目次30年8月号
巻頭言  「七月例会」
すずか路
・小休止
・柳論自論
・人と句「加藤峰子さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・エッセイ・その他
・編集後記

柳歩
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柳歩
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巻頭言

「七月例会」                                                                        

  七月の例会は例月通り第四土曜日で28日だった。前日の気象予報では、逆走台風12号が当日の午後には三重県に上陸しそうな形勢であった。主催者としては予定通り例会を開催するかどうかの決断を迫られたのは当然である。

 平成15年2月に現行体制に移行して以来、私は例会に皆出席しているが、このような事態になったのは初めてである。例会だけではない、前月開催した「鈴鹿市民川柳大会」にしても、雨の心配はしても(結果として、ほとんど降っていないが)、屋内の催しであり、中止の事態など一度も想定したことはなかった。しかし、6月15日に、たかこさんと会場である「東樽」に最終的な打ち合わせに訪れたとき、ふと「当日中止になったら費用などはどうなる?」という疑問が初めて湧いてきたのである。これまでは、「雨の場合は傘立てを用意する」ぐらいのもので、天変地異が理由とはいえ、発注した弁当や懇親会の食材費用の補償など、店側共々話題に上ったこともないのだ。

 例会の前日午後には、28日18時頃三重県に上陸か? という予報に変わってきた。自己責任で出席してもらうということで、例会は予定通り開催することに決定。例月通り、既に20人くらいの方から「欠席投句」を頂いていたのである。県外の方や交通機関で例会に来られる方は、無理をされずFAXで欠席投句されるよう、たかこ会長から呼びかけた結果、さらに5人の方から欠席の連絡と投句があった。

 例会当日の朝には、台風の三重県上陸は深夜から翌日未明という情勢になっていた。例会開催には支障はなかったということだが、それはあくまで結果論で、用心に越したことはないだろう。出席者は12人、欠席投句者25人で、一題あたり3句出句なので、総数は111句、出席者の入選句数が少なくなるのは必然というものだ。しかし、席題は総数36句、ゼロ得点の句も対象に、活発な合評がなされ、それはそれで有意義な例会となった(と思う)。

 「これまでに経験したことのない」事態は、これからも増えてくることだろう。心しておかねばならない。

                                           柳歩

すずか路より  
曲がり角わたしの影と擦れ違う 村井一朗
安静の腕をさすって来た見舞い 鈴木裕子
避難指示何処へ逃げればよいのです 長谷川健一
落雷に帰宅の足が乱される 瓜生晴男
萌える緑こげ茶に染めた除草剤 加藤吉一
風鈴の優しい音色聞こえない 安田聡子
包丁の切れ味トマト切ってみる 芦田敬子
ソーラーパネル張り切っている猛暑の日 圦山 繁
自転車に熱いエアーを送り込む 千野 力
『夏休みの友』とセットで孫が来た 西川幸子
初恋は胸に秘めてるビターチョコ 小川はつこ
お迎えもたまにはいいな蛇の目傘 小出順子
僕の毛はわずかでもする風呂掃除 川喜多正道
クジラ釣り逃がし少年期は終わる 柴田比呂志
嫋やかに舞って終焉迎えたい 竹内そのみ
冷房が切れてもマネキンは耐える 樋口りゑ
少し慣れ少しうるさくなった口 眞島ともえ
時差ボケに配慮はしない機内食 福村まこと
水分はこまめに晩酌は一度 佐藤千四
頼られていい顔見せたばっかりに 西野恵子
主婦楽し紫蘇はジュースに梅干しに 寺田香林
お天気の気性が荒くなったよう 瀬田明子
被災者の顔見せられぬ公務員 西山竹里
八月を忘れるなよと蝉が鳴く 日野 愿
被災者の支援に被災者が出向く 澁谷さくら
派遣の身夕焼け空に石を蹴り 神野優子
仙台から豪雨お見舞いメール来る 上村夢香
和を乱す女をひとり摘み出す 前田須美代
鹿児島でカライモというさつまいも 佐藤近義
埋み火に息かけてみる老いの意地 坂 茜雲
夏休み今年の日焼けはんぱない 岩谷佳菜子
死刑執行命令した夜ピースなの 西垣こゆき
名水にそれぞれ並ぶ家事情 松岡ふみお
一通のハガキ熱波の中をくる 坂倉広美
熱帯夜曲がったきゅうりぶら下がる 勝田五百子
頭からどうぞと誘う車海老 橋倉久美子
マス目無視する文豪の原稿紙 北田のりこ
冷蔵庫チェックビールを買い足そう 河合恵美子
似てるとこ多くて距離が近くなる 中川知子
チャンネルを変えても同じワイドショー 落合文彦
ガンバレと言われりゃ余計気が滅入る 毎熊伊佐男
ドンと鳴る花火に故郷の空を見る 寺前みつる
もやもやを無垢にしていく遠花火      奥田悦生
にっぽんを崩壊させる多数決 吉崎柳歩
孫を見て我が子育てを省みる 青砥たかこ
 

整理・柳歩

7月28日(土)例会より
宿題「 騒ぐ 」 橋倉久美子 選と評
   お家騒動おこすことなどない庶民 圦山 繁
   ナメクジが騒ぐことなく燃え尽きる 芦田敬子
 止  適当に騒いだ方がよい祭り 西山竹里
 軸  騒がれるほどはもらってない賄賂 橋倉久美子
宿題 共選「 全部 」 加藤吉一 選
   取説を全部読まずに起動する 芦田敬子
   自分史が全部事実と限らない 橋倉久美子
 止  男の夢全部しゃべると軽くみえ 芦田敬子
 軸  便利だが全部は使えないスマホ 加藤吉一
宿題 共選「 全部 」 西垣こゆき 選
   ガラス拭き全部してからあずきバー 鈴木裕子
   そのうちにすべて失う蟻の穴 佐藤近義
 止  全没だそれがどうした朝は来る 西川幸子
 軸  最後まで読めない本が並ぶ棚 西垣こゆき
宿題「自由吟」 吉崎柳歩 選と評
   社の夢を見る定年はとうに過ぎ 竹内そのみ
   程々がとても苦手になった空 圦山 繁
 止  花嫁のベールのように落ちる滝 小出順子
 軸  コールドゲームないのも辛い甲子園 吉崎柳歩
席題「ボランティア」 清記互選 高点句
 9点  国よりも速く動いたボランティア 小川はつこ
 6点  安倍さんはしたことがないボランティア 橋倉久美子
 5点  ボランティアではなかった孫の肩たたき 吉崎柳歩
 4点  二心あってはならぬボランティア 吉崎柳歩
 3点  献体で疲労はしないボランティア 芦田敬子
   ボランティア出来ぬ償い小銭寄付 西垣こゆき
誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票 『 苦い 』  応募100句
 16点  効き目とは特に関係ない苦さ 西山竹里
   非正規のいつまで続く苦い水 吉崎柳歩
 15点   オブラートに包むと効かぬのが苦言 濱山哲也
 12点      ほろ苦いぐらいがちょうどいい記憶 橋倉久美子
  9点  大切な人だと思うから苦言 よしひさ
    親バカで苦い薬は飲まさない 坂倉広美
    苦いから効くと信じてのむくすり 澁谷さくら