吉崎柳歩 選(入選39句)
オンラインでは見抜けない腹の底 |
竹中正幸 |
*正座して絶対見せぬ腹の底 |
芦田敬子 |
*鍋の底だけは洗ってお正月 |
児玉 浪枝 |
何回も底値が変わる歳の市 |
城崎れい |
オール電化で焦げを知らない鍋の底 |
芦田敬子 |
引き出しの底にヒミツを眠らせる |
汐海 岬 |
靴底を減らして伸ばす棒グラフ |
植野悦子 |
底辺の汗が支えるトップの座 |
こやまひろこ |
貧乏で育った母の底力 |
やんちゃん |
底辺をエッセンシャルと持ち上げる |
瀬田明子 |
上げ底の幸せらしい青い芝 |
颯爽 |
これ以上沈まぬはずが二番底 |
山崎三毛 |
底冷えの居酒屋猫も寄りつかず |
よーこ |
人生の底を経験した強み |
松本諭二 |
*熱燗にしてくださいな夜の底 |
柴田比呂志 |
念のため菓子折りの底確かめる |
白鳥象堂 |
ポケットの底から逃げた電車賃 |
龍せん |
接着剤の限界を知る靴の底 |
加藤吉一 |
*職退いてまずは深海魚になろう |
柴田比呂志 |
底の方に寝てる気がする当たりクジ |
北田のりこ |
三合目話の底はまだ見えぬ |
澁谷さくら |
*美容液底の底まで使い切る |
ホッと射て |
ドン底を知った男が締める綱 |
眞二 |
折れ線は今が底だと気づかない |
寺井 一也 |
*底見せて敵ではないとわからせる |
橋倉久美子 |
底をつくまでは強気な産油国 |
西岡ゆかり |
腹の底覗きあわてて蓋をする |
こやまひろこ |
煩悩が溜まる目の底耳の底 |
安藤なみ |
引き出しは多いが底が浅い人 |
あやめみのり |
*骨壺の底は確認せず入れる |
徳重美恵子 |
竜宮がまだ見つからぬ海の底 |
西山竹里 |
*ともだちの声が聞こえぬ冬の底 |
新家完司 |
煮えきらぬ男豆腐は鍋の底 |
おさ虫 |
金魚鉢の底に沈んでいる孤独 |
こみち |
上げ底を心地よく聞く披露宴 |
植野悦子 |
上げ底のワタシを隠す初対面 |
おかの みつる |
秀3
軽石の夢海底で眠りたい |
田地尚子 |
秀2
靴底の小石に油断してしまう |
平井美智子 |
秀1
外面と全く違う腹の底 |
大木雅彦 |
評
外面(そとづら)がいい人とは、いつも笑顔で誰とでもすぐに話を合わせることができ
る人のこと。「全く違う」と決めつけたくなる人も多いが、もちろん例外もある。
軸
*九条がないと底なし沼になる 吉崎柳歩