目次25年6月号
巻頭言 勇み足
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 木野由紀子さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・インターネット句会
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記

 


柳歩
柳歩整理

柳歩
たかこ


柳歩

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久美子
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たかこ
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巻頭言

勇み足

 五月十九日は、津市民文化祭川柳大会であったが、早く終わったので帰宅して大相撲中継を観た。

私が注目していた幕内下位力士、「勢(いきおい)」は大型力士の魁星にあっけなく寄り切られた。がっかりしていたら物言いがつき、魁星の「勇み足」、行司差し違いで勢の勝ちとなった。魁星は、相撲に勝って勝負に負けたのである。

 「勇み足」とは言い得て妙の決まり手(?)だ。いい体勢になって喜んで寄って行ったら、相手の体より先に、自分の足先が土俵の外に出てしまったのである。まさに「勇み足」である。 

 むかしむかし、めいばんの帰路は四日市の故・乾和郎さんとたいてい一緒だった。ある日、和郎さんの選で私の自信作が通らなかった。彼に「こんな良い句を出したのに何で没だったんだ」と聞いた。先輩だけど忌憚のない意見を交わせる仲だったのだ。彼は、「この字が誤字だったので没にした」とつれなかった。私は、なんて意地悪な! と思ったが、見直しもせずに勇んで出句したのを悔やんだ。   

 『川柳展望』の誌友になってすぐ展望集に出句したら、門構えの門を省略した字を正しく書くように夢草さんに指摘された。夢草さんは誤字にも厳しい。「現代川柳大賞」の審査員を私も仰せつかっているが、誤字だけでなく十句の中の一句でも失敗作があると、夢草さんは厳しいようだ。実力者の作品が選外になってしまうこともあるのも、それが原因だろう。(わたくしをちゃんと叱ってくれる鬼)という句を以前詠んだが、この鬼はむろん夢草さんである。「厳しい」ということは「優しい」ということである。厳しさに徹する、ということはなかなか難しいことだ。「優しさを貫く」ことでもある。

 相撲と川柳とは分野が違うが、真剣勝負であることには違いはない。稽古場と本場所とは違う。鈴鹿の例会は稽古場だが、外部の人と競合する句会はすべて本場所の土俵である。

                                          柳歩            

 

すずか路より
飽きもせずサヤエンドウの玉子とじ 安田聡子
息子からメールはいつも箇条書き 芦田敬子
新緑をよそおう藤のネックレス 圦山 繁
ていねいな招待状だ断れぬ 鍋島香雪
急いだら消えてしまった虹の橋 小出順子
ライバルは無理した顔の奉加帳 鈴木章照
一万歩歩くと決めた茹で玉子 青砥和子
判定も美人に甘くなるルール 山本 宏
アメリカが上向いてきたいい潮目 高柳閑雲
爽やかな季節の中で五月病 川喜多正道
老人の中にもやんちゃいて困る 加藤峰子
20歳の時に拾った石を持っている 青砥英規
元気かと明朝体で聞きに来る 尾アなお
通帳を開くとへそくりが笑う 岡ア美代子
一周忌母の両手が空いている 神野優子
うっすらと汗ばむ充実の作業 山添幸子
人生相談表も裏もみな話す 水谷一舟
気温差に振りまわされるクールビズ 加藤けいこ
仏にもカーネーションのおすそ分け 小川のんの
料理教室お皿洗ってから終わる 石谷ゆめこ
お見舞いも整形外科は気が軽い 岩谷佳菜子
年二度の帰省が月に二度になる 松本諭二
いつやるか生前葬のタイミング 西垣こゆき
コマーシャル流れ車列の続く里 松岡ふみお
仏像の背骨を掃除しておこう 坂倉広美
印刷屋さんが一番目の読者 橋倉久美子
前の世でワライカワセミだった人 北田のりこ
母の日に母の墓前に詫びる花 河合恵美子
隣から仏も好きな豆ご飯 鈴木裕子
蛙の声聞こえる田んぼ田植えする 長谷川健一
暇人で相手の駒も並べている 水野 二
気がつけば奥歯をぎゅっと噛んだまま 竹口みか子
朧月愛でて五月の風に酔う 瓜生晴男
退院を待ってくれない畑の草 加藤吉一
整形をすればするほど変になる 落合文彦
靴下とパンツは買って貰えそう 吉崎柳歩
ひとりしかいないと出せる馬鹿力 青砥たかこ
閉めるときは要らない引き出しの取っ手 橋本征一路[招待席]
 

整理・柳歩

川柳 人と句16「木野由紀子さん」                                                                                   たかこ


あまりにも清い瞳を返される
ツルアキラの句碑を動かぬ赤とんぼ
約束も雪も仏もやわらかい
コンビニのサラダ夫がおいしそう
いつからか友だちという常備薬

あの時のブランコ今も野にあるか
能面を割れば噴きだす私の血
仏壇に時々パンと珈琲を
砂時計のなかの砂漠を迷い抜く

さくら並木ここは仏と遭うところ
取り急ぎ弾むいのちを冷やします
手を引かれときどき月へ行くのです
原点でベートーベンを聞いている

ビンの蓋あける力は残したい
死んだこと脳に気付かれてはならぬ
そこそこの仲間で絆深くなる
あまりにも清い瞳を返される

青い鳥になったドナーの魂よ
雨もまたたのしビートルズを聞いて
長谷寺の牡丹ひとりの僧へ散る
研ぎ澄まされた一行に うなされる
お地蔵さんの孤独を囲む山ざくら

5月25日(土)例会より
宿題 「不足」 吉崎柳歩 選と評
  トレーニング不足を隠せない結果 青砥たかこ
  金持ちがもっと欲しいというお金 西垣こゆき
 秀 候補者の力不足で下ろす幕 加藤吉一
北朝鮮の辞書には載ってない不足 吉崎柳歩
宿題 共選「素顔」 加藤吉一 選
  風邪ひかぬよう素顔に壁を塗ってやる 鈴木裕子
  素顔でも平気な場所は決めている 岩谷佳菜子
 秀 死ぬ時も素顔生まれた日のように 橋倉久美子
逆風になると素顔が読めてくる 加藤吉一
宿題 共選「素顔」 橋倉久美子 選
  小百合ちゃんの素顔は見たい見たくない 吉崎柳歩
  素顔まで見せてくれない観光地 加藤吉一
 秀 神様の素顔にあったニキビ痕 坂倉広美
死ぬ時も素顔生まれた日のように 橋倉久美子
席題 「本」 清記互選
10点 笑いたい日に読んでみるサザエさん 鈴木裕子
 8点  立ち読みのレシピをしかと記憶する 鈴木裕子
  捨てるなと贈呈印を捺した本 坂倉広美
 6点  ベストセラーだけど読まれてない聖書 川喜多正道
 5点 やせる本妻に内緒で借りて読む 水谷一舟
  返してとなかなか言えぬ貸した本 川喜多正道
  自叙伝の香辛料に嘘を混ぜ 圦山 繁
 4点 すんなりとテレビに時間ゆずる本 加藤吉一
  まだ遅くないと叱ってくれる本 加藤吉一
特別室

 伊勢通い                                       清水 信 

 こういう事は、阿呆でしかできない。

 志摩観光ホテルで10万円のディナーを食べ、招福楼で9万円の昼食を食べ、和田金で8万円のすき焼きを食べた。
 スペイン村(志摩)には3度行き、なばなの里(長島町)には7度出かけ、サーキット(鈴鹿)には30回以上は行っている。斎宮(明和町)にも5度行ったし、九華公園(桑名市)へは、20回以上行っている。

 伊勢神宮には、戦後だけでも80回は行っているだろう。今年(平成25年)は、式年遷宮に当るので、神宮側は900万人の参拝客を見込んでいるらしいが、自分も多分、2回か3回は行くはずである。
 信心が薄いので、内宮、外宮の片一方のことが多い。とりわけ内宮は玉砂利の参道が長すぎるので、大概は大鳥居に近い休憩所や、五十鈴川畔の手洗い場で坐って、仲間を待っていることが多く、本殿で二拝二拍手一拝の参拝をしたことは、5回くらいしかない。
 外宮の方は参道が短いので、大体いつも本殿前で参拝をするが、厳粛な気持になることは少ない。勾玉池でショウブを見たり、近ごろは新築のせんぐう館を観てくる。

 とにかく、外宮前では喜多屋でウナギを食ったり、内宮前ではすし久でてこね寿司を食ったり、今はなくなった陶陶で中華料理を食べたりするのが目的みたいで、腹と時間に余裕があれば、氷赤福を食べたり、はいからさんでコーヒーを飲んだり、射的をして帰途、二軒茶屋餅か、昆布か、へんば餅を買ってくる。おかげ横丁だけで帰ることもある。
 1時間半というドライブ・コースに適当だったり、職場旅行の鳥羽とか相差とか志摩とかの帰途に寄ることも多く、一度として単独行動の地に選んだことはなく、ほとんどが「おつきあい」の伊勢詣でである。何てことだ!

 自分は文士をふくめて、敬愛する芸術家の年譜を詳細に調べることを趣味にしているが、彼らは誰も伊勢参宮などしていないのである。伊勢だけでなく、靖国も明治神宮も乃木神社も成田山も高野山へも、足を向けていない。

 伊勢詣りするのは皇族と軍人と政治家の他は、三流のスポーツマンや芸能人ばかりで、恥かしい。
 とりわけ、信仰心がないのに、こういう行動を繰り返していることは、自分でも頼りない生き方をしてきたなと、恥かしい。神社仏閣に集る「善男善女」の一例ではあろう。

                                                                           (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 舌 』  応募78句
 1 4  後ろめたい時ほどうまく回る舌 川喜多正道
 1 0  なにもかも舌に馴染まぬ左遷の地 織田広花
  9  発泡酒の味にすっかり馴れた舌 山本 宏
     舌なめずりしているうちに逃げられる 橋倉久美子
      抜けた歯を舌が探している夜明け 西垣こゆき
   8 点   思いやり舌にやさしい介護食 福井悦子
   外国語喋ると舌はいそがしい 小出順子
   7 点   失言を舌足らずだと言う補足 松岡ふみお
   猫舌へシェフの自慢が届かない 福井悦子