目次03年8月号
巻頭言 「題」
すずか路
・小休止
・川柳つれづれ
・人と句「ああ、日野 愿さん」
・例会
・例会風景
・没句転生
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・お便り拝受・あしあと
・大会案内など
・編集後記

 


久美子
久美子・柳歩整理
晴男・満月庵
柳歩
たかこ

たかこ
柳歩
久美子
北原おさ虫さん 
柳歩

たかこ








 
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巻頭言

「題」

 「題も創作」という言葉を聞いたことがあるが、題を出すのもなかなか難しい。広美さんは「作りやすくて選がしやすく、いい句ができる題がええんですけどな」などと冗談交じりに言われるが、作りやすいかどうかは人によって違うし、難しいと思った題で案外おもしろい句ができる場合もある。これがそうだ!と言えるような題は、はっきり言ってないだろう。

それはそれとして、大会では何かしら意味のある題が出される場合がある。ずいぶん前のことだが、豊橋の「やしの実」の大会の題が、「信念」「その後」「孝行」「常識」「反論」「かばう」「後悔」「土産」だった。一つひとつの題はともかくとして、全体として二字熟語である名詞が多く、何だか古臭い感じがするなあと思っていたら、三十年前の創立大会と同じ題にしたと聞き、納得したことがある。また、名古屋川柳社の大会で「鈴」「木」「可」「香」、四日市の大会で「保」「地」「桂」「水」という題が出されたことがある。いずれもその会の先人のお名前から採った題だが、後者の「桂」は使い道が限られており、作るのもたいへんだったが、選者も苦労されていた記憶がある。

こんなことを思い出したのは、先日(七月七日)締め切りだった「おりひめ☆ひこぼし川柳会創立記念誌上大会」の題がおもしろかったからである。「親友」「手紙」「運命」「思い出」「かけはし」「阿吽」「感謝」の名詞ばかり七題。「手紙」などはよくあるが、「阿吽」は見かけない題だし、ただの「橋」ではなく「かけはし」というのも凝っている。全体を通じて、やや重みがあるとともに、人と人とのつながりを感じさせる言葉が並び、創立大会にふさわしい雰囲気を醸し出している上に、七夕の雰囲気も漂っている。よく考えられたものだと、感心したのだった。

                                          久美子
 

 
すずか路より
朝顔の観察日記子も孫も 瀬田明子
自然体ひなびた宿が落ちつける 満月庵
過疎の海観光客のいない夏 寺井一也
五輪強行辞任くらいで償えぬ 西山竹里
巡り来た紫蘇のジュースの夏の陣 岡ア美代子
ワクチンは済んだかというご挨拶 澁谷さくら
午前二時スマホ片手に夢の中 玉木りょうこ
ねずみ捕りしてると知らぬ対向車 磯浜基十
デルタ株戒厳令の波が来る 神野優子
ポニーテールが素敵ねきっと自由人 前田須美代
母兄弟みな揃ってたバーベキュー 坂 茜雲
雨の中新聞届くありがたさ 大川里子
短冊にコロナ終息願い込め 岩谷佳菜子
県跨ぐ墓参早々帰宅する 西垣こゆき
杖避けて道譲られるありがとう 松岡ふみお
カタカナのあとのメニューにしておこう 坂倉広美
戴いたギフトに窮す筆無精 竹島 晃
根気よく脇芽を出してくるトマト 橋倉久美子
ポニーテールの男に一歩引く思い 北田のりこ
三つ目の眼で見ることも多くなる 中川知子
手洗いと除菌で一日が暮れる 河合恵美子
使っても使わなくてもスペアキー 落合文彦
銀座通りもシャッター街になり令和 竹尾佳代子
化け方が下手で剥がれる化けの皮 毎熊伊佐男
風吹けば揺れる暖簾にしがみつく 戴けいこ
座る人いないと邪魔なだけの椅子 河内秀斗
墓守りに今年も二匹青蛙 村井一朗
安全に疑問符がつく避難場所 西岡ゆかり
抜歯して何年ぶりか飲まない日 奥田悦生
ワクチンを子の付き添いで二度接種 鈴木裕子
蒸し暑い妻のスタミナ料理食べ 瓜生晴男
自家野菜食べてプラゴミ減らす日々 加藤吉一
関所にて検温されて入る店 芦田敬子
梅雨明けた途端に襲う熱帯夜 圦山 繁
ガラケーからガラケーにしてかまわない 西川幸子
おしゃべりは父強情は母譲り 小川はつこ
内宮の初めて参る風の宮 水谷ちか子
千鳥ヶ浜に子供の頃と同じ風 長谷川健一
活字より写真パラパラ週刊誌 小出順子
ゴメンネとウンで終わった仲直り 藤村洋子
裏切りは真夏の雲のようなもの 柴田比呂志
生き延びる八十路に風が強過ぎる 竹内そのみ
脱皮した蝉がめまいを起こす夏 眞島ともえ
病衣着たとたんに患者らしくなる 川喜多正道
終活に本気出させた友の通夜 小林祥司
五代目の勤め毎晩経を読む 加藤峰子
ワクチンを拒む西洋個人主義 福村まこと
夏の夢ホームベースは遠かった 佐藤千四
骨のある男が逝った日野愿 吉崎柳歩
淋しくて浜昼顔に逢ってくる 青砥たかこ
 

整理・柳歩

月24日(土) 出席12名 欠席投句31名より

宿題「降る」 青砥たかこ 選と評
   金持ちのプールにばかり降るお金 𠮷崎柳歩 
   どしゃ降りの日も来てくれたポストマン 鈴木裕子
 止  基地の島ヘリの部品が降ってくる 北田のりこ
 軸  万遍なく降ったら雨も嫌われず 青砥たかこ
宿題 共選「 輪 」 加藤吉一 選
   ブランコを揺らし見ている遊びの輪 橋倉久美子
   敵がいるから強靱な輪ができる 柴田比呂志
 広げすぎると分裂をしたがる輪 橋倉久美子
 軸  孫悟空の頭の輪っか要る議員 加藤吉一
宿題 共選「 輪 」 芦田敬子 選
   コツ 掴む迄は難儀なフラフープ 中村あけみ
   抜け出るとしっかり見える輪の形 圦山 繁
 止  輪の中に残る個性を消しながら 小林祥司
 軸  年輪に共に苦楽の跡がある 芦田敬子
宿題「自由吟」 𠮷崎柳歩 選と評
   宣言の切れた間に行く飲み屋 坂 茜雲
   若いしるしか副反応がちょっと出る 北田のりこ
 止  良いことがあると生き生きする日記 河内秀斗
   線状降水帯と呼ばれる大バケツ 𠮷崎柳歩
席題「巻く」互選高点句
  7点 朝顔のとても律儀な左巻き 青砥たかこ
   6点 お互いに巻きつき合って伸びる蔓 橋倉久美子
 5点 高級な寿司屋にもあるカッパ巻き 河内秀斗
   4点 賞状が巻かれ悔しい顔をする 河内秀斗
  巻き返すチャンスにしたい他人(ひと)のミス 芦田敬子
誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票 『 浮く・浮かぶ 』  応募118句
  12点  手抜きするアイデアだけはすぐ浮かぶ 圦山 繁
  11点   浮いてきたところを狙われる金魚 西山竹里
  10点   コロナ禍にワクチンという浮き袋 濱山哲也
   浮かぶまで置き場に困る熱気球 福村まことこ
       若づくり一人浮いてるクラス会 竹内そのみ
    9点   即席のみそ汁に浮く僅かな具 水野リン子
     朝風呂に年金組が浮かんでる 寺井一也
  7点   再会の約束宙に浮いたまま 澁谷さくら
     すこし火であぶれば浮かびだす本音 澁谷さくら