吉崎柳歩 選(入選39句)
廃校になっても私の母校 |
岡本恵 |
廃校が決まり校庭には若葉 |
真島久美子 |
廃校のジオラマに立つ金次郎 |
寺井 一也 |
廃校に置いてきぼりの金次郎 |
山口悦子 |
廃校の跡地に母のケアホーム |
平井美智子 |
怪談もあった校舎の壁のシミ |
アゲハ |
マスクした顔半分でする授業 |
玉木りょうこ |
*校門で先生がする通りゃんせ |
冬子 |
給食が防いでくれた不登校 |
光畑勝弘 |
学校のいじめを隠す草書体 |
大木雅彦 |
学校が側で道草できない子 |
たごまる子 |
今ならば先生の愚痴聞いてやる |
八木五十八 |
学校の匂いをさせて新社員 |
平尾定昭 |
親子三代通った母校閉じられる |
北田のりこ |
学校で学ばぬ知恵で身を立てる |
山登爺 |
教室の匂い恋しいオンライン |
通せん坊 |
*学校が荒んで結露ばかりする |
福島亮也 |
*アン・シャーリーと会う学校の図書室 |
虹色くじら |
卒業をすると切なくなる校舎 |
城崎れい |
勉強をしたくなるのは卒業後 |
澁谷さくら |
実らない恋も知ってる通学路 |
宮尾柳泉 |
麻雀も酒も夜学で仕込まれた |
新家完司 |
オンライン授業教師はテレワーク |
清水克俊 |
分校の贅はマンツーマン授業 |
よしひさ |
入学のソメイヨシノに雪が降る |
柴田比呂志 |
教え子の文集処分できぬまま |
上平 祥 |
慕われた先生平のままで終え |
満月庵 |
言いやすいので学校に言う苦情 |
橋倉久美子 |
*風除けの舟が集まる保健室 |
瀬田明子 |
ローカルな川の名前を詠む校歌 |
モモコ |
タイムカプセルあちこち埋めてある母校 |
橋倉久美子 |
*分校の桜はいまもありますか |
徳重美恵子 |
学校の松の廊下で拭く涙 |
内田政竜 |
学校の渡り廊下の淡い恋 |
いちこ |
授業までテイクアウトにするコロナ |
船岡五郎 |
滑り止めなんて言わせぬ我が母校 |
北田のりこ |
秀3*学校にたくさん掛けてある時計 |
西山竹里 |
秀2
分校の誇りは広いグラウンド |
木村行吉 |
秀1*1ねん1くみ野田せんせいの楷書体 |
宮井いずみ |
評 これはきっと、作者の記憶に残っている事実なのだろう。担任となった先生の自己
紹介の風景。「楷書体」という言葉は、あとでお母さんに聞いたのだろうか?
軸
*面影はないが母校に続く道 吉崎柳歩