目次25年10月号
巻頭言 「 オリンピック 」
すずか路
・小休止
・柳論自論
・没句転生
川柳・人と句「 飯田重樹さん」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・ポストイン
・あしあと・その他
・大会案内
・編集後記
・インターネット句会

柳歩
柳歩整理

柳歩
柳歩
たかこ


清水 信さん
久美子
寺前みつるさん

たかこ



(表紙裏)
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巻頭言

「オリンピック」

  2020年のオリンピックが東京で開催されることになった。アベノミクス第四の矢としても、首相はじめ都知事、産業界、メディアも歓迎ムード一色である。この機会にカジノも作ってしまおう、なんて動きもあって、ほんとうに驚かされる。

 前回の東京オリンピックは昭和39年、私がちょうど20歳のときであった。テレビで、柔道無差別級、神永がオランダのヘーシンクに押さえ込まれて負けた瞬間を見た。また、大松監督率いる女子バレーが、「東洋の魔女」の異名よろしく、ソ連を下して金メダルを獲得したのも記憶に残る。
 この年、新幹線が開通し、私も職場の慰安旅行で熱海に行った。日本の高度経済成長に、東京オリンピックが一役買ったのかも知れない。 

 安倍首相はIOC総会のプレゼンテーションで、「汚染水は完全にコントロールされている」と発言したが、コントロールどころか手に負えない状況になっている。日本政府がいまやるべきことは、オリンピックでも経済成長戦略でもない。汚染水処理はもちろん、被災地復興と脱原発、成熟社会にふさわしい新しい経済構造への道筋を立てることだろう。半世紀前に比べて、科学技術の進展で生産性は飛躍的に伸びている。少子化による労働力の不足や、年金の支え手の不足など、本来なら問題ないはずだと思う。旧来型の資本主義に依拠するかぎり、無理なことなのかも知れないが…。

 前回の東京オリンピックでは、イギリスやフランスなど先進国のメダルが少ないことが意外だった。国威を発揚したい超大国や新興国はともかく、市民生活の成熟した国家では、オリンピックも楽しむためのものであり、メダルの数を競うものではないのだろう。
 川柳も他者と競うものではなく、文芸という言葉を介した芸術であるならば、個人の心構えだけでなく、そういうシステムを構築すべきであろう。

   
                                       柳歩            

 

すずか路より
人間を試す自然の果たし状 外浦恵真子(えみこ)
澄まし顔歪んだままのハイヒール 山添幸子
冥王星と土星あたりにある冥土 寺前みつる
負けるが勝ちバカを演じただけのこと 水谷一舟
国体もインターハイも初戦負け 加藤けいこ
気遣われ気遣いながら旅をする 小川のんの
久しぶり姉と旅して介護役 石谷ゆめこ
思い込み私の悪い癖だろう 岩谷佳菜子
好きなことばかりもやっていられない 松本諭二
止めようと思いつつ買う白髪染め 西垣こゆき
カート押すほども買うとは限らない 松岡ふみお
知りすぎた話に相槌が逸れる 坂倉広美
要するにフォアグラですね脂肪肝 橋倉久美子
ブランコを大きく揺らしウツ飛ばす 北田のりこ
敬老会欠席にして映画観る 河合恵美子
解凍をされて喜ぶおかずたち 落合文彦
メンバーも時々変わる食事会 鈴木裕子
七種類食べてるように飲む薬 長谷川健一
予報士が異常気象で活気づく 水野 二
米五俵積んでブレーキそっと踏む 竹口みか子
値切り下手定価で買って妻怒る 瓜生晴男
ファンだけが歌詞を知ってる応援歌 加藤吉一
少しでもほっそり見える服選び 安田聡子
父のこと忘れぬように曼珠沙華 芦田敬子
年金からも天引きされる所得税 圦山 繁
満面の笑顔へ犬も寄ってくる 鍋島香雪
バーゲンをあさる姿は養殖魚 小出順子
コンビニとスマホですべて事足れり 鈴木章照
聞こえないふりしてつつく冷やっこ 青砥和子
停電でもないと休めぬ自動ドア 山本 宏
流木が精一杯の意地を張る 高柳閑雲
留守番で昼寝もできぬ孫の守り 川喜多正道
プログラム通りに泣いた披露宴     石崎金矢
手抜きして今日一日を軽くする 柴田比呂志
アスリートいつも好調とはいかず 加藤峰子
汚染水五輪招致が助け船 佐藤彰宏
アボカドの握り心地も負けてない 青砥英規
曇りガラス拭いたら私だけの空 尾アなお
うなされた夢の向こうにある悩み 岡ア美代子
わたくしの居ない所で褒められる 神野優子
仏壇を磨くことから三回忌 寺田香林
インパクト方言まじる体験記 奥村吉風
戦争をしてみたくなる平和呆け 吉崎柳歩
ときどきはすねる機械もわたくしも 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句20「飯田重樹さん」                                                                                   たかこ


隣席が埋まる間の期待感
大海に人の縄張り笑われる
この人と恋の花火に点火する
ドラマだと判っていてもつい涙
川柳とゴルフ心身元気です

梅雨空にときめく傘を持っている
戦争をオリンピックに変え平和
横断路そっとサポート白い杖
平気ですどんな難路も妻がいる

誕生に学資保険で組むプラン
国技でも外国人に威張られる
顔だけで心の化粧怠けてる
羨望の悩み金の使い道

災害に丸いポストが元気づけ
独身を謳歌心配親心
心身を磨き魅惑の老い生きる
愛情を形で見たい妻の愚痴

母妻の中に入ってピエロ役
怒ってる返事切手を逆に貼り
熟考を優柔不断ともとられ
行列の衝動買いも得した気
賽銭の音を聞かれる仏様

9月28日(土)例会より
宿題「呼ぶ」 青砥たかこ 選と評
  助け呼ぶこともできずにいる地球 橋倉久美子
  来賓に呼ぶと代理が来てくれる 吉崎柳歩
 止 風化せぬよう自分の名前呼んでみる 芦田敬子
 軸 呼ばれたら手術終わった合図です 青砥たかこ
宿題「 罪 」(共選) 岩谷佳菜子 選
  読経する罪ほろぼしか気やすめか 加藤けいこ
  刑法の罪とは違う罪がある 北田のりこ
 止 片隅に小さな文字の謝罪文 芦田敬子
 軸 クリスマスおもちゃのチラシ罪作り 岩谷佳菜子
宿題「 罪 」(共選) 鈴木裕子 選
  大人なら立派な罪になるイジメ 吉崎柳歩
  ケイタイの奥にだんだん溜まる罪 橋倉久美子
 止 どれほどの罪をしずめてきた樹海 坂倉広美
 軸 機嫌よく暮らして罪を作らない 鈴木裕子
席題「住む」(互選)
9点 寝るだけの家に払っている家賃 橋倉久美子
6点 別々の思いを秘めて共に住む 川喜多正道
5点 借金が過ぎて安住できぬ国 圦山 繁
  共に住む子らの話にまだ乗れぬ 鈴木裕子
  左遷地に住みつくと決め樹を植える 坂倉広美
  心には妻とは別の人も住む 川喜多正道
  背の高い人には住みにくい鴨居 吉崎柳歩
  住む場所を変えると猫がウツになる 加藤けいこ
 
特別室

 神社仏閣                                        清水 信

 前回に伊勢参宮のことを書いたが、少くとも近畿、東海、北陸に名だたる神社仏閣のほとんどを訪れている。旅先で、然るべき大寺や神社を見ると、思わず足を停めてしまう。

 信心はまるで無いのだが、そこでは抵抗なく賽銭を出し、鐘を鳴らし、手を合わせたり、拍手を打ち、最敬礼を繰り返したりしている。神社仏閣の建築美や、造園美が好きで、仏像も良いものは良いと思うが、概ね普通の寺の仏像は醜く、神社は何が祭ってあるのか、信用できない。

 自分の精神の奥には、深いアナーキズムが巣食っているのだろう。神を選ばず、仏を選ばず、阿呆の善男善女の群にまじって、何か祈っているらしい。何も期待しないで、神社仏閣に行くことが、哀しいではないか。

 僕は信州長野で生まれた。
 先年、衣斐弘行君の車で新潟に行った折、帰途に長野へ寄った。車窓から箱清水町一丁目の街並みを見て、胸が騒いだ。善光寺の裏通りである。そこに自分の家があった。

 つまり、僕は乳飲み子の頃から、毎日、善光寺の境内で日を過ごしていたのであり、今も網膜の裏に、玉砂利の白い庭と、群れ飛ぶ鳩の姿がある。その成長の原点が、社寺への親密感をもたらしているのかも知れない。

 志賀直哉は、大正14年4月から昭和13年3月まで、奈良に住んだ。年齢にして42歳から56歳までの13年間であった。娘が奈良の学校に行っていた間に、自分は3回、志賀直哉旧居を訪れている。好感の持てる住居で、サン・ルームが特に気に入っていた。

 奈良はもちろん、多くの社寺に恵まれた古都である。散歩好きな志賀は、春日神社、春日若宮、手向山八幡の他、二月堂、三月堂、東大寺、白毫寺、唐招提寺、正倉院、博物館などを歩き、足をのばして西大寺、霊山寺、室生寺、当麻寺、石光寺、六地蔵、壺坂山などを観て回っている。

 美しい仏像については、何度も語っているし、寺社のたたずまいの良さも語っているが、信仰については断乎として拒否しており、野道に佇む石仏などは、醜い顔しやがってと、下駄で蹴飛ばして歩いている。

 僧籍にある少数の人や、神職を守った作家、熱心なカトリック作家など、知っている人も多くて、信頼もしているが、我ながら信心の薄さには驚くばかりである。

                                                                           (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 主義 』  応募91句
 16  いただけるものに遠慮はしない主義 吉崎柳歩
 12  権力を取ったら邪魔な民主主義 吉崎柳歩
 10  相槌が上手になった平和主義 芦田敬子
   9 点   ほどほどにしなり本音は曲げぬ主義 よしひさ
   8    こだわらぬ主義で気楽に生きている 福井悦子
        主義一つ持って男の貌になる 濱山哲也
   えびフライの尻尾もちゃんと食べる主義 橋倉久美子
   7    ことなかれ主義で妻には逆らわぬ 水谷一舟