目次27年9月号
巻頭言 「 鑑賞の自由」
すずか路
・小休止
・柳論自論「小説と川柳(上)」
・没句転生
川柳・人と句「 永井河太郎さん」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・ポストイン
・エッセイ・あしあと
・大会案内
・編集後記

たかこ
柳歩整理

柳歩
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たかこ
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清水 信さん
久美子
岡本 恵さん


たかこ


 
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巻頭言

「鑑賞の自由」

どこの柳誌にもだいたい、近詠句前号鑑賞のコーナーがある。
「鑑賞」とは芸術作品を理解し、味わうことと辞書にある。だが「鑑賞」には三つの要素「享受」と「観賞」と「評価」が含まれていると続く。

 句の鑑賞とは「評価+感想」と思っていいだろう。鑑賞の仕方は千差万別、このやり方が好きというのはあっても、これが正しいと言い切れるものはないようだ。
 鑑賞は、他柳社の方に依頼することが多く、従って、句主の事をよく知らない人がやることになる。よく、句は一人歩きをすると言う。自分の詠んだ句は、人の目に、あるいは耳に触れた時、よほど一読明快の句でない限りいろんな解釈をされる。鑑賞をする方は、自分の思考の枠にその句をまず落ち着かす。そこから自由にああでもないこうでもないと、句をひっくりかえしたり、膨らませたりできるのである。つまり。自由にその句をまな板の上で料ることができるのだ。

まれに句主から句意とかけ離れているという連絡をいただくが、句は句主のものだが、鑑賞文は鑑賞者にゆだねていただくのが、不本意であってもベストだろう。それとは逆に取り上げてもらった句は宝物になったと喜ぶ人も多い。

 鑑賞のタイプで、いちばん多いのは共感句を並べ、感動の言葉で終始する。次は、句主に話しかける、哲学めいて、身の上相談にもなったりする。または、自分に置き換える。また、句に尾ひれをつけていろんな話に発展させる博識型もおられる。どのやり方も、それぞれ個性的で楽しい。

「すずか路散歩」は、六人の方に順番にお願いしている。選れるほども母体が無いことを申し訳ないなといつも思っている。しかも前号鑑賞とはいえ、対象号発行から原稿の締め切りまで二週間もないのである。執筆者は、現役の方もあり、多忙を極める方ばかりだ。感謝を忘れてはいけない。

                                       たかこ            

 

すずか路より
煙突を抜けて煙が迷ってる 小出順子
ダメ元ですぐ手が動く好奇心 鈴木章照
潮流を間違えましたサメの群れ 高柳閑雲
けんかしているからもっている夫婦 川喜多正道
37度意見が合ったかき氷 石崎金矢
もう一度わたしを隙間から覗く 柴田比呂志
物忘れ外来という科に誘う 竹内そのみ
充電中 夏の名残を聞きながら 樋口りゑ
ばっさりと切って猛暑に立ち向かう 加藤峰子
鏡には嘘をつけない悩み事 西野恵子
にんげんが消えて完成する廃墟 青砥英規
感動のシュートに鍋がこげている 寺田香林
後出しはしたくないから今叫ぶ 西山竹里
片思い故に休まらないマウス 尾アなお
冷蔵庫二人の口へ棚おろし 岡ア美代子
怒られて枕を抱いて見てる夢 神野優子
川内の稼働を睨む桜島 上村夢香
暇だわね寂しいわねと酒にする 前田須美代
念ずればかなう願いもありますか 水谷一舟
亡き父母と亡き兄たちと語る盆 石谷ゆめこ
鼻クリップをしたシンクロの同じ顔 岩谷佳菜子
勢いに流されていく笹の舟 小川のんの
敬老会父子に招待状が来た 西垣こゆき
秀才と言われた友の認知症 松岡ふみお
「教え子をセンソウにやる」暑い夏 坂倉広美
塩分の補給おつゆも全部飲む 橋倉久美子
ソーメンを食べつくしたがまだ猛暑 北田のりこ
表彰を受けたとたんにミスが出る 落合文彦
曖昧な語が多すぎて締まらない 河合恵美子
大臣になるため所属する派閥 毎熊伊佐男
界隈もやがて独居の家ばかり 鈴木裕子
台風に備え古壁修理する 長谷川健一
盆供養お布施の額を迷わせる 水野  二
飼う時に寿命は知っていたけれど 竹口みか子
ひまわりが借景になる裏の窓 瓜生晴男
運命線が既に背負っていた介護 加藤吉一
運勢に調子に乗りすぎると出る 安田聡子
留守番の朝顔白い花をつけ 芦田敬子
年金に比べて高い保険料 圦山 繁
価値知らず断捨離をした初版本 鍋島香雪
大御心に添ってはいない安保法 吉崎柳歩
美人画を描いてあくびを噛み殺す 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句42「永井河太郎さん」                                                                                  たかこ


年だなー優しくされて出る涙
春眠を前立腺が邪魔をする
薬など要らぬ死ぬまで生きられる
知ってるかい死んだら酒が呑めないよ
雨降って地は固まらず土砂崩れ

雨優し虹の土産を置いてゆく
税務署は僕の生存知っている
たかが紙されど諭吉にある魅力
人間の弱さ諭吉が嘲笑う

とき卯月 背からはみ出すランドセル
十二月ジングルベルが急き立てる
初恋のひとおばちゃんになっていた
欲だけはある宝くじ買ってみる

血統書持って世襲でなった椅子
アベさんが乗るブレーキの無い車
ヒトラーの顔に似てきた安倍総理
公邸の地下に埋めてよ核のゴミ

言い負けて拗ねているのかだんご虫
不公平ホタルも蝉も同じ虫
死んでてもやはり火葬は熱かろう
老夫婦残った方が負けと言う
断捨離へ残るはひとつ我が体

 

8月22日(土)例会より
宿題「浮く」 青砥たかこ 選と評
  浮くことに疲れた雲が雨になる 橋倉久美子
  受賞後は浮かれてばかりいられない 竹口みか子
 止 両足が浮くと失格する競歩 吉崎柳歩
 軸 適切な温度で浮いてくるフライ 青砥たかこ
宿題「 声 」(共選) 石谷ゆめこ 選
  通訳の必要はない笑い声 吉崎柳歩
  声のする方へ行くからだまされる 青砥たかこ
 止 騒がしい声まだ続くジャパネット 加藤吉一
 軸 窓ごしに亡き人たちの盆の声 石谷ゆめこ
宿題「 声 」(共選) 石崎金矢  選
  声のする方へ行くからだまされる 青砥たかこ
  見えすいた世辞はいつでも笑い声 小林祥司
 止 死亡ニュースで知った声優の顔 北田のりこ
 軸 マスコミが勝手に作る民の声 石崎金矢
宿題「自由吟」 吉崎柳歩 選と評
  顔のシミくらいどうってことはない 青砥たかこ
  甲子園で歌われ幸せな校歌 北田のりこ
 止 黙祷の体が少し揺れている 橋倉久美子
 軸 二回戦まで楽しめた甲子園 吉崎柳歩
席題「踊る」
11点 ウエストだと思うあたりを抱くダンス 川喜多正道
 7点 踊ってと誘われぬよう目を逸らす 小出順子
 6点 約束を忘れて踊るシンデレラ 圦山 繁
 5点 少年のリュック踊っている希望 樋口りゑ
  おちゃめな風がスカートの裾踊らせる 北田のりこ
  散歩より運動になる盆踊り 橋倉久美子
  あと一分あわてて書いた字が踊る 小林祥司
  ハンカチを振って踊っているつもり 吉崎柳歩
  女より妖艶に舞う女形 西垣こゆき
特別室

 阪本きりり論(1)・小説                                  清水 信

 阪本きりりは多芸多才の人である。小説誌『めめひこ』では、天ヶ須賀の鎮丸(井上静夫)とペアを組み、川柳の会ではナラ橿原市の阪本高士とカップルを組んでいるが、孤影が深い。僕にとっては阪本高士はナラ漬のきゅうりしか見えないし、井上は天ヶ須賀沖でしか獲れぬタチウオにしか見えないが、彼女が結構信頼を置いているので、悔しい気持で遠望している。

 しかし思えば、自分は酒よりも酒かすの方が好きだし、ヨコにはならず、立ったまま泳ぐ銀白の太刀魚の姿も、魚の中では一番恰好良いと思っているので、彼女の傾斜が分からぬでもない。
 近刊の『めめひこ』8号は、「冬を愉しむ」という共通の姿勢で、二人が小説を書いている。鎮丸の「不在の人」は、天皇制論議を背景にした平成時代の佳作だという評価をして、例月の文学研究会の席を粛然とさせたが、戦後折角人間宣言をした天皇を、またぞろ神格化しようとする動きが急ピッチで、それは「おかわいそう」という草莽の民の真情が出ていると思った。「あって、ない人」という「不在の人」のテーマは、方法論的に、時宜を得た提案をしていると、言えよう。

 一方、阪本きりりの「ウインター・ワンダーランド」は、病的な母と娘の関係を一週間に追って描いている。
「ブラームスはお好き?」というサガンの小説の題が、二人の間のキーワードのように、何度も使われている。
 19歳にして「悲しみよこんにちは」で作家デビューしたフランソワーズ・サガンの四番目の作品が「ブラームスはお好き」(一九五九年)である。その間に、彼女はバレーの脚本を書き、写真集を出し、そして沢山のシャンソンの歌詞を書いた。
 サガンの小説は、いつも同じパターンだと言われたが、一九〇ページを超さない長さの小説の軽妙さと、そのしゃれた文章のために、最後までヒットし続けた。車の事故と20歳年上の男と結婚したことで、世間を騒がしたが、ブラームスは随分年上の女性ばかりを選んで関係を結ぶが、生涯独身を通した作曲家である。
「ブラームスはお好き?」というリフレインは、複雑な意味を帯びている、と言えよう。さらにクラシックとはいえ、ブラームスは民謡をベースにした曲を多く作っている。

 自分のテーマは「恋愛と孤独」だと、サガンは説明している。小説に必要な葛藤を自分はいつも平凡な日常生活の中に発見しているのだとも、言明しているのだ。『めめひこ』の挑戦に期待している。

                                                                            (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票 『 乱 』  応募92句
 1 4  キッチンに休業と貼る妻の乱 外浦恵真子
   乱暴に走ってならぬ霊柩車 圦山 繁
   7  返すのが下手でお好み焼の乱 北田のりこ
     老いという反乱軍がやって来る 柴田比呂志
     つまらない飲んでも乱れない男 加藤峰子
   6  何気なく触った小指からの乱 坂倉広美
     ノンアルコールの人が多くて乱れない 西垣こゆき
     ワシだって髪が乱れた時もある 松長一歩
     権力を握ると人は乱れだす 濱山哲也
     だんまりも乱暴もある反抗期 芦田敬子