目次28年10月号
巻頭言  「確信犯」
すずか路
・小休止
・柳論自論「韻文としての川柳(中)」
・没句転生
・人と句(加藤けいこさん)
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・エッセイ・その他
・大会案内
・編集後記

柳歩
柳歩整理

柳歩



たかこ
清水 信さん
久美子
寺前みつるさん





 
バックナンバー

25年12月(240号)
25年11月(239号)
25年10月(238号)
25年 9月(237号)
25年 8月(236号)
25年 7月(235号)
25年 6月(234号)
25年 5月(233号)
25年 4月(232号)
25年 3月(231号)
25年 2月(230号)
25年 1月(229号)
24年12月(228号)
24年11月(227号) 
24年10月(226号)
24年 9月(225号)   28年 9月273号)
24年 8月(224号)   28年 8月272号)
24年 7月(223号)   28年 7月271号)
24年 6月(222号)   28年 6月270号)
24年 5月(221号)   28年 5月269号)
24年 4月(220号)   28年 4月268号)
24年 3月(219号)  28年 3月267号)
24年 2月(218号)  28年 2月266号)
24年 1月(217号)   28年 1月265号)
23年12月(216号)  27年12月264号)
23年11月(215号)
  27年11月(263号)
23年10月(214号)
 27年10月(262号)
23年 9月(213号)
 27年 9月(261号)
23年 8月(212号)
  27年 8月(260号)
23年 7月(211号)
  27年 7月(259号)
23年 6月(210号)
  27年 6月(258号)
23年 5月(209号)
  27年 5月(257号)
23年 4月(208号)
  27年 4月(256号)
23年 3月(207号) 
27年 3月(255号)
23年 2月(206号)
  27年 2月(254号)
23年 1月(205号)
 27年 1月(253号)
22年12月(204号)
  26年12月(252号)
22年11月(203号)
  26年11月(251号)
22年10月(202号) 
26年10月(250号)
22年 9月(201号)
 26年 9月(249号)
22年 8月(200号)
 26年 8月(248号)
22年 7月(199号) 
26年 7月(247号)
22年 6月(198号)
  26年 6月(246号)
22年 5月(197号)
  26年 5月(245号)
22年 4月(196号)
  26年 4月(244号)
22年 3月(195号) 
26年 3月(243号)
22年 2月(194号)
  26年 2月(242号)
22年 1月(193号)
 26年 1月(241号)


                         
以前のバックナンバー
巻頭言

「確信犯」

 鈴鹿川柳会では、平成十八年にHPを開設して以来、インターネット句会を運営している。ネット句会に限らず、誌上大会でも普通の大会、句会でも暗合句(偶然先行句と同じになった句)は生まれてしまうものである。また、自分が以前どこかの句会に出句して入選したものを、そうとは知らずうっかり投句して入選してしまうこともある(二重投句)。これらは、選者はもちろん当人も、誰かに指摘してもらうまでは気付かないものである。
 暗合句にしても二重投句にしても、誰かの指摘で明らかになったものの十倍は存在するものと確信する。その殆どは「過失」であろう。おそらく、経験者も多いことだろう。また、本人が気付いていないだけで、そのままになっているものもあるに違いない。

 ところが、先月(九月)のネット句会の入選句において、同一人物による二重投句の句が明らかになった。この人物は幾つかの雅名まで使用して、あちこちのネット(ウエブ)句会に同じ句を投句していた。課題吟ばかりではあるが、違う課題でも通りそうな句も「使い回し」していた。この人物の過去の入選句を調べると、二重投句の句が続々と出てきた。現在のインターネットは検索機能が進歩しているので、対象句を入力して検索すれば瞬時に探してくれる。つまり、誰かが怪しんで検索すれば、少なくともネット上における暗合句、類想句、二重投句の句は、すぐに判るのである。この人物は二重投句の常習者ではあるが、自分で自分の句を貶める、ずいぶん間の抜けた「確信犯」と言わざるを得ない。

 ところで、ここで言う「確信犯」とは本来の意味ではない。「自分の信念に基づき行動を起こす、そのためには法律を犯すこともいとわない」というのが正しい意味であるが、『日本国語大辞典』にだけは、本来の意味の他に、
「A俗にトラブルなどをひきおこす結果になるとわかっていて何事かを行うこと。また,その人。」とある。川柳界では既にAの意味での「確信犯」も市民権を得ているのではないか?

 
                                             柳歩            

 
すずか路より
すぐそこと聞いた目的地が遠い 澁谷さくら
原稿を打つ手が止まる十三夜 神野優子
追いかけてくる人がいる夢の中 上村夢香
LED交換用を準備せず 佐藤近義
風鈴がもう外してと鳴っている 岩谷佳菜子
サングラスかけているのに名を呼ばれ 石谷ゆめこ
行きたいと思った日には定休日 西垣こゆき
父母の忌に古稀の兄妹回顧談 松岡ふみお
お医者さんの言葉に不足する酸素 坂倉広美
大雨でプールになったグラウンド 橋倉久美子
目立ちたがりで恥ずかしがりの父である 北田のりこ
饒舌に無口なわたし巻き込まれ 河合恵美子
見せかけの反省次に活かされず 落合文彦
儲かってますかぼちぼちですんやわ 毎熊伊佐男
子が買ってくれた服着る旅プラン 鈴木裕子
赤いハンカチ買う青春が戻るかな 長谷川健一
間違ってすぐ認知症考える 水野 二
胸の内それを言っちゃあお仕舞いよ 竹口みか子
押し問答結局妻に押し切られ 瓜生晴男
台風の右折が怖い秋が来る 加藤吉一
日が暮れてチャンネル合わず別の部屋 安田聡子
石頭のようなカボチャをもてあます 芦田敬子
同じ嘘つけなくなった記憶力 圦山 繁
美味しいとスイカの種はとっておく 千野 力
平和主義ごめんなさいとありがとう 鍋島香雪
喫茶店夫婦で行って喋らない 小出順子
大物かただの無口か動じない 鈴木章照
面倒をかけるなそこは行き止まり 高柳閑雲
川柳にあってはならぬ自主規制 川喜多正道
ええかげんな返事するから怒る妻 石崎金矢
生き過ぎぬよう螺旋階段終わる 柴田比呂志
挨拶が出来て普通の子が怖い 竹内そのみ
炊きたてのご飯があれば大丈夫 樋口りゑ
欠席がひとりもいない気楽会 加藤峰子
待ちかねた手紙鋏が躍ってる 西野恵子
これ以上どうにもならぬ紅を引く 寺田香林
結局はどこに行っても孫の守り 瀬田明子
国家斉唱口はしっかり開けておく 西山竹里
断捨離を決めたドレスを着てみせる 岡ア美代子
中日なのに贔屓力士に出ぬ初日 日野 愿
ゴールボール耳が頼りのパラ五輪 竹原さだむ
関取の下がりは暖簾とは違う 吉崎柳歩
一身上の都合で割れたがるお皿 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句 54 「加藤けいこさん」                                                                              たかこ

改札で羊の群れをもて余す
言いにくいことはメールの世話になる
着ぶくれて電話機までがやや遠い
もらい事故痛みと怒り混ざりあう
春寒に亡母の足袋を履いてみる

背丈ほどある花もらい持てあます
いかほどとお布施を僧に聞く世代
ありふれた名前で医師に間違われ
しっぽの先まで勇ましい麻薬犬

ひさびさに会う子の髪に白いもの
断捨離のついできりりと髪を切る
勲章のようね離婚を慰める
粉々に散ったか記憶もどらない

ひさびさにパリの場末で道迷う
あとあとのことは知らない鳳仙花
カーナビが信用できず地図だより
狭いけど裏口からも逃げられる

〆切は旅の宿でも待ったなし
さあやるぞ掛け声出すの私だけ
日暮れても整理がつかぬ本の山
犯人を暴くシーンで鳴る電話
追い込まれ追い込まれても日は昇る

9月24日(土)例会より
宿題「ひたすら」 橋倉久美子 選と評
   ひたすらに相槌だけをうつ他人 岩谷佳菜子
   まちがった記憶をずっと温める 青砥たかこ
 止  実を結ぶまでは褒められない愚直 吉崎柳歩
 軸  五時間めひたすらあくび噛み殺す 橋倉久美子
宿題 共選「余分」 圦山 繁 選
   手袋に余分な指はついてない 青砥たかこ
   余分な肉なんかつかない牛と豚 毎熊伊佐男
 止  余分ではないが散髪される髪 吉崎柳歩
 軸  抑止力余分な核を持て余す 圦山 繁
宿題 共選「余分」 千野 力 選
   ブザー鳴り余分な人は降ろされる 青砥たかこ
   安いからとつい余分まで買ってくる 鈴木裕子
 止  請求書余分なことは書いてない 橋倉久美子
 軸  税金を余分に取って還付する 千野 力
宿題「自由吟」 青砥たかこ 選と評
   まな板も痛がっているみじん切り 橋倉久美子
   見るからに腰痛らしい歩き方 吉崎柳歩
 止  迷うときは迷う一本道でさえ 坂倉広美
 軸  欠席の知らせが蔓になってくる 青砥たかこ
席題「背負う」 清記互選 高点句
 8点  救護隊なので人妻でも背負う 吉崎柳歩
 7点  責任は背負わないよとシュレッダー 圦山 繁
 6点  子孫まで背負わせる気の核のゴミ 加藤吉一
 5点  貧乏神背負って腰を病んでいる 圦山 繁
   アルコールなら背負ってでも持ち帰る 橋倉久美子
特別室

 ふあうすと478                                    清水 信

 『ふあうすと』478号(昭和46年4月刊)が出てきた。神戸市長田区五位ノ池町・増井不二也が発行地。
 東洋一を誇った神戸市の市電が3月とうとう消えた。それと創設にかかわった椙元紋太の一周忌を合わせて惜んでいる。椙元紋太には『全句集』の他、句文集『茶の間』などの著がある。本誌には「女流コーナー」という欄が特設されているので、当時はまだ女性柳人が少数派だったのか。

・ピリオドを打つその先の落とし穴    光山志げ子

・ジーパンの少女の父の瞳が寒い      山本二三子

・いい負けて格式のない高いびき     吉原雲女

・焦点をとかれ私は自由です       増田マスエ

・泣きながら雑魚をつぶしている女      小野克枝

 これらが点数が高い方だ。

 エッセイに、・室田千尋・考える事の素晴らしさ  ・堀口塊人・文士と川柳 の二つがあり、共に読みでがある。

 堀口によると、明治の文士で、最初に川柳を小説の中に引用したのは、饗庭篁村の由。
・七ツ半寺は山谷で親父ゆき
 という句が「当世商人気質」の中にあるという。また、三宅花圃の「薮の鶯」には
・よくいえば悪く言わるる後家のかみ
   という一句がある由。

 さらに斎藤緑雨、幸田露伴になると、沢山の作品が引用されているという。永井荷風や芥川龍之介は、更に引用が多い由。
  「川柳は近世日本の庶民の声である。彼らを取巻く政治や制度や、風俗や習慣などについての、彼らのいつわらざる批判の声であり、思想史的にも風俗史的にも、無視してはならぬ屈強な研究資料でもある」と本間久雄は言う。
 更に笹川臨風は「川柳は社会詩であり、世相詩である」と解明。
 課題吟や席題を楽しむ以外に、こういう歴史の勉強もたまには良いだろう。男性陣の作を引く。

・きみと歩くわが潤いを哀れとも                 助川助六

・死後の愛おんな砂漠の花をもつ              海士天樹

・忍の字に罪なき筆の洗われず                小池鯉生

                                                                      (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票 『 技 』  応募90句
 2 1  履歴書に書けぬ技なら持っている 橋倉久美子
 1 3   満月の見事なまでの痩せる技 よしひさ
 1 2  居酒屋のウーロン茶でも酔える技 水野リン子
 1 0  なんの技なくても育つゴーヤの実 坂倉広美
     大技はないがこつこつ生きている 青砥たかこ
    7点  裏技で決められていた会議室 坂倉広美