*みいちゃんを待たすことなく春が来る |
圦山 繁 |
まだ春は行ったり来たり落ち着かず |
浩子 |
桜前線追う旅を練る頃なのに |
大島ともこ |
*菜の花の海で迷子になっている |
平井美智子 |
*中止とは知らずに咲いている桜 |
吉崎柳歩 |
新しいことはなくても春四月 |
岡本 恵 |
ワイドショー花見のゴミを撮りに行く |
前原こきん |
展示会春には春の山野草 |
武良銀茶 |
淋しくて花鉢ばかり増えて春 |
笹田しま |
春がきた喜び奪う温暖化 |
寺井一也 |
春なんか忘れてました温暖化 |
佐藤千四 |
もう少し寝ていいですか春だから |
麦乃 |
*堂々と野良猫春の声で鳴く |
小出順子 |
天麩羅で春を知らせるふきのとう |
正能照也 |
あっちこち春の陽気に蒲団咲く |
BBブンゴ |
いい出会いあるよう下ろす春の靴 |
石森あやみ |
春が来る前に花粉がやって来る |
西山竹里 |
*立ち話春の日差しがつくるシミ |
小谷小雪 |
*ジャンプして届くあたりに春を呼ぶ |
橋田しゅう穂 |
お花見もキャンセルコロナには勝てぬ |
裕子 |
春場所はコロナが座る砂かぶり |
兎亀 |
春一番洗濯ものが逆上がり |
正能照也 |
*軽トラで春がいっぱいやってきた |
東川和子 |
登校はスキップ春は春らしく |
森山文基 |
みーつけた自転車止めて摘むつくし |
裕子 |
道端に春を見つけたウオーキング |
竹内妙子 |
*散歩道春をポッケに摘んでくる |
福多郎 |
はるうらら軍手が急かす草むしり |
わこう |
*一目惚れだった入学式だった |
加藤当白 |
十八の春とは違う古稀の春 |
吉崎柳歩 |
それぞれの春へ飛び交う中古品 |
たごまる子 |
秋ほどに観てはもらえぬ春の月 |
堀 敏雄 |
入学式マスクに似合うスーツ買う |
稲垣康江 |
浮き立たぬ春にさくらも遠慮がち |
澁谷さくら |
地中から春はまだかと草が聞く |
山田明 |
衣装替えさせられ春を知る案山子 |
福村まこと |
秀3
だとしても桜開花を手抜きせず |
伊田網人 |
秀2
こっそりとマスクをはずし春を吸う |
すずき善作 |
秀1
フリースは脱げてもマスク取れぬ春 |
竹中正幸 |
評
例年と違う春に直面している今、「春」をどう読むかは悩ましいところ。秀句
3句は、その辺りをうまく消化していると感じた。