目次24年9月号
巻頭言 「 戦争遺跡」
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 森中恵美子さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

柳歩
たかこ


柳歩

清水 信
久美子
永井玲子さん

たかこ
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巻頭言

 戦争遺跡

去る八月十九日第十六回戦争遺跡保存全国シンポジウム 三重県鈴鹿大会」に出掛けた。この手のシンポジウムに参加するのは初めてのことで、戦争の悲惨さを語り継ぐためにも、遺跡は必要だと説く会だと納得をした。

またこの会の実行副委員長の竹内宏行氏には、わが大会にて、戦争遺跡について講演をしていただいたばかり、併せて、清水信先生の記念講演もあると聞けば、参加して当然であったのだ。

翌日新聞で知ったのだが、参加総数は四五〇名におよんだとあった。この十一月に九十二歳になられる先生は文字通り戦争のど真ん中を生きて来られたのだ。淡々と語っておられたが、その胸の奥にはさまざまな思いが交錯されたことだろう。

始まる前、来賓三名の挨拶があった。三重県知事の鈴木英敬氏は、一九七四年生まれ、鈴鹿市長の末松則子氏は、一九七〇年生まれと共に若く、ふたりの歯切れのよい挨拶は気持がよかった、が、最後に年配の来賓の挨拶は、市長のそれと同じ内容の部分が多々あって一言でいいから「先ほど市長も申されたが」くらい添えてもいいのではないかと思ってしまった。恐らくこんなつまらないことを考えるのは、私くらいのものだろうが…。

挨拶に続いて、第二次大戦中の「鈴鹿その時」と題して、映像を見ながら、体験談の朗読が四十分ほどあったが、ずっと涙が止まらなかった。会場が暗かったのと、時々咳が出るためハンカチで口を押さえるついでにこっそり涙を拭けたので助かった。

プログラムは三日間に亘って日程が組まれていた。資料もかなりの見ごたえがあった。子供の頃祖父母に聞かされてきた戦争の悲惨さを、もうずっと過去のこととしていたが、戦争は終わったが、風化させてはいけない、忘れてはいけないのだと、改めて思った。さて、今後は子供たちにこのことを語り継がなくてはと強く思っている。

                                                            たかこ            

 

すずか路より
一日のリズム狂わす盆の客 鈴木裕子
自生した冬瓜遠慮なく実る 加藤吉一
坊さんも代替わりする盆参り 長谷川健一
振込日少し気持ちを和ませる 水野 二
ちちははと訛って話す里帰り 竹口みか子
夏バテが病気の元を連れてくる 瓜生晴男
悪いけどしばし節電出来ません 安田聡子
来客で夫婦げんかも小休止 芦田敬子
やさしさがじわじわ沁みる気の弱り 鍋島香雪
UFOを飛ばして遊ぶ宇宙人 小出順子
ユニクロと回転寿司でつつがない 鈴木章照
家具の向き変えて空気の通り道 沢越建志
私をぎゅっと握っている夕日 尾アなお
迎え火にはやる心の秋の月 神野優子
ばれなければ誤診と分からない誤診 山本 宏
呼びもせぬセールスばかりやってくる 高柳閑雲
年金が必ず減らされるデフレ 川喜多正道
男性も同窓会は姦しい 加藤峰子
枕上で今日の私を巻き戻す 青砥英規
ファイトファイトここでしゃがめば負けになる 山添幸子
寝に帰る部屋にペットの犬が待つ 水谷一舟
病名をもらって少しほっとする 小川のんの
喧嘩して沈黙通すのは夫 石谷ゆめこ
「お食事が整いました」と呼ばれたい 岩谷佳菜子
クーラーをつけているかと子のメール 加藤けいこ
伊勢弁が僕の町では通じない 松本諭二
焼きそばの海苔どこまでも付いてくる 西垣こゆき
続けてほしいけれど幹事が横を向く 松岡ふみお
窓際の鉢にも時刻表がある 坂倉広美
相談はしなくてもよい悩みごと 橋倉久美子
七日間だから必死に鳴ける蝉 北田のりこ
物陰が白バイ隊は好きらしい 落合文彦
過ちをまた繰り返す日本人 吉崎柳歩
嫌われた過去など忘れようゴーヤ 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句7「森中恵美子さん」                                                                                      たかこ


しあわせを他人の家に住んで知り
姉妹の器量をすぐにくらべられ
待つひとがあり美しく指を折る
好きな人いるかと父のような人

ネックレス子供は抱かぬ胸にする
あきらめのよい女が好きと言われても
寿と書く妬ましきものが棲む
新しき年もひとりの水を汲む
夫婦にはなれない旅で鍵を買う

殺し文句を歯科医の椅子で考える
トリカブトの花が女をそそのかす
解っている答を男からもらう
人妻を上手に誘う伊賀の里

死ぬときも乳房が二つあるように
くすり飲む顔を男に見せられぬ
病む人の様子を聞いている宴
亡母の箱をあけていちにちすぐに暮れ
生きてひとり他人の記念ばかりする

お見舞いに行く足元を確かめる
心臓のあたりへ酒の量を聞く
生きているから階段によく出会う
よくゆれる大地だあじさいと独り

8月25日(土)例会より
宿題 「 中 」 青砥たかこ 選と評
  出身地まで明かされる中の餡 西垣こゆき
  グループの真ん中にいる風見鶏 坂倉広美
 秀 骨壺の中まで覗く査察官 吉崎柳歩
中だるみもあって人生ちょうどいい 青砥たかこ
宿題 共選「投げる」 加藤 峰子 選
  恋のあそびいじわるな問い投げてくる 坂倉広美
  主治医からさじ投げられたけど泣けぬ 鈴木裕子
 秀 投げ出さぬ人が支える縁の下 加藤吉一
元旦に誓った散歩夏で投げ 加藤峰子
宿題 共選「投げる」 杉本 憩舟 選
  もう先がないのに投げぬヘボ将棋 坂倉広美
  甲乙が付けられなくて匙投げる 鍋島香雪
 秀 届いたら困る言葉を投げている 橋倉久美子
借金を巴投げして子の代へ 杉本憩舟
席題 「 長い 」 清記互選
11点 つきあいは長いがつかめない尻尾 青砥たかこ
 9点 「手短に言うと」の後が長すぎる 川喜多正道
 8点 行列が宣伝になり流行る店 芦田圭子
 7点 めりはりがないので長くなる自伝 吉崎柳歩
 6点 説教がやたら長いと逆効果 川喜多正道
特別室

奏子・美江・恵子
                                              清水 信

 書庫の整理中である。五部屋ある書庫が夫々、足の踏み場もないほど乱れて、我ながら収拾がつかない。全国の文芸同人雑誌を蒐集保管した図書館を作ることが夢で、各地の同人雑誌の協力を得たが、公けの支援が絶望的になり、崩壊の憂き目に会っている。

 後継者もいないこととて、すべてを手放なさねばならぬ事態を迎え、今は月に一度、和歌山の書籍・雑誌の回収業者が来てくれて、門前に中型トラックを停めてくれるので、毎回七千冊から八千冊の書籍・雑誌を放出している。ちょうど一年たつが、まだ全体の十分の一ほどである。無償の愛と、青春の夢が無惨に崩れていく様子を見るのは辛いが、こんなことは現在の不況下、決して珍らしい事ではあるまい。

 川柳作家・兼小説家の斧田千晴が死んで一年、この晩春には、名古屋市の長澤奏子、伊勢市の朝倉恵子、久居市(現津市)の中川美江が相次いで亡くなり、淋しい思いをしている。長澤は『きなり』や『朱華』で、小説や俳句を書いていた人で、朝倉は『伊勢文芸』や『希望』で詩や小説を書いていた。中川も同人誌『アラー』で小説を書いていた。

 この三人は夫々秀れた著作を出版されたが、いま荒廃した書庫の、どこにあるものか、出てこない。

 こういう妙齢の女性ファンは、僕にとっては大事な支援者であり、津の文学研究会や県民文化祭や、鈴鹿の文学例会でも、沢山の参加者と会っているので、その本を探して、何か追悼文を書くべきだと思うが、おいそれとは出てこない。長澤と中川の死は仲間から聞いたが、朝倉の場合は「お嬢さん」から直接電話を貰った。

 長澤さんから紹介された妹さんの久々湊盈子さんを、僕はキレイだと思ったり、中川さんの「お嬢さん」(オーストラリア在住)は、拙宅へも来てくれて、これも美人で、びっくりした。

『回転木馬』という短編小説集を刊行した朝倉さんの「お嬢さん」の声も、透き通っていて良かった。

 路傍の草にも春が来た

 花が道を作るということを

 彼女らは人に教えた

  死にゆく人たちの最期は

  身体も心も傷かったであろうか

  ひとりでそれに耐えたであろうか

 その先きの道は誰も知らない

                                                                                                                  (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 映画 』  応募78句
 11  映画よりドラマチックに生きている 松岡ふみお
  9    映画見て時間を潰すプチ家出 北田のりこ
     小説が映画になって色褪せる 岩田眞知子
    バスツアー帰りは映画見せられる 吉崎柳歩
   7  配役はいいが中味のない映画 鍋島香雪
   6  チョイ役に親戚中で見た映画 関本かつ子
 
 
 
 口づけをあっぷで見せて予告編 水谷一舟
     ポップコーンの匂いの中で観る映画 吉崎柳歩