目次25年3月号
巻頭言 「 『字結び』か?」
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 水谷一舟さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記

 


たかこ
柳歩整理

柳歩
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柳歩

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たかこ
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巻頭言

「字結び」か?

  柳歩さんから度々講義を受けている「字結び」について、始めたばかりの人もおられるし、先日もネット句会へ応募の方から質問もあったので書きたい。

 「読み込み可」と「字結び」を混同しているむきがある。「読み込み可」は課題の漢字を句の中に入れてもよいということであって、例えば「親」という題では「親父」とか「両親」などを使ってもよいということである。「親展」「親切」「肉親」「親友」とはおのずから意味が違っている。左記は駄目な例。

親展の手紙が届く某月某日
親切という美学突き指ばかりする
肉親探しなんと大きな疵だろう(肉親は血族であって親ではない)

              (選者のこころ参照)

 句会あるいは大会の課題に、わざわざ「読み込み可」とは書かれていないが、「読込不可」と書かれていない限り、読み込み可なのである。「親」の題へ「親父」「両親」は親を示す熟語だからいいのである。
 だが、「字結び」は違う。「字結び可」と書いてない限り、その漢字が本来持っている意味と違う熟語は使ってはいけない、選者は抜いてはいけないのである。なんでもいいのでは、川柳がただの言葉遊びになってしまうと思う。

大会あるいは誌上大会で、漢字一字の出題は多い。まれに「読み込み可」とわざわざ添え書きがしてあるところがあるが、「字結び可」と混同しやすいから気をつけて欲しい。

 昨年、みえ文化祭川柳大会の課題は「宿」であった。共選で「やどかり」の句が数句あったが私は抜くことが出来なかった。相手の選者さんは、何句か採られた。おそらくセーフだろうとは思うが…。

 こんな細かいこと考えている暇があったら、作句に専念した方がいいのだろうが…。

                                         たかこ            

 

すずか路より
着ぶくれて電話機までがやや遠い 加藤けいこ
問診票少しは見栄も記入する 西垣こゆき
タイヤ替え10万キロの機嫌取る 松岡ふみお
ボールペンでは占いに使えない 坂倉広美
このドキドキは電話では伝わらぬ 橋倉久美子
日が陰り仕事に戻る日向ぼこ 北田のりこ
買い取りの値段がつかずただのゴミ 落合文彦
春のノルマ営業マンのおべんちゃら 河合恵美子
しあわせなときに死ねたらなと思う 鈴木裕子
疲れます未だ新婚のお雛さん 長谷川健一
歯科医師の素顔見せないまま終わる 水野 二
日中の温さ狙ってする散歩 竹口みか子
軌道から外れて今日も独りぼち 瓜生晴男
天ぷらに椿の花はどうかしら 安田聡子
知ってても知らぬ振りする夫婦仲 芦田敬子
元カレと他人の顔で会釈する 鍋島香雪
ごめんねと言っても父は空の上 小出順子
核実験大国ならば許される 鈴木章照
何番目のビールだろうと酔えばいい 青砥和子
鬼だって羽毛蒲団の欲しい冬 山本 宏
砂時計他人の言うことは聞かぬ 高柳閑雲
寝たきりになってもできる片思い 川喜多正道
楽しみは二時間かけて来る句会 加藤峰子
白鷺と泥棒似てる歩き方 青砥英規
引っかかりながら川を流れている 尾アなお
旅の宿カニは女を黙らせる 岡ア美代子
仏前に年の数だけ豆を置く 神野優子
スタートは遅れたけれどある意欲 山添幸子
行くあてはないけどひげは剃っておく 水谷一舟
思い出に掛ける保険はないかしら 小川のんの
背伸びしてスマートフォンを持ち歩く 石谷ゆめこ
寒椿紅一点の冬の庭 岩谷佳菜子
わたしにも爪楊枝にも使命感 吉崎柳歩
消す前にまず消しゴムの汚れ取る 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句13 「水谷一舟さん」                                                                                   たかこ


よく勉強しました今日は句が抜けて
自称詩人愛で始まる詩が好き
母もこんなに泣いただろうか失意の日
いくさ好きボクの先祖は武士らしい
椅子とりゲーム一番下手なのは社長

涙もろい私になった花粉症
美人ばかり見すぎたせいか乱近視
健康法散歩も妻となら出来る
人間の嘘も詰まった粗大ゴミ

もどらない愛とさとった欠け茶碗
賞罰なし恋の前科はありますが
ポケットが多いひみつを持ちすぎて
洗面器の中に昨日がまだ残る

幸せと書く妻が優しくなったから
老介護趣味川柳がボケさせぬ
花図鑑この花ならば母も好く
愛は終った切り取り線でまだ迷う

会話ない夫婦で不味い食事する
愛の始まり妻がもどってくれました
若さとはいいな明日が見えるらし
酒飲んで騒ぐ明日は考えぬ
行くあてはないけどひげは剃っておく

 

2月23日(土)例会より
宿題 「 息 」 青砥たかこ 選と評
  息かかるほど近いのにときめかず 岩谷佳菜子
  ため息のたびに進んでいく老化 吉崎柳歩
 秀 ため息が埃のように降り積もる 竹口みか子
シャッターへつい息止めるくせがある 青砥たかこ
宿題 共選「怒る」 坂倉広美 選
  すぐ怒るから言わないことが増えてゆく 竹口みかこ
  後ろ姿が怒ってますと言っている 芦田敬子
 秀 落ち着けば怒ったことが恥ずかしい 石谷ゆめこ
名の誤字を怒って欠席欄に○(まる) 坂倉広美
宿題 共選「怒る」 北田のりこ 選
  落ち着けば怒ったことが恥ずかしい 石谷ゆめこ
  ちょっと怒るとパワハラと騒がれる 橋倉久美子
 秀 よく怒る上司にゆがみ出す職場 青砥たかこ
本音を探るためわざと怒らせる 北田のりこ
席題 「 酒 」 清記互選
10点 演歌にもならない老いのひとり酒 坂倉広美
 7点  上司にも少し甘える酒の席 鈴木裕子
 6点 うわばみが揃い幹事が青ざめる 吉崎柳歩
 5点  お歳暮の酒が残っている不調 坂倉広美
 4点 台所静かになった盗み酒 水野 二
  好きなだけ飲ます失意の友だから 水谷一舟
  飲ませたのは誰だ困った泣き上戸 水谷一舟
特別室

 迫力について                                       清水 信 

 俳句であれ、川柳であれ、五七五の型を、自分は迫力の型と見ている。写生や風刺や諧謔には、それは似合うという批判もあろうが、この詩形を支える根幹は、やはり迫力としか言いようのない情熱だろう。

 県内の柳誌としては、本誌の他には、『川柳よっかいち』と『川柳亀山』を、お送り戴いているだけだが、今回は亀山川柳会といだがわ川柳会の『合同句集』25号も戴いた。その中で、

伊藤忠昭
・旗色鮮明赤を黒とはよう言わぬ
・空き缶を投げて心が晴れますか

 などは、まあ元気がある方だろう。

上田良夫
・四面楚歌一石投じ見直され
                            瓜生晴男
・北風がやけに凍みいる臑の傷
                            勝田五百子
・延命はいやとしっかり書いてある
                            小舘清次郎
・故郷は千の鎮魂海に向く
                            坂倉広美
・もう一歩あと一歩と踏むけもの道
                            佐藤宏
・人は所詮孤独に耐えて死期を待つ
                            高木義光
・鉄拳の教えに育ちやや短気
          永島み志子
・再びも三度でも良し片思い

 これらは「迫力」の見られる作である。

『川柳亀山』298号の雑誌で木原広志が、中日川柳会も高齢化と病のため、どんどん会員が減っている。無料で若い人のために「川柳入門講座」をしたら、どうだろうという提案である。賛成であるが、その際是非とも、川柳は迫力が基盤の創作であることを強調してほしい。

 迫力とは対象に迫る力である。対物圧力である。五七五は品詞との関係で言えば、感嘆詞に最も近い。感嘆が根っこにある文学とも言えよう。

『川柳よっかいち』504号(2月号)から採れば、

                            西谷英
・狐火よ妻はその先嶺急げ
          水谷康子
・駅に降り迷う余生を叱咤する
                            坂井兵
・叛旗舞う信じた人に裏切られ
          斎藤たみ子
・木枯しと歩きつづける今日の飢え

などが、対象に力をぶつけている迫力を感じさせて良い。

                                                                          (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 城 』  応募76句
 1 1  城攻めの極意孫から埋めてくる 坂倉広美
   平和ならなんと不便な天守閣 加藤吉一
   ドアチェーン私の城を覗かせぬ 福井悦子
      机置く半畳だけは俺の城 川喜多正道
   9  母の城でした句帳の残る部屋 前田須美代
   8 点             台所城主は一人だけで良い 岩谷佳菜子
   7 点   栄光の過去石垣に語らせる  山崎よしひさ
   6 点   成金の趣味で田舎に建つお城 吉崎柳歩
    妻の城ちょっと借りますカップ麺 寺田香林