう悩んではいられない 柴田比呂志
振り出しへ何度もどった長電話 竹内そのみ
沈黙が苦にはならない二人連れ 樋口りゑ
暇な日は脳まで休むから困る 加藤峰子
何事もなかった帯を解いている 西野恵子
明日死ぬかもしれないと浪費する 瀬田明子
三月十日午前十時にすみれ咲く 青砥英規
春の夢たっぷりもらうふきのとう 寺田香林
網棚といつまでも言うJR 西山竹里
人並みのおもちゃ欲しくてアイパッド 岡ア美代子
割り勘でしこたま飲んだのを恥じる 日野 愿
陽光が花道つくる通学路 神野優子
違ってもいいよと友のアドバイス 上村夢香
寒過ぎたのね再婚するという娘 前田須美代
星座表手に星空に線を引く 栗田竜鳳
生きてると自己主張する足の爪 佐藤近義
目覚ましを鳴らさず起きる歳になる 岩谷佳菜子
お出かけで埋まる四月のスケジュール 西垣こゆき
重文になって扉は開かない 松岡ふみお
不合格でも守り袋は捨てられぬ 坂倉広美
明日洗う服を着ていく焼き肉屋 橋倉久美子
テニヲハが微妙に違いもめている 北田のりこ
花言葉とがる心を沈められ 河合恵美子
こじつけの理由押し切る数がある 落合文彦
過ぎ去って久しい僕の登り坂 毎熊伊佐男
選者ほど当たり外れのない互選 吉崎柳歩
しあわせをねがうちいさなちいさな手 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句49「私の周りの柳人たち」                                                                              たかこ


             山本  宏

無人駅なんとか銀座あった町
見た目より女性の歳は若く言う
ライバルにだけは見せたくない弱み
これからが怖いトンネル・橋・高架
カタカナのバッグを孫にねだられる
政権がどう変わろうと咲く桜
神様の気分で止まるルーレット

             山本 喜禄

バスタブをでんぐり返すような雨
手間暇をかけると笑う庭の花
慢性化すると難儀な平和ボケ
朝までに昔はとれていた疲れ
臍で茶をいつも沸かして帰る友
少しだけ不幸な人と馬が合う
なってから入るつもりのガン保険

             鶴田美恵子

呆け防止CD聴きつ帽子編む
逆縁の息子に叔母の喪が明けぬ
この艶はヒアルロン酸コラーゲン
卓球の二時間だけで九千歩
ピンポンに勝ってうれしい湯に浸かる
母の日に孫とメロンを預けられ
人間のエゴか地球の温暖化

 

3月26日(土)例会より
宿題「近い」 吉崎柳歩 選と評
  泣き顔を見せに行くのは近い海 樋口りゑ
  近いけど行ったことない仏壇屋 橋倉久美子
 止 正解に近いが○はもらえない 青砥たかこ
 軸 近づいて見ればおばさんだと分かる 吉崎柳歩
宿題「扉」(共選) 竹口みか子 選
  半ドアのままじゃ本気になれません 北田のりこ
  遅刻して開ける扉の重いこと 橋倉久美子
 止 どっと嗤う声が扉の向こうから 坂倉広美
 軸 新しい扉の前で深呼吸 竹口みか子
宿題「扉」(共選) 加藤吉一 選
  大人へのドアがねちょねちょして嫌だ 樋口りゑ
  観覧車の扉中から開けられぬ 青砥たかこ
 止 点数が足りず扉が開かない 橋倉久美子
 軸 趣味の扉どこも叩けと待っている 加藤吉一
宿題「自由吟」 橋倉久美子 選と評
  若く撮るのも美女に撮るのも難しい 吉崎柳歩
  上下別でも問題はないパジャマ 青砥たかこ
 止 聞いてるだけと言われ立場のないテレビ 北田のりこ
 軸 健全か酒蔵巡るウォーキング 橋倉久美子
席題「回る・廻る」互選 高点句                     
 8点 回転が早い回転寿司の客 北田のりこ
 7点  目を回すことはまずないネジ回し 橋倉久美子
  チャンネルも電話も回してた昔 橋倉久美子
  僕がいるうちは回っている地球 吉崎柳歩
 6点 メーターが回って分かる水の漏れ 芦田敬子
  十九時を回ると眠いおばあちゃん 鈴木裕子
特別室

 昔の川柳J                                      清水 信

 書庫の整理中である。昔の『川柳ジャーナル』が山ほど出てきた。ざっと通読すると、やはり特集号が面白い。
 通巻百号の一九七二年三月号は、第一回の「春三賞」の発表号である。受賞者は「堕胎」の時実新子。

・暁のマリアを同罪に堕とす
・血の色の指は一花 父と問うな

 すでにプロ作家という位置にいた彼女の受賞は正しかったか、川柳はあくまで創作であるが、前衛を目指して作るのはニセモノになり易い。唯、新子のペンの音が聞こえるだけだと選評は、かなりキツイ。候補として女性では渡辺可奈子、羽渕礼子らが入っており、男性では三重の村田治男や定金冬二が入っている。

 中村富二は「上手な句はキライだ」とし、岩村憲治に点を入れている。

・血を喀いた男は父で 火を購いに
・少年は発光体さいさいと通りすぎて
・落ち行く先は枕をならべ火をならべ

 順に岩村、村田、渡辺の句。

『川柳ジャーナル』通巻116号(昭和48年刊)は、金子青泡句集『一枚の皿』の批評特集号。加藤淳二、内海繁、松本芳味らが親愛の辞を寄せている。この頃、すでに時実は選者になっていて驚く。青泡の句三つ。

・誰がために生きると思う一枚の皿よ
・草の根を分け語りつがせる原爆忌
・そのデモにわたしの影も顔をもつ

 さらに『川柳ジャーナル』通巻115号は百ページに及ぶ大冊。松本芳味の句集『難破船』の批評特集で充実している。私の文学的交流のあった清水正一、川崎彰彦、山内清、村田治男、滝川勇吉ら約20名が稿を寄せて壮観。三行書きだが、その作品を一行にして写す。

・無医村の露天に晒す生身の墓
枯木を焚いておんなを洗う地のくぼみ
・生きたかが生きたいあわれ道化の面
・生き難し異国の地図を展げいて
・風の二郎花かんざしを盗って去んだ

 この頃、発行所は高槻市竹の内町の河野春三の家にあったが、編集人は埼玉県新座市大和田の松本芳味にあり、やがて時実新子の家に発行所が移るのである。春三の後記に引く芳味の一句。

・流木のその一木の日は厳し

                                                                    (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票 『 賢い 』  応募93句
 1 1  美しい楷書賢く見せている 橋倉久美子
   賢いと思ってるから手に負えぬ 日野 愿
   9  賢さに陰り形状記憶シャツ 西山竹里
    お手すれば賢い犬と褒められる 芦田敬子
      カタカナ語使い賢く見せたがる 圦山 繁
    8点  ネジ一本抜けば賢くなるあなた 坂倉広美
     スマホという賢い箱を持ち歩く 石崎金矢
     余りにも賢い妻を持て余す 高柳閑雲
     立っているだけで賢い信号機 青砥たかこ