目次28年7月号
巻頭言  「二つの大会」
すずか路
・小休止
・柳論自論「単独選と共選」
・大会参加者
・大会入選句
・大会風景 参加者のお便り
誌上互選
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
・インターネット句会
・エッセイ あしあと
・大会案内
・暑中広告
・編集後記

たかこ
柳歩整理

柳歩




清水 信さん
久美子
柴田比呂志さん





 
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巻頭言

「二つの大会」

 第十四回並びに鈴鹿川柳会三十周年記念川柳大会も無事に終わった。例年通り第四日曜日に出来なかったり、他所の大会とダブってしまったりとそういい条件ではなかったが、昨年より参加者が多くて驚いた。
 ご参加下さった皆さんと、各柳社さんの紙面を割いて案内していただいたおかげである。感謝します。

 そして、十四回もやっていればもう少しドタバタしないで済みそうなものなのに、たくさんのミスやら、気配りの抜けてしまったことをお詫びしたい。しかし、スタッフの皆さんのがんばりが嬉しかった。秀句賞一覧を見て褒めて下さった人が何人かいてこれもなにより嬉しいことだった。

 大会の余韻に浸る間もなく、二十五日から全日本愛媛大会に参加した。こちらは六百八十四名の参加者である。会場全体が広くてゆったり感があった。ホールは三千人入ることが出来るそうである。「道後温泉、松山城、坊ちゃん、正岡子規」と、観光にもうってつけ。過去二回松山を訪れているが、以前よりうんと活気づいていたように思う。大会に行き、初めて観光らしい観光も出来た。
 ふたつの大会を終えて、今少しずつ平和を取り戻している。全日本の大会が鈴鹿の大会ともう少し時期的に離れていたら会員。誌友の皆さんに応援に行ってくださいとお願いしたのだけど無理も言えないと思った。   

選者としての任務を遂行できたのは、全国に広まる多くの仲間のおかげと思う。

 鈴鹿川柳会 光太夫賞

ふうわりと着て輪郭を探らせぬ
 愿さんのこの句は女心をよく分かっていらっしゃる。

 愛媛大会 大会賞

何度重ねてもミモザの黄に遠い
 会員りゑさんの句。遠い目標に向かう試行錯誤する気持ちが何とも言えずよかった。

                                              たかこ            

 

すずか路より
間違いなくあの子はイパネマの娘 高柳閑雲
ありがとうでもいらないと言う二歳 川喜多正道
焼夷弾知ってる友は皆あの世 石崎金矢
二度寝してユメの続きが美しい 柴田比呂志
マリア様笑いたくない日もあろう 竹内そのみ
錯乱を怖れる七月のはじめ 樋口りゑ
摩周湖は霧が晴れても摩周湖だ 宇野満宏
適当に抜くからすぐに生える草 加藤峰子
根が生えた回覧板が帰らない 西野恵子
宙返りしてもきゅうりはちゃんと生る 寺田香林
童謡の中に生きてるカタツムリ 瀬田明子
ともだちのお墓へ続く凪の海 青砥英規
警備員より強そうなガードマン 西山竹里
へそくりに遊び過ぎだと諭される 岡ア美代子
父の日に家の包丁みんな研ぐ 日野 愿
梅雨が明けたらテッペン目指す甲子園 竹原さだむ
非常時は非常時なりに暮らす知恵 澁谷さくら
お経より「ゆうこの日記」読み聞かせ 神野優子
ほんとうのわたし自分もわからない 上村夢香
時々は萎れた振りもする造花 前田須美代
通るたびボクを見下ろす巣のツバメ 佐藤近義
ときめきを思い出させるコンサート 岩谷佳菜子
痩せたので張っていたものみな弛む 西垣こゆき
久しぶり哄笑できぬ通夜の席 松岡ふみお
生きてゆくための大事なつまみ喰い 坂倉広美
大会は大切土曜授業より 橋倉久美子
お祭りだ賽銭箱も上機嫌 北田のりこ
スマホ族大和言葉はきこえない 河合恵美子
歌えるうちに歌いまくろうラブソング 毎熊伊佐男
うたた寝を選挙電話に起こされる 鈴木裕子
お世話などとてもお話聴いてあげ 長谷川健一
名古屋場所夏の盛りの風物詩 水野  二
明日へと気持ちと頭切り換える 竹口みか子
善戦も空しまたもや涙雨 瓜生晴男
マスコミの使えるうちは使うネタ 加藤吉一
口数が少なくなった御用心 安田聡子
借りないと過払い金はもらえない 芦田敬子
歯を磨くほど懸命に生きてない 圦山 繁
仰向けのまま戻れないダンゴ虫 千野 力
ウフフよりアハハワハハと笑いたい 鍋島香雪
去年より若い格好したくなる 小出順子
おしゃべりがサプリメントになっている 鈴木章照
ドローンは車に糞を落とさない 吉崎柳歩
観光地とはこうあるべしと松山市 青砥たかこ
 

整理・柳歩

6月18日(日)大会より
事前投句「頭(あたま)」 青砥たかこ 選
 止 よく頭撫でられ背丈伸び悩む 圦山 繁
 秀 頭とは連携プレーしない口 小川はつこ
 秀 回転の落ちた頭がいとおしい 日野 愿
 軸 MRI頭を壊す音がする 青砥たかこ
席題「危険」 橋本征一路 選
 止 美しすぎる女ほど危険だな 森中恵美子
 秀 遊泳禁止地元の人は近付かぬ 小出順子
 秀 吸い過ぎは危険と書いてないタバコ 芦田敬子
 軸 今時の仕付け自動車から降ろす 橋本征一路
宿題「適当」(共選) 宮村典子 選
 止 適当な答を嫌う青いバラ 阪本高士
 秀 永遠を誓うか逃げてしまおうか 阪本きりり
 秀 生煮えの芯に迷いがあるらしい たむらあきこ
 軸 適当に愛するバラもニンゲンも 宮村典子
宿題「適当」(共選) 加藤友三郎 選
 止 冷奴こんないい手がありました 柴田比呂志
 秀 適当に書いてはならぬ遺言書 梶井良治
 秀 生煮えの芯に迷いがあるらしい たむらあきこ
 軸 ケセラセラ疾うにおまけの下り坂 加藤友三郎
宿題「探る」(共選) 橋倉久美子 選
 止 下の名で呼ぶから仲を探られる 吉崎柳歩
 秀 ポケットを探る仕種で出し渋る 竹島 晃
 秀 ピーマンの中まで探る嫉妬心 西澤知子
 軸 何探るつもりか順に注ぎにくる 橋倉久美子
宿題「探る」(共選) 丸山 進 選
 止 昏いくらいもう母さんが見えません 太田のりこ
 秀 探られて禅問答になってくる 吉崎柳歩
 秀 ふうわりと着て輪郭を探らせぬ 日野 愿
 軸 瞬きの数で相手の嘘探る 丸山 進
宿題「自由吟A」 森中恵美子 選
 止 溺れてもいいかな美しい海に 柴田比呂志
 秀 お月さまわたしやっぱり一人です 古川洋子
 秀 悪いことしてない罰は当たらない 足立千恵子
 軸 富士山にあうと約束したくなる 森中恵美子
宿題「自由吟B」 天根夢草 選
 止 大き目のパジャマ大きくなるために 森中恵美子
 秀 あすそ分け少しのほうがありがたい 杉本克子
 秀 かさぶたを早めに剥がす癖がある 丹川 修
 軸 レディースアンドジェントルマンも駄菓子が好きである 天根夢草
 
特別室

 リオの最後                                      清水 信

 東野大八が巻頭言を書く『川柳しなの』338号(昭和46年5月刊)は、古いが、スポーツ特集をしているので、紹介してみる。

 違法カジノへ出入りしたバドミントンの選手が非難を浴びたり、野球トバクに参加した巨人軍の選手が罰せられたり、金メダルをとった古い五輪の選手らがドーピング問題で名を汚したり、日本だけでなく、世界中のスポーツ汚染の波が止まらぬ情勢である。根本的な改革を、わざを放棄しているためだ。
 岩本具里院は「闘争欲が最もフェアに表現できるのがスポーツである」として、そのためにはルールや規制の中での争いという呪縛に耐えねばならぬという。つまり自由とは反対のものがスポーツだと説くのである。ルールの上で、相手を倒すことが、その生存競争に見合うというのだ。

 吉川英治は「大衆は大智なり」という言葉を愛したが、「大衆は大愚なり」というのが、スポーツ上の名言だろう。
「スポーツでは買収もきかぬし、オベッカも利かない、本当にすぐれた者だけが残る」と、更に言う。「敗けるが勝ちだ」とは言えぬ世界だ。作品の中から、関係作を引く。

負けられぬから負けてくる今宵
対立も辞せず男の骨太い

『しなの川柳』は、松本市大手3丁目から出ていた。スポーツの題材は、本当は難しいのだろう。

待ったなしの人生角力うらやまれ

本誌268号巻頭に於て、吉崎柳歩が人工知能(AI)やコンピューターによって、将棋や囲碁やチェスを闘う人間の方が敗けてしまう現実を書いているが、もう川柳や、俳句や和歌も、人間の方が敗けてしまう時代は、すぐそこに来ている気がする。
 同じようにロボットが医療機関や科学の世界を超えて、スポーツでも人間を上回る時代が近付いているようだ。やがてオリンピックも、ロボットだけで闘う時代がくるだろう。

ブラジルのリオ五輪は、初めての南半球でのオリンピックとして、新聞やTVをにぎあわせるであろうが、これが二〇二〇の東京五輪まで持つかどうかは疑問である。ロボットたちの競技を見て喜ぶ人間たちの、やせこけた肉体を想像すると、ゾッとするが、そんな時代が来ないと考える人間の方が、異常なのである。人間は何で遊ぶかを考えねばならぬ時代が来ている。

 小市民的生活を詠むだけが、川柳ではあるまい。「拒絶の文学」の生涯を生きることも、一つの文学的宿命ではないのか。非日常が定着している詩にも、存在理由はあるのだ。難解が悪いか。
 大正15年生まれ。戦中派最後の作家である。人生を笑劇化できなかった。

・難破船が出てゆく丘のひそかな愛撫

                                                                      (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票 『 固い 』  応募92句
 1 3  固いのが一人ブレーキかけている 吉崎柳歩
 1 2   名前ほどげんこつ飴は固くない 小出順子
 1 1  融通は利かしてもらえない役所 吉崎柳歩
 1 0  NHKばかり見ているお父さん 濱山哲也
   点    固いこと言ってデートがつまらない 石崎金矢
        サミットの客を見送る肩のコリ 岩田眞知子
    8点  尊敬語使い会話を固くする 圦山 繁
     固いのが好み男も歯ブラシも 橋倉久美子
    7  解説者固い話を噛み砕く 北田のりこ