目次26年3月号
巻頭言 「 文字の姿」
すずか路
・小休止
・柳論自論
川柳・人と句「 吉本君枝さん」
・例会
・例会風景
特別室
・アラレの小部屋
・前号「すずか路」散歩
誌上互選
・インターネット句会
・没句転生
・ポストイン
・お便り拝受・その他
・大会案内
・編集後記
 

たかこ
柳歩整理

柳歩
たかこ


清水 信さん
久美子
永井玲子さん


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たかこ


 
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巻頭言

「文字の姿」

  字の上手い人はなにかと得である。これは誰もが感じていることであり、よく人の口端にのぼる話題である。
 上手な字とは、文字の形のバランスがよく、書かれるべき場所に綺麗な姿で納まって、それらが次の文字に流れるように繋がっているものである。
 達筆は得てして読みにくいものである。筆で流暢に書かれた文字は、凡人泣かせであり、果ては郵便局の分別機泣かせでもある。
 従って上手な字とは、読み易い字であることも条件に入るのではないだろうか。

 若い頃、ペン習字の講座を受けたことがあった。小学生低学年のこくごのノートは、ひと枠が四つに分かれていて、文字を配分良くその枠の中に書くよう指導を受けた。それと同じような練習を強いられた。無いようである文字の癖を無くし、ゆっくりと書くことで上手な文字になるというのだろう。
 ゆっくり書けば、だいたいの人は綺麗な文字が書ける。少なくとも読みやすい文字にはなる。だが、まるきりマニュアルどおりの文字は、個性がなく味も素っ気も無い。整いすぎて文字に気を配った文章は、なんとなく心が感じられない。

 文字は性格を表すという。大らかな人は紙からはみ出しそうな文字を書き、せっかちな人は偏と旁の間を詰めて書く。ミミズが張ったような文字、岩のようにゴツゴツした文字。可愛いおちょぼ口のような丸文字、文字を見ただけで、あの人だわ、と思ってもらえるのもいいことかも知れない。

 人間にも相性があるように、文字にもあると思う。私は「伊勢」という字が好き。「鈴鹿」はどうもバランスが取りにくくて、手紙を書いても住所はつい判をついてしまう。川柳に「文字を書く」ことは不可欠である。相性云々は言ってられないのだが。

                                        たかこ            

 

すずか路より
ケータイで呼ばれ上司に叱られる 鍋島香雪
立ってても電信柱いそがしい 小出順子
ナマケモノにうまれたかった春の朝 鈴木章照
メーテルも賢治も降りた銀河駅 青砥和子
将軍の名に相応しい寒気団 山本 宏
だぶついた弁護士たちのコマーシャル 高柳閑雲
メーカーが先に倒産するソ−ラ 川喜多正道
急に春君の葬儀はいい日和    石崎金矢
空っぽになってさようならが言える 柴田比呂志
どことなく放浪癖のひとり旅 脇田雅美
ボケぬよう古希に届いた長寿梅 宇野満宏
友病んでつめたい風が身にしみる 加藤峰子
大義とはお金がかかるものらしい 佐藤彰宏
貴女よりましだと思う同じ服 西野恵子
爆弾に見えるプロパンガスボンベ 青砥英規
もう一度打席に立たせたい男 尾アなお
おだてるという方法で丸く生き 岡ア美代子
牡丹雪ゆうこの顔が笑ってる 神野優子
野次馬に見送られての救急車 寺田香林
残り火を燃やしときめくダンス靴 外浦恵真子
ぱみゅぱみゅがばみゅばみゅに見え眼鏡拭く 瀬田明子
本堂に椅子が並んだ高齢化 奥村吉風
寝る前に明日の予定を復唱す 前田須美代
良い知恵も無いが黙っていられない 堤 伴久
仲間外れのリンゴが謎を持っている 水谷一舟
日記帳もらったままではや二月 加藤けいこ
怪我をした右目たすける左の目 小川のんの
日本語も英語もできぬうちの犬 石谷ゆめこ
ライバルと私のほうは思われず 岩谷佳菜子
真央ちゃんは森君よりも大人です 西垣こゆき
こそこそに見えて淋しい家族葬 松岡ふみお
知ることが生き甲斐ルーペはなせない 坂倉広美
雪の重みに耐えきれなくて折れる竹 橋倉久美子
雪ダルマ作ると雪もうれしそう 北田のりこ
父さんが桃の節句に酔いつぶれ 河合恵美子
雪の日に一歩も出ない長電話 鈴木裕子
実のために小さい花は間引かれる 長谷川健一
血圧も脈搏も良し街に出る 水野 二
辛い時間何度も呼んでいる名前 竹口みか子
この鼓動恋か動悸か息切れか 岡田たけお
小雪舞う寒波暦は春なのに 瓜生晴男
バーゲンで買い一冬に一度着る 加藤吉一
息抜きをしてくるからと外に出る 安田聡子
悲しみを包み込むかのような雪 芦田敬子
お立場を自覚しないで本音吐く 圦山 繁
回転寿司近所にできたけど行かず 吉崎柳歩
とろとろと眠って病受け入れる 青砥たかこ
 

整理・柳歩

川柳 人と句25「吉本君枝さん」                                                                                    たかこ


プライドを捨てて心の掃除する
切手一枚日本一周してくれる
人嫌いもう閻魔しか愛せない
スポンジのような人です聞き上手
やわらかい心を包む春キャベツ

たましいに十二単を着て生きる
ここ一番雑草だからくじけない
舞いながらうろこ一枚ずつ捨てる
思いきり笑い真っ赤な血をつくる

ぶどう一房みんな味方の顔をして
きりきりとあなたを砕く糸切り歯
でこぼこの心舗装ができますか
自販機のぶっきら棒に救われる

無人島あれは地球の句読点
どなたにも見えぬところで煮こぼれる
あちこちにぶつかりながら生きている
すり切れた地図をたよりに行く浄土

バラードが流れてきます浄土から
もういいわフリルの多い台詞など
奥の手でぐいぐい迫る閻魔さま
迷路です地獄ごくらく通りゃんせ
鬼さんこちら一緒に踊ろうよ

 

2月22日(土)例会より
宿題「イメージ」 橋倉久美子 選と評
  作られたイメージ脱いでいる楽屋 圦山 繁
  毛を刈られイメージチェンジした羊 吉崎柳歩
 止 ブンガクのイメージで書く日記帳 坂倉広美
 軸 イメージの通り歩けぬ酔っぱらい 橋倉久美子
宿題「包む」(共選) 西垣こゆき 選
  せめてもの配慮ティッシュで包んどく 橋倉久美子
  ほどかれるまでは素敵なラッピング 川喜多正道
 止 新聞紙で包む窒息せぬように 橋倉久美子
 軸 LLの服で包むと目立たない 西垣こゆき
宿題「包む」(共選) 坂倉広美 選
  悲しみを包んだ喪服乾かない 青砥たかこ
  わたくしの愛に包装紙は無用 吉崎柳歩
 止 両の手で包むと愛がこぼれない 青砥たかこ
 軸 包んであげたいけれどバラには棘がある 坂倉広美
宿題「自由吟」 吉崎柳歩 選と評
  快復の兆しそうじがしたくなる 青砥たかこ
  特売じゃない日に玉子いる料理 北田のりこ
 止 忘れてはならぬと洩れる汚染水 圦山 繁
 軸 少しだけルール覚えたカーリング 吉崎柳歩
席題「眼鏡」(互選)
11点 マドンナが振るから旗についていく 水谷一舟
  旗振りが上手で現場丸くなる 芦田敬子
10点 売り出しの旗がうるさいほどなびく 青砥たかこ
 8点 主催者の社旗をしぶしぶ振っている 吉崎柳歩
  壇上の旗におじぎをさせられる 橋倉久美子
 7点 イギリスの領土だったとわかる旗 川喜多正道
 5点 落選に旗振り役が雲隠れ 川喜多正道
  旗を振るおじさん邪魔で通れない 加藤峰子
 
特別室

 作家・青砥たかこ論(1)                                  清水 信

 第29回四日市文芸賞の第一等の賞を得て、わが青砥たかこは、小説家としての地歩を固めた。

 受賞作品は「ひき逃げ」という50枚の力作で、四日市市文化まちづくり財団発行の『四日市文芸賞作品集』の中に選評と共に収録されている。

 選考に当った衣斐委員はこう述べている。青砥作品は「頭ひとつ抜きんでていた。昨年の作品と比べると、甘さや文体の瑕疵がなく、事故から九日間の加害者の女性の心理描写が緊張感を漂わせながらうまく描かれていた。ただ、職場の上司に事故をメールで知らせたり、二人の関係の描き方に甘さがないではないが、今回の小説としては許容される範囲として読んだ」

 更に中山みどり委員は、こう言う。青砥作品は一読して「私は交通事故的なことを起した主人公が、その時点で他の男のことを考えられるのかと、疑問を持っていた。しかし、読み返してみると、夫を亡くした主人公の生活感がよく描かれ、筆力は確かさを持っていることに気がついた」

 二人の批評は、青砥たかこの受賞作に於ける美点と欠点とを説き明かしているのみか、小説家としての青砥たかこへの期待を語っていると思われる。同人誌『さん』以来、この文学賞にも七回も応募したと聞くから、すでに長い作家歴があって、それとつき合ってきた自分は、この受賞がうれしいし、実力が認められたと納得した。

 作品集に選評を書く以外にも、委員たちは授与式会場でも選考に触れたスピーチをするのだが、自分はそれを離れ日本人の語感が衰弱していることを憂慮することを語った。
 年末恒例の「流行語大賞」というやつである。今年は豊作だとかで「倍返し」と「じぇじぇじぇ」と「今でしょ」と「おもてなし」が選ばれ、清水寺の坊様の書く今年の漢字は「輪」だった。

 アメリカのそれが「スマイル」であり、イギリスのそれが「セルフィ」であったのに比べると、日本人の選択はがさつで粗っぽいのではないのか。
 すべて、テレビもたれの流行語だから、日本の現代人がテレビ一辺倒の文化享受しかしていないことが明らかで、何だかイヤになる。

 因みに「セルフィ」とは、自画像ということだ。スマホや端末機で、自由に自分の表情やスタイルが撮れ、レタリングも可能になったことで、絵画に対抗できるのではないかという希望を指す。(続く)

                                                                           (文芸評論家)

誌上互選より 高点句(一人5句投票)
前号開票『 怪しい 』  応募96句
 1 3  冷蔵庫の奥が怪しくなっている 岩田眞知子
1 0  ぜったいに通帳ひとつ隠してる 加藤けいこ
 9  音程は怪しいけれど情がある 川喜多正道
      デメリット書いてないから信じない 青砥英規
    怪しげなカップルもいる旅の宿 濱山哲也
   8    忍び足してはならないウォーキング 青砥たかこ
   7    ケイタイを肌身離さず持ち歩く 西垣こゆき
       怪しげなおまけもついてくる噂 山本 宏
        喧嘩などしたことないと言う夫婦 鍋島香雪