目次24年12月号
巻頭言 「 よだれかけ」
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 杉森節子さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記

 


柳歩
柳歩整理

柳歩
たかこ


柳歩

清水 信
久美子
鈴木順子さん

たかこ
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巻頭言

 よだれかけ

 よだれかけしたまま死んだ男の子               天根夢草
 私が本格的に川柳を始めて、まだ十四年しか経っていないが、川柳に関心を持ち、入門書を読んだり雑誌に投句などを始めたのはさらに十五年遡る。この句は、その頃読んだ田辺聖子の『川柳でんでん太鼓』で初めて目にしたのであるが、当時、まだ幼い男の子の父親であった私としては、「そういうこともあるだろうなあ」と、作者の名前とともに、やや不吉な感じの句として、かなり印象に残っていた。

 夢草さんは、この句をどういう背景があって詠まれたのだろう? 第三者の眼でたんたんと書かれているので、実際にお子さんを亡くされたわけではなさそうだ。周辺でこういう事故を見聞きされたのだろうか? それとも、どこかの句会や大会で、「よだれ」か「男の子」の題が出されて詠まれたのだろうか? 「死」なんて題はまず出されないだろう。夢草さんとお近づきになってから、この句を思い出すと何故か気になっていたことである。

 「川柳展望社」に入会し、夢草さんの指導を受けるようになってから十年余り経つ。FAXなどでのやりとりで、徐々に夢草さんの生い立ちなどを知ることになった。そして、この句の「男の子」は、ひょっとしたら夢草さんご自身のことかも知れない、と思うようになった。改めて夢草さんの句集『掛合村』を読んでみると、そう思えてくるのである。(どこからか親のない子に届く靴)という句もある。(一度聞きたしねんねんころりねんころり)もある。夢草さんは自分自身を「よだれかけしたまま死んだ男の子」と表現されたのではないだろうか?

 この句は「掛合村」には収録されていない。課題吟で詠まれた句なのかも知れない。しかし、たとえ課題詠であっても、作者の偽りのない心の叫びが反映されていれば、文学に昇華されるのだ、と納得させられるのである。

  
                                                           柳歩            

 

すずか路より
訓示する社長にもある脛の傷 高柳閑雲
献血を妨げている長い風邪 川喜多正道
お針箱もって息子は赴任地へ 加藤峰子
ジグザグにかけると決まるマヨネーズ 青砥英規
痒いところはありませんかと来る電話 尾アなお
巳正月やはり貴女は生きている 神野優子
試着室まずはタグからチェックする 山添幸子
上向いて歩きましょうか曲がり角 水谷一舟
見ない振りして見てしまう注射針 小川のんの
女子会の静けさ戻るカニ料理 石谷ゆめこ
来年の手帳を買ってまだ元気 岩谷佳菜子
困ったときだけにかかってくる電話 加藤けいこ
もらい物父娘で使う夫婦箸 西垣こゆき
おろおろと火事を見ているだけの施主 松岡ふみお
内臓を並べて見せているおんな 坂倉広美
歯科の椅子倒され眠りそうになる 橋倉久美子
財布の都合で知らん顔する誕生日 北田のりこ
広辞苑よりもメールで字をさがす 落合文彦
リスナーの笑いを誘うペンネーム 鈴木裕子
賞味期限自分で決める戦中派 加藤吉一
旧家また壊し跡地は駐車場 長谷川健一
入れ替わりニュースが入る散髪屋 水野 二
好きな人思って作る夕ご飯 竹口みか子
リハビリへ迎えのバスも顔馴染 瓜生晴男
手作りの弁当持って紅葉狩り 安田聡子
本当の理由知りたくない喧嘩 芦田敬子
わたしより少し頭の良い夫 鍋島香雪
休日が三日続くと落ち着かぬ 小出順子
ピラニアの餌になってる復興費 鈴木章照
真ん中で目立ちたがりが取るポーズ 沢越建志
何度でも宥めて廻るマヨネーズ 青砥和子
相撲より気になる枡席の美人 山本 宏
しょうがくせいみたいひらがなばかりの句 吉崎柳歩
面倒なことは知らないふりをする 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句10 「杉森節子さん」                                                                                      たかこ


頭脳線女にしとくのはおしい
一城を守る誇りは捨てられず
座布団をたたんで帰る男客
藤の花時々痛いことをいう
美しい姉に嫉妬をしてる帯

大好きなタバコに居場所ありません
帰れないことを知ってる水枕
網だなで一夜あかした新刊書
結論は女にまかす会議室

毒のある言葉の裏を読んでいる
運命線じっと見ている諦める
思い通りになって腹の立つ結果
レントゲンいつも疑いかけられる

清張のペンが明日香の謎を追う
脇役が少し目立っていませんか
予定表まだ坂道を這ってくる
被災地の跡にタンポポ咲いている

うれしくて花屋を行ったり来たりする
電話帳の職業覧にない教師
大臣の名前コロコロ転がって
何事も無かった振りをしてやろう
本棚でほこりかぶっている仲間

11月24日(土)例会より
宿題 「予約」 吉崎柳歩 選と評
  予約した弁当届かない会議 西垣こゆき
  来年を予約し幹事役終える 橋倉久美子
 秀 予約した馬車がなかなか来てくれぬ 青砥たかこ
キャンセルがなくて幹事もほっとする 吉崎柳歩
宿題 共選「助ける」 加藤吉一 選
  空腹をちょっと助けてくれる飴 北田のりこ
  助けてと叫べるうちはまだ余力 西垣こゆき
 秀 恩返し目当ての助けでも欲しい 橋倉久美子
助ける気あるの虐めのアンケート 加藤吉一
宿題 共選「助ける」 水野 二 選
  私のからだ薬が助けてる 杉浦みや子
  独り身の暮し助ける地域の手 川喜多正道
 秀 飲み切れぬ分は私が助けます 橋倉久美子
こっそりと耳打ち利いた助け舟 水野 二
席題 「温い(ぬくい・あたたかい)」 清記互選
  8点 手袋は片方だけでよいデート 北田のりこ
 7点 温もりがうれしい真夜中の便座 青砥たかこ
  常連が占領をする温い席 坂倉広美
 6点 握った手なかなか離せない見舞い 川喜多正道
 5点  缶コーヒー小さな温み買ってくる 橋倉久美子
  例をあげ温い人柄読む弔辞 加藤吉一
  人肌にしても侘びしい独り酒 吉崎柳歩
特別室

『川柳塔のこと』旧刊新解1                               清水 信                                   

 書庫を整理中である。戦後だけでも貯って、書物や雑誌は大変な量である。意外な雑誌や、記憶から失われた書物が出て来て、驚いてしまう。川柳の雑誌も何百冊と出てきた。とりわけ『川柳ジャーナル』が二百冊近くも出てきたのである。批評はとにかく、読まれることを期待して送っていただいたのだから、その頃の期待度を思い出すしかないのだが。『川柳ジャーナル』と『川柳三重』は別にして、次のような柳誌が沢山出てきた。

『川柳しなの』(松本市)
『川柳なごや』(名古屋市)
『川柳ますかっと』(岡山市)
『ふあうすと』(神戸市)
『川柳平安』(京都市)
『きたぐに』(金沢市)
『川柳塔』(大阪府)
『柳都』(新潟市)
『柳宴』(岐阜市)
『噴煙』(熊本市)
『中日川柳』(名古屋市)
『川柳研究』(東京都)
『川柳人』(東京都)

 いずれも百号以上の発行を続けている老舗の柳誌である。『川柳研究』は総合誌風であり『中日川柳』は広域誌らしいが、『ふあうすと』や『噴煙』や『ますかっと』はいかにも同人誌的な味を出している。
『川柳塔』536号は昭和47年1月号である。エトがネズミということで、同人十数人が「ネズミ」についての小エッセイを書いている。
巻頭言には釈宗海の言葉が引かれている。「客に接するは独り居るが如く、独り居るは客に接するが如し」と。

また、師系の路郎の句を引く。

「俺に似よ俺に似るなと子を思い」

面白いのは、シンボル・バッジを同人に募集し、そのデザインの入選が決定して、その発表があることだ。シンボル・バッジを決めて、全同人がそれを胸につけているなど、他の柳社には多分見られぬことだろう。

「川柳における比喩のユーモア」
「梁上の君子」
「川傍柳の初篇研究」
「川柳五十三次」

等のエッセイが仲々面白かった。

 発行所は大阪市南区鰻谷仲之町20にあって、協賛柳社として「川柳大阪」とか「備前川柳」とか「鳥ヶ谷川柳」「南海川柳」「川柳ウイロー社(ハワイ)」とか「川柳わかやま」とか「まるべに川柳会」とか、いろいろあって、この頃もにぎやかだったのだと思う。

橘高薫風

・白蝶入り黄蝶出て来ぬ寺の門

                                                                            (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 デモ 』  応募70句
 14  拉致のデモマイクの声も老いてくる 福井悦子
  9     平和だなデモに混じったハイヒール 橋倉久美子
   8    オスプレイデモ行進の上を飛び 関本かつ子
     先頭の遺影も叫ぶデモの列 福井悦子
   7    肩書きをはずしてデモの列に乗る 坂倉広美
     妻がスト私はデモを起こせない 瓜生晴男
     日当がでるのかデモにすごい数 加藤峰子
     報道のカメラにデモが盛りあがる 松岡ふみお
     これも義理マスクを付けてデモの列 岩田眞知子