目次24年11月号
巻頭言 「 誌上大会と大会欠席投句」
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 中尾藻介さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

柳歩
たかこ


柳歩

清水 信
久美子
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たかこ
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巻頭言

 誌上大会と大会欠席投句

 ここ数年で目立って増えてきたのが、誌上大会。毎年大会を開催しながら、節目の記念大会を誌上大会とされるところや、会の事情により(例えば、高齢化によりスタッフ手薄など)誌上へ大会を変更するところなどがある。

 誌上大会のメリットは、全国各地から参加してもらえるところ。選者もわざわざ来会してもらわなくてもよいから、遠方の著名な人にも依頼できる。会場の心配、はてまた大会当日の天候の心配までもしなくて済む。各吟社に応募用紙を送りつけて、後は締め切りを待つだけである。多いところでは千人以上の応募があって、関係者はホクホクであろう。(憶測)

 だが、忘れてはならない。集句を清記するにあたって、ワープロ打ち、手書きにしても相当な時間と細心の注意が必要なこと。締め切りから、発表までがあまりに長くては興ざめになる。誌上大会には、誌上大会の苦労があるだろう。

 誌上大会に似て非なる、大会の欠席投句。遠方で参加は無理だが、好きな選者が揃っている大会が欠席投句を受け付けていると聞けば、応募してみたくなるものである。各吟社の例会での欠席投句の扱いとちょっと違って、当日参加者と同等の扱いを受ける。これは欠席投句をした者にとっては当然と言える話だが、会場で呼名の聞かれない句ばかり聞かされるのはたまったものではない。欠席投句が当日参加者の数を上回ったりすれば、何か白けた気分になる。新郎新婦のいない結婚式に出ているようなものである。どうしても参加できない理由があっての投句ならまだしも、誌上大会の乗りで参加されていたりすると、なにか一考を主催者に望みたくなる。

 今日もまた分厚い封筒がある吟社から送られてきた。中は見なくても分かる、誌上大会の応募用紙である。
 へたな鉄砲も数打ちゃ当たる…そんな気分もそろそろ消えてきた感がある。(私情)

                                                           たかこ            

 

すずか路より
この夏も出番なかったワンピース 小出順子
用件は1パーセント長電話 鈴木章照
ひいき目に見ればセーフのタイミング 沢越建志
友愛に注意背中がむずがゆい 青砥和子
謝っても誤認逮捕の消えぬ傷 山本 宏
工場地帯だけどカラスは住んでいる 高柳閑雲
戦前は戦時になってから判る 川喜多正道
人柄もノーベル賞に相応しい 加藤峰子
深い森抜けて脈拍正常値 青砥英規
魂の奥に入ってくる夕陽 尾アなお
三キロの身体に秘めたエネルギー 神野優子
丁寧にやれば一度で済むものを 山添幸子
合いことば妻とときどきすれ違う 水谷一舟
雑草のようにはバラは生きられぬ 小川のんの
お見舞いに涙おさえてつくる顔 石谷ゆめこ
ジェラシーが嫌な女にしてしまう 岩谷佳菜子
酔いどれを千鳥かがりで縛りたい 加藤けいこ
会社名変わるも中身変わらない 松本諭二
大渋滞抜け路そっと教えたい 西垣こゆき
飼い主に媚びなど売らぬ家の犬 松岡ふみお
花揺らす風に返事をしてしまう 坂倉広美
好きな人に振るためだけにある両手 橋倉久美子
洗濯物乾きが遅くなり冬へ 北田のりこ
ストレスでみな片付けている痛み 落合文彦
コーヒーをよばれて帰る絵画展 鈴木裕子
腹からの声で生気を取り戻す 加藤吉一
戦後処理終わっていないオスプレイ 長谷川健一
交叉点ななめに渡るお年寄り 水野 二
「天城越え」歌ってしまう伊豆の宿 竹口みか子
夕焼けがやけに淋しい車椅子 瓜生晴男
コオロギがなんと鳴こうか迷ってる 安田聡子
連れ合いが留守だと分かる長電話 芦田敬子
呑みこんでおけばよかったあの言葉 鍋島香雪
非難する立場と擁護する立場 吉崎柳歩
目立たない傷がときどき疼き出す 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句 9 「中尾藻介さん」                                                                                      たかこ


縄跳びの縄に老人用がある
辻褄が合って請求書を貰う
坊さんの話参考にはしない
心配をしてくれるので好きになる

写真屋の写真を撮って死ぬつもり
寝に戻る家くれぐれも大切に
無駄遣い川柳の本だけは別
意地悪をしてくれるので逢いに行く
最大の誤算は優し過ぎる妻

忙しい人ですコーヒーもう飲んで
セーターが逢いにゆかないのかと言う
すられても掏獏を嘆かすだけのこと
あんなひとのどこがよいのと女言う

星屑を乱雑だとは思わない
ここまでは遊びコーヒーかき混ぜる
しっかりとお食べと蟹がやってくる
誘っても断る人と知っている

薄化粧ほどむづかしいものはない
バイキングあれほど損なものはない
含蓄のないエッセイを読まされる
顔色が良いとやさしいウソをつく
句会にも行けなくなって余命とは

10月27日(土)例会より
宿題 「困る」 青砥たかこ 選と評
  次々と売るほど生えてきた茗荷 竹口みか子
  夫には相談できぬから困る 橋倉久美子
 秀 騒ぐ子と一緒になって騒ぐ親 吉崎柳歩
本当に困れば言って来るだろう 青砥たかこ
宿題 共選「安い」 西垣こゆき 選
  ダイヤ安売り妻には買えぬ桁違い 水谷一舟
  バーゲンへてきぱき朝を片づける 鈴木裕子
 秀 中日が負けても店は謝恩デー 加藤吉一
昨日今日明日サンマのおかず出す 西垣こゆき
宿題 共選「安い」 水谷一舟 選
  レジ済んで中国産と知る野菜 鈴木裕子
  老人になると割引してくれる 吉崎柳歩
 秀 二番目に安いランクにする葬儀 橋倉久美子
年寄りの日です二割をレジで引く 水谷一舟
席題 「ウイルス」 清記互選
  7点 ウイルスの仕業か今日ももの忘れ 小川のんの
  おばさんというウイルスに囲まれる 吉崎柳歩
  ウイルスにキスのチャンスをつぶされる 橋倉久美子
 6点 ウイルスに負けずメールがやってくる 芦田敬子
 5点 清潔が過ぎてウイルス強くなる 加藤けいこ
  ウイルスに合わない注射また受ける 芦田敬子
  ウイルスに翻弄された警視庁 西垣こゆき
特別室

小説家・西垣みゆき
                                              清水 信

『文学界』での同人雑誌評が無くなってから5年、同人雑誌で仕事をしている作家も、一応の落着きを見せてきた。『文学界』のあとをついで、二つの書評紙や『季刊文科』や『三田文学』での同人誌評が続載されているものの、すべて地方では入手し難い誌紙ばかりで、効力は激減している。同人雑誌評は分散し、局地化し、そして甘くなった。

『文学界』も中央集権的で功罪相半ばしたが、現在の状況もまた、功罪相半ばしていると言わざるを得ない。
 その中では、西垣みゆきは『文芸きなり』を主舞台として、小説を連投している他『中部ぺん』や『アルス鈴鹿』や『文学街』など、作品を発表している諸誌の掌品をふくめて、極めて評判が良い。これは嬉しいことだ。

 同人雑誌評を掲載している雑誌は、東京では『文芸思潮』『全作家』『文学街』『雲』などであり、東海地方では『中部ぺん』や『弦』や『果樹園』や『XYZ』などであるが、何れの場合も、西垣文学への評価は揃って高いのである。
 例えば『全作家』86号の文芸時評では、横尾和博が「沈黙の言葉」と題して、その中に、こう書く。

――『XYZ』199号には、特別の賛辞を贈りたい。特集として清水信の「大震災以後の文学」と「東日本震災後の文学」と題し、五名の書き手が原稿を寄せている。滝明美、鈴木ぜんや、黒宮朝子、水越正明、麦畑羊一である。精神史のなかで、静かな地殻変動が起こっている時、このような感性こそが大事なのだ。

 これは、まあ、雑誌そのもの、その特集への賛歌であって、単一の文学作品への評価とは違う。西垣の場合は、絶対評価というべき扱いである。『果樹園』18号の「同人雑誌おちこち」(渡辺康允)から引く。

――『文芸きなり』73号の西垣みゆき「雁木の下で」評。

 姉妹のような関係の加恵と多代子、夫昇の死別後、食事処昇を切り盛りする女。一方は酒乱の夫から逃げ出し加恵の元に身を寄せる女。客の森山に夫の面影を見る加恵。その森山がガンで入院することが分かっていながら、加恵は「森山の人生を生きていてよかったと思えるように支えたい」と結婚を決意する。(略)
 六十歳を過ぎての結婚に、「献身」の言葉が似合う。
 加恵の生き方の純粋さに感化され、多代子は夫への気持が溶け始めていく。
 女の友情と、夫々の男性との関わりをしっとりと描いている佳作であるという評価は正しい。

                                                                            (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 痛い 』  応募78句
 10  満面の笑顔で痛いとこを突く 山崎よしひさ
  9     途中から麻酔が醒めてきた手術 加藤吉一
   7    苦しみも痛みも消えている柩 前田須美代
     目に痛い燃やされていく日章旗 岩田眞知子
   6  にじみ出た血を見て痛いのに気づく 橋倉久美子
     履歴書に特技一つもない痛さ 関本かつ子