青砥たかこ選(入選39句)
仏壇の定位置にあるマッチ箱 |
岡本恵 |
捜査気になる札幌の点火台 |
森清泰範 |
湿ってる君に点火を繰り返す |
こみち |
点火したところは誰も見ぬ花火 |
糀谷和郎 |
*幸運なヒットが点火した打線 |
吉崎柳歩 |
火中の栗なんて食べないヒクイドリ |
雪上牡丹餅 |
怪談話は蝋燭に火をつけてから |
春日綾乃 |
何気ないその一言が火の種に |
ちゃこ |
*落ち込んだ夜はお酒で火を点す |
新家完司 |
主夫ですがコンロに点火禁じられ |
前川奬 |
一喝がやる気にさせた起爆剤 |
内田政竜 |
君の手が胸の蛍に引火する |
水谷裕子 |
*点火するまでは隠れている花火 |
西岡ゆかり |
すぐ点火する 脂っ気抜けた恋 |
八木五十八 |
節ガスに点火ができず冷茶漬け |
せきぼー |
ライバルを褒めて負けん気点火させ |
竹中正幸 |
自動化でマッチ絶滅危惧種入り |
船岡五郎 |
言うまいぞきっと喧嘩になるセリフ |
春日綾乃 |
火を点けたこと抜け落ちて長電話 |
こやまひろこ |
いま点火ぎっくり腰が炸裂す |
古都 |
この歳になるとなかなか火がつかず |
こみち |
人類の夢をロケット乗せ点火 |
福多郎 |
年明けにようやく点火受験生 |
山登爺 |
*一本のマッチが秘めている狂気 |
橋倉久美子 |
*自己犠牲マッチに課せられた使命 |
加藤 当白 |
*匿名という長い柄の点火棒 |
冬子 |
*線香に火をつけ静かなる対話 |
澁谷さくら |
*定年後点火予定の導火線 |
古都 |
反省後やる気スイッチ再点火 |
あやちゃん |
*火を点けたまま置き去りにしないでよ |
大島 ともこ |
キャンドルに点火独りの誕生日 |
颯爽 |
*晩学へ点火したのは好奇心 |
吉崎柳歩 |
点火した手筒花火を身に添わせ |
田鎖 市子 |
点火して燃え尽き今はただひとり |
アゲハ |
火おこしの技自動点火に笑われる |
芦田敬子 |
この風とよんだブームの火付け役 |
せきぼー |
秀3
戦争が点火世界の物価高 |
加藤吉一 |
秀2*点火するオール電化の冷たい火 |
よーこ |
秀1
土手いっぱい点火している彼岸花 |
安井紀代子 |
評 ある日突然一斉に火が付いたように咲く彼岸花。まるで誰かが点火したようだと
言いたげなところに共鳴した。
軸
IHに慣れてマッチは遠ざける
青砥たかこ