目次25年2月号
巻頭言 「 課題詠の罪」
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 山岸志ん児さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記

 


柳歩
柳歩整理

柳歩
たかこ


柳歩

清水 信さん
久美子
木本朱夏さん

たかこ
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巻頭言

課題詠の罪

喧嘩して独り眺める遠花火    SK
                     二十三年十月号「すずか路」より

 昨年の鈴鹿市民川柳大会の後、会員のSさんが退会された。Sさんは平成十四年入会の古参会員であったが、二十年八月から自治会の会長などを務められ、その間、鈴鹿川柳会は休会されていた。そして二十三年九月に復帰された。当初から優れたセンスの持ち主で、句会でもしばしば秀句をものにされていた。数年間、会計も引き受けてくださり、得難い人材でもあったので、その復帰を心から喜んでいた。

 復帰後もよく入選し、句会を楽しまれているように感じていたが、復帰後初の市民川柳大会では全没だったようだ。相当ショックだったようで、プライドも傷つかれたのだろう。相談もなく翌月には退会されてしまった。

 いきなり「課題詠」から川柳を始める人は少ないだろう。新聞や雑誌、色紙展などで、「なるほど!」と頷かされる一句を目にして、自分もやってみたいと、「雑詠(自由吟)」を作句、投句を始めた人がほとんどだろう。やがてどこかの川柳会に入ることになる。
 そこでの句会は課題詠中心である。とまどいもあるだろうが、小集会であり選者もまちまちであるので、そこそこ入選する。本当の川柳が解らないうちに「抜ける快感」に溺れ、ギャンブル依存症ならぬ「抜句依存症」に陥る。思うように抜けないとフラストレーションが溜まる。「川柳を楽しみたい」ことが入会の動機だったのに、入選することが目的になってしまう。「課題を与えられて競わされている」のが、句会や大会の偽らざる現状である。 

 日常生活の中で生じる様々な発見や思いを素直に十七音にすれば、個性のある作品が生まれる。表現力を磨けば自分なりの「文学作品」も生まれる。 一方、課題詠では入選することが優先されて自分を見失い、テクニックや虚構に頼るようになる。受動的に量産される作品から、文学(思いのある作品)がどれだけ生まれるだろうか? 
                                         柳歩            

 

すずか路より
人間になりたい猿で本を読む 水谷一舟
喧嘩しても一緒にいたい人がいる 小川のんの
間に合うか入れ歯忘れてUターン 石谷ゆめこ
二人でも黙って食べる夕ごはん 岩谷佳菜子
もらった絵だんだん邪魔になってくる 加藤けいこ
我が儘を言うと荷物にされる歳 西垣こゆき
保証日を過ぎて壊れた洗濯機 松岡ふみお
筆先を裂きワイルドに切りつける 坂倉広美
前祝いもらって引っ込みがつかぬ 橋倉久美子
日向ぼこしすぎ干物になってくる 北田のりこ
コンビニに置いてないもの考える 落合文彦
雄大な雲に見とれてけつまずく 鈴木裕子
人質になるとは思わない家族 加藤吉一
普段着でおせちを食べるお正月 長谷川健一
返馬餅由来を聞いて引き返す 水野 二
古里が投影される猛吹雪 竹口みか子
風花が舞ってあしたは大雪か 瓜生晴男
風呂上がり湯冷めせぬ間に寝るとする 安田聡子
若女将の笑顔もよくて客が来る 芦田敬子
つまずいて女人高野の門叩く 鍋島香雪
給料日だけは絶対忘れない 小出順子
テロップが翻訳をしてくれる手話 鈴木章照
客として猫の機嫌を取っている 青砥和子
アルバムのこの辺までは二眼レフ 山本 宏
先生と呼ばれてみたいカエルの子 高柳閑雲
健診に出た正月の不摂生 川喜多正道
絵心があれば寝顔が描けるのに 加藤峰子
いつだってお行儀が良い柏餅 青砥英規
あれこれを封じ込めたいお茶を出す 尾アなお
甘酢漬け蕪の命かみしめる 岡ア美代子
お母さん忘れないでと夢に出る 神野優子
飛びたくて飛んでるわけじゃないんです 山添幸子
三面鏡ぼくが笑うと皆笑う 吉崎柳歩
あどけなく描いても蛇は嫌われる 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句12 「山岸志ん児さん」                                                                                   たかこ


 

広辞苑にのっていたのでほっとする
乗せてもらって前の車をほめすぎる
私語を許すと教室はみな黙る
ゆで玉子クルッとむけたことがない
秘書のせいにしたいが秘書はおりません

ファックスで送る金ならありますが
行列の出来る川柳屋はないか
非常勤講師も待っているオファー
トイレからかけてる電話とは知らず

かけひきとしての遠慮に気づかない
それほど好きではないが二月のチョコレート
素っぴんをほめてもすぐに塗りたがる
魚へんの湯呑み楽しく待たされる

決まっているのに相談はないだろう
NHKだから言えないことがある
あきらめるために平均点を聞く
腹割って話すに酒がいるらしい

かびてきたので先輩の句集よむ
歌わないのにカラオケへ行きたがる
出戻りの賀状を少しいたわろう
日本人がいたかどうかが問題で
パチンコ屋でリベンジされてきたらしい

 

1月26日(土)例会より
宿題 「包む 」 吉崎柳歩 選と評
  道端の包みうっかり拾えない 西垣こゆき
  包んでも一升瓶とすぐわかる 橋倉久美子
 秀 まだ花束に包まれたくはないいのち 坂倉広美
爆弾と分からぬように包まれる 吉崎柳歩
宿題 共選「ミカン」 長谷川健一 選
  お鏡の上でみかんがかしこまる 北田のりこ
  差し上げたミカンが縁のバスの旅 水谷一舟
 秀 鳥に裾分けミカン半分枝に刺す 芦田敬子
ミカンの花歌で戦後思い出す 長谷川健一
宿題 共選「ミカン」 鈴木裕子 選
  冷凍のミカン解けだす一人旅 芦田敬子
  差し上げたミカンが縁のバスの旅 水谷一舟
 秀 いい話にしようミカンひと箱持って行く 坂倉広美
わたしの胃ミカンはいつもSサイズ 鈴木裕子
席題 「若い」 清記互選
11点 まだ少し若い部分が翔びたがる 青砥たかこ
 8点  若返るタイトル付けば売れる本 芦田敬子
  膝のあたりから若さが逃げて行く 坂倉広美
 7点  若すぎて困る場合もある後妻 吉崎柳歩
 5点 成人式雪を気にせぬ借り衣裳 加藤吉一
 4点 かぐや姫月でも若いままだろう 小出順子
  最高の武器に気付かぬ若い頃 加藤峰子
  国防に駆り出されるか若い人 川喜多正道
特別室

『川柳三重のこと』旧刊新解B                               清水 信 

 書庫の整理中である。92年の生涯といっても、戦後の60年余が主であるが、貯った書籍、雑誌は30万冊を越える。その片付けに日々悪戦苦闘している。

『川柳ジャーナル』も100冊ばかり出てきたが、丁寧に読み返す暇はないものの、寸見するだけでとても面白い。
 例えば、昭和47年(一九七二年)の一月号は通巻98号である。中村富二の巻頭句集の中から拾う。

・冬の日のちんばの馬の出勤せよ
・陰毛とあご髯馬鹿と同義語に
・お葬式愛する顔が溢れはせぬ

 現在から言えば、差別語の氾濫であるが、それを克服する迫力がある。
 誌中に時実新子の手紙が入っていて、当時、彼女は姫路市健町40に住んでいた。しかし編集は埼玉県新座市大和田の松本芳味であり、発行人は静岡市丸子の小泉十支尾であるが、事務局や発行所は東京都豊島区北大塚の森林書房という複雑な組織であった。

 東京グループ、静岡グループと分れて活動しているみたいだが、雑誌を送り続けて下さった時実さんは、どこの句会に、どういう形で参加していたのだろうと不思議である。

「外部の声」という外部からの書信を転載したページがあって、坪内稔典や金子兜太、広田仁吉に混って、自分の書信も載っているが、記憶にはなかった。

 中村富二は明治45年2月、横浜の伊勢佐木町に生まれた人で、昭和8年より横浜天町句会を始めて、句作に励んだ由。14年川崎で古本屋を開業、客の松本芳味を識り、句誌『鵜』を創刊。『川柳ジャーナル』では教祖的存在となっている。

 投句先のアドレスは変遷をくり返しており、時々は時実新子宅へもどり、彼女が選評を担当している。彼女の実作を同誌同号から拾う。こうだ。

・滝落下やまいの剝脱を果す
・照りかげり胸つき坂は女坂
・滝しぶき抱擁地獄無限地獄
・人の息首にかかれば首から死ぬ
・滝のエロケシゴムはながし眼に残り

 やはり悪くない句境である。投稿欄に津のウオミタカコという作者がいて、その後の活躍を知らないが、どういう人だったのだろう。こんな作がある。

・サド侯爵へ母くれてやるゆびきりや
・晴着の紅へ母を葬る水子かな
・あぶくがひとつ水底に透く青い読経
・闇から闇祭壇の灯へ急がねば

 才能のある人のように思うが、その後はどうしているだろう。

                                                                          (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 少ない 』  応募80句
 1 4  少なめに言う体重も年齢も 前田須美代
 13  限定と書いてお客を呼び寄せる 橋倉久美子
 1 2  少ないと言えずに皿を舐める犬 濱山哲也
   9    パートには寸志と書いてある賞与 関本かつ子
     私だけ乗せて旗日の路線バス 宮アかおる
   8 点             数えなくても財布の中身なら分かる 吉崎柳歩
     口数は少ないけれど重みある  落合文彦
   7 点  少ないが出るだけましという賞与 吉崎柳歩
   6 点  交通費払って足が出た謝礼 川喜多正道
      足一本少ないだけで安い蟹 山本 宏