目次24年10月号
巻頭言 「 傷みを風に〜」
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 齋藤大雄さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記

 


柳歩
柳歩整理

柳歩
たかこ


柳歩

清水 信
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寺前みつるさん

たかこ
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巻頭言

 傷みを風に〜

上信越道、信州中野インターを降りて湯田中温泉に向かっていると、中山晋平記念館の案内表示があった。中山晋平は童謡などの作曲家として有名で、私でもその名は記憶していたので、迷わず寄り道することにした。

 中山晋平は、野口雨情、北原白秋、西条八十など、有名な作詞家たちの詞に曲を付けている。歌曲は、作曲が先になることもあるのだろうが、童謡や歌謡曲はほとんど作詞が先になるのだろう。その詞の心情を汲み取り、ムードを醸し出すところに、作曲家の真骨頂があるのだろう。

 あの町この町/シャボン玉/證城寺の狸囃子/てるてる坊主/肩たたき/背くらべ/毬と殿様/砂山/船頭小唄/波浮の港/カチューシャの唄/東京音頭/鉾をおさめて 等々
 これらの中で詞と曲とよくマッチして、私の一番のお気に入りは、野口雨情作詞の「雨降りお月さん」だろう。

 雨降りお月さん雲の蔭/お嫁に行くときゃ誰とゆく/一人で傘さしてゆく/傘ないときゃ誰とゆく/シャラシャラシャンシャン鈴つけた/お馬にゆられてぬれてゆく

 四人兄弟の末っ子で、テレビのない時代に育った私は、童謡や文部省唱歌の次は、真空管ラジオで歌謡曲ばかり聴いて育った。メロディの醸し出すその歌詞のシチュエーションに想像を逞しくしていたのも、現在の川柳の作句と鑑賞に少なからず影響を与えていると実感しているのである。

 死ぬ程つらい/恋に破れたこの心/泣き泣き行くんだただ一人/思い出消えるところまで/あばよ東京おさらばだ 〜三橋三智也「おさらば東京」 この歌詞の特に三番に、当時中学生の私は強烈な「詞ごころ?」を覚えた。
 どうともなれさ/汽笛ひと声闇の中/当てさえ知らない旅の空/傷みを風にさらしつつ/あばよ東京おさらばだ

 傷みを風にさらしつつ、これからも不肖の子は川柳道を歩み続けるのだ。

                                                            柳歩            

 

すずか路より
鈴虫の音色に朝は起こされる 瓜生晴男
新米が今年も届き手を合わす 安田聡子
身構えて会わねばならぬ人がいる 芦田敬子
受け狙う話のオチが長過ぎる 鍋島香雪
秋の虫ソプラノばかりよく聞こえ 小出順子
独りならあくびに手など添えはせぬ 鈴木章照
番号で呼ばれる席に着いている 沢越建志
喧嘩して煮物の味が塩辛い 青砥和子
絆創膏一気に剥がし過去にする 尾アなお
去年の今日娘は確か生きていた 神野優子
どうせなら美人に入れる募金箱 山本 宏
サンダルがまだ歩いてる秋の海 高柳閑雲
原発が無くて過ごせた暑い夏 川喜多正道
神様も困ってしまうほど祈る 加藤峰子
ブレーキの跡だけ残る恋の道 青砥英規
同居して作り笑いがうまくなる 山添幸子
いい夫婦してて時々飲みに行く 水谷一舟
結婚式ウエスト締めぬ服選ぶ 小川のんの
寝る前に残した仕事思いだす 石谷ゆめこ
写メで見る孫の姿が楽でいい 岩谷佳菜子
変声期息子か父かわからない 加藤けいこ
午後三時お茶に誘えぬビール党 西垣こゆき
バカチョンのカメラは絞り取りはらい 松岡ふみお
フィックス粒子のせいで体重計動く 坂倉広美
耳そうじほど気持ちよくない歯のそうじ 橋倉久美子
お喋りも無口も困る美容院 北田のりこ
何となく涼しくなれる秋の虫 落合文彦
知らん振りしていてやろう大鼾 鈴木裕子
親譲りと諦め汗を掻く農地 加藤吉一
心地良い維新の言葉踊ってる 長谷川健一
急患に無言で譲る待ち時間 水野 二
見上げると秋の高さになった空 竹口みか子
友達になりたくはない野田総理 吉崎柳歩
民営化してもお上の言うとおり 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句8「齋藤大雄さん」                                                                                      たかこ


逢いにゆく雪のんのんと闇を吸う
もう一度逢いたい人に傘を借り
亡母いたら降りたと思う通過駅
出かけたくない日も靴を揃えられ

大の字に寝ればわが家の小さすぎ
やるだけはやった天地へ背伸びする
叱られに行く背影から先に入れ
帰らない勇気をくれた猛吹雪
雪女から追伸が来た四月

かんたんな男よ酒の一本よ
雪降ると美しくなる過去と過去
退院日いのちに新をつけてやる
少し好きたくさん好きでおともだち

箸割ってくれた夫婦になれぬ人
迷宮となりマスコミは口にせず
少子化へ何を言ってる蚊の交尾
浴びるほど飲んでいのちがころり寝る

烏賊納豆徳利二本酒四合
百均のスリッパも減り退院日
アイデアを枕に消して金がない
友達を越したい人と酔っている
死を食べて食べて百歳説といる

9月22日(土)例会より
宿題 「絞る」 吉崎 柳歩 選と評
  絞ったら本領発揮するレモン 小出順子
  ひとりには絞れず今も一人です 青砥たかこ
 秀 裏口に絞り吉報待っている 坂倉広美
求職の買い手市場で絞られる 吉崎柳歩
宿題 共選「 熱 」 長谷川健一 選
  じいちゃんと我慢くらべをする湯船 北田のりこ
  ギャラリーが増えると熱くなる試合 西垣こゆき
 秀 熱をみる母の手のひら優しくて 芦田敬子
ブルース熱お祭り選挙アメリカン 長谷川健一
宿題 共選「 熱 」 北田のりこ 選
  熱気球空から見たい鳥目線 岩谷佳菜子
  搗きたての熱い餅にも怯まぬ手 加藤吉一
 秀 熱があるうちにダイヤを買わせよう 坂倉広美
あら熱が取れた頃また会いましょう 北田のりこ
席題 「 鍵 」 清記互選
  9点 鍵かけて秘密めかしておく日記 橋倉久美子
 5点 またやったオートロックに締め出され 北田のりこ
  キーワード忘れて中に入れない 青砥たかこ
  鍵のない心で出入り自由です 青砥たかこ
  決心がつき部屋の鍵取り替える 芦田敬子
特別室

川柳作家・木野由紀子
                                              清水 信

 書庫の整理中である。

 意外な書物が出てきたり、懐しい雑誌が出てきたりで、思わず日を過すことになって、整理の手が止まってしまい、徒らに時間を食うが、愛書家としては悪い気持ではない。『そよ風』も、そういう雑誌の山の中から、ぽろりと出てきた一冊の可愛いい本であった。

 女性の川柳作家の句集としては、宮村典子、青砥たかこ、木野由紀子の単行本や、大嶋都嗣子や斧田千晴の手作り句集が、強い印象として残っているが、ここにこうして木野さんの句集が突然出てきたのは、深い縁を感じる。

 木野さんが第一句集『白つめ草』を刊行されたのが昭和61年、それによって、県文学部門文化奨励賞を受賞されたのが昭和63年、その頃からの「おつき合い」だと思う。

 第二句集『そよ風』は、平成1311月刊、発行所は大阪市東成区の新葉館出版であった。平成11年から県川柳連盟の理事長であり、番傘桔梗川柳会々長を兼ねておられ、文字通りの重鎮だったわけで、刊行後すぐ書評は書いた気がするが、改めて再読し、感動を新たにした。

 川柳は、わりと性別を明らかにしている文芸で、男川柳の三要素は、男気、風刺、批判精神だが、女川柳を支える三要素は色気とロマンチシズムと微笑だと言われている。

「黒い河童」「竹人形のことなど」「バーミアン石仏を悼む」という3編のエッセイをふくむ8部に分かれる句の集成も、しゃれているし、作中に横溢するロマンチシズムは抜群である。音楽やオペラや、美術や文学(小説)への参入も尋常でない。その共鳴の姿勢が、実にロマンチックなのだ。

・百のチェロ凍れる骨を暖めよ
・髪の先冴えてエリック・サティ聴く
・ビバルディほどの烈しさ恋うてみよ
愚かなるマノン・レスコーいとおしい
・ニーチェの骨しろじろと本を閉じ

 このように『マノン・レスコー』という物語や、エリック・サティという音楽家や、ニーチェという哲学者を描ききった句は、空前だったろう。

・ひろしまの嗚咽を消そう鐘をつく
・ちちははの涙と凍りそう絵本
・衣擦れの蛍が通う土の橋

 木野の心魂を傾けた美学から、自分は解放されたいとは思わない。

                                                                                                                  (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 吹く 』  応募70句
 12  少年にひととき戻るハーモニカ 吉崎柳歩
 10     長男の嫁として吹く笛もある 尾崎なお
     ストレスが吹っ飛んでいく大ジョッキ 鈴木章照
  9    不景気もどこ吹く風のパスポート 福井悦子
   7  追い風が吹くのを待って腰上げる 北田のりこ
     原発を止める世論の風が吹く 川喜多正道
 
 
 
 原因はあなたどこ吹く風の顔 青砥たかこ